在宅医療カレッジ: 地域共生社会を支える多職種の学び21講

制作 : 佐々木 淳 
  • 医学書院
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784260038232

作品紹介・あらすじ

首都圏最大級の在宅医療ネットワーク 医療法人社団悠翔会が提供する、医療・介護の多職種のための学びのプラットフォーム「在宅医療カレッジ」。多方面で活躍するトップランナーが「教授」として登壇し、満員続きの人気講義を精選して再現![2015-2017年開催分] Facebook1万人を超えるメンバー、そして地域包括ケアを実現して患者・当事者と共に生きる社会ではたらき続けたい全国の専門職に贈ります。

感想・レビュー・書評

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  • (21講の各項目で別のトピックを異なる視点から書いてるので要約割愛。)

    在宅医療のあり方は地域の社会作りに大きく関わるため以前より関心を持っていた。理想の在宅医療を考えるためには、価値観の多様性、人生のあり方、支える介護者の負担とやりがい、医療資源分配の限界と正義、疾患の医学的知識、といった幅広い理解が必要であり、「多職種で知見を共有して理想の在宅医療について学び考える」という本書のコンセプトにはとても共感できた。特に、高齢者や介護者がなにを考えどのように生活しているか、というような現場の経験からしか学べない知見を求め、本書を読み始めた。

    しかし、「多職種での知見共有」という部分を重視した結果、異なる職種間で理解可能かつ応用可能な知見に限られ、結果として内容が浅くなってしまったようである。現場の視点からの素朴な気づきを提供するのみではなく、専門内外の知識からのアナロジーにより見解をより深めた状態で共有できれば、非常に価値のある書籍になったと考えられる。一方で、介護に関わる人からの理解のしやすさの点ではやや困難となってしまう、というジレンマもある。個人的には満足感がなかったが、在宅医療や介護について全く考えたことがなかった人にとっては学びとなると思われ、そういったライトな読者を想定するのであればタイトルと表紙をポップでキャッチーなものに変えるべきであろう。もう少し洞察的な内容を期待していたため残念な印象に終わってしまった。



    以下、あんまり本書と関係ない個人的な考え。

    在宅医療が非常に難しいのは主に以下の二点においてであると考えている。1点目は、本人の希望の尊重について。高齢者の価値観にはその人生経験によって大きな多様性があると推察されるが、多くの高齢者では認知機能の低下や他の疾患の存在により、自身の価値観について思考すること、もしくはそれを表現することが困難となる。本人の経歴や家族からの話から本人の価値観を推察することは可能であるが、それもあくまで推察にすぎず、その実行についても確信を得ることは家族でも難しい。

    2点目は、介護者のサポートについて。家族を含む介護者のサポートは不可欠となるが、家族の肉体・精神負担的にも医療資源的にもその支援は無限ではなく、実現可能性の観点から妥当な施策を考えることが求められる。一方で、支える家族側の「介護をやり遂げた」という実感、達成感は残される者としての家族の精神状態に便益があり、これも理想の在宅医療が目指すべきものの一つである。そういった中で、家族のベストな負担も家族の生活や関係性によって異なり、さらに事態を複雑化させている。

    こういったことについて考えを深めるために必要な「現場の知見」は、本書に登場するような従事者の個人的信念ではなく、具体的な各家族の状況の描写や症例の記述と、それを通して観察される多様性の幅ではないだろうか。それは実際に関わって自ら観察して学べと言われればそれはその通りだけれども。

  • 【要約】
    在宅医療に携わる多職種の学びをまとめた書。
    認知症、高齢者、地域包括ケアといったことに関する学びが得られる。
    医療介護従事者だけでなく、患者側になった当事者からの語りもある。

    以下、メモ的に
    ・介護は自立支援を目指す仕事なのだから、支配管理的なルーティンを減らしていくべき
    ・どうやったらこの人を笑顔にできるのか?で悩むことも大切に
    ・高齢者が医療に望むことは「身体機能の回復」や「家族の負担軽減」。最下位は「死亡率の低下」
    ・欧米では車いすなど支援機器の開発が進んでいる
    ・その人が本当に食べたいと思うものならむせにくい
    ・健常人もかなり誤嚥しているが肺炎にならない。重要なのは個体の抵抗力と誤嚥したものの侵襲性
    ・健常人は安全な食べ方をしている→嚥下訓練の良いモデル
    ・スピリチュアルペインの対応は特別なものはいらない。身体・精神・社会的苦痛の3つに向き合えば、それがケアになる
    ・「死んだらどうなると思いますか?」
    ・「あちらの世界に行ったらどなたに会いたいですか」
    ・在宅患者にとって、一番大事なのは自分の生きがいや趣味、次に家族、医療や介護は最後の方
    ・癌になることで得られるものもある=Cancer gift
    ・遊戯三昧(ゆげざんまい)

    【面白かったところ①】
    「患者が安楽死を望むのは、周りのケアが足らないからだ」という文中のセリフが印象的だった。
    ALS患者さんの嘱託殺人事件を思い出した。

    【面白かったところ②】
    「医療の大前提は、本人の話を聴くこと」「相手の事を知ろうとする姿勢が大事」
    全てのコミュニケーションの根底に、人間の自己愛があることを再確認。

    【その他】
    栄養や誤嚥の話は総合診療医であれば常識かなと思ったが、他科のDrや他職種と共通認識を築く上では重要だと思った。

    【まとめ】
    在宅医療を行う上での老年医学、緩和ケア、家庭医療などのTIPSを学べた。

  • 在宅医療の課題を理解するために読みました。
    熱い想いをもって在宅医療の一旦を担う方々の小論集となっており、1編ごとにとても読みごたえがあります。
    特にリハビリにおける栄養管理の重要性の話、夕張市の医療再構築の話が印象的でした。

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:498.021||S
    資料ID:95190516

  • N820

  • 課題に真正面に向き合っている演者達の熱気がそのまま伝わってくる内容でした。何度でも読み直してみたい。
    フットワーク軽く動くことが難しい時期でもあり、このような講座を自宅で読めることは有難いです。

  • 一人一人の文章が少なすぎて深く掘り下げることができない。もう少し人数を絞った方が良い。コンセプトは良いと思う。

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