在宅無限大: 訪問看護師がみた生と死 (シリーズ ケアをひらく)

著者 :
  • 医学書院
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784260038270

作品紹介・あらすじ

病院によって大きく変えられた「死」は、いま再びその姿を変えている。現在の在宅死は、かつてあった看取りの文化を復活させたものではない。先端医療が組み込まれた「家」という未曾有の環境のなかで、訪問看護師たちが地道に「再発明」したものである。著者は並外れた知的肺活量で、訪問看護師の語りを生け捕りにし、看護が本来持っているポテンシャルを言語化する。「看護がここにある」と確かに思える一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 訪問看護の実践現場で看護師が直面する死の需要過程(本人・家族…)を書いている。現象学者の著者による訪問看護師へのインタビューが中心となっており、粘っこいリアルを掬い出すかのような聞き手の問い・話し手の語り双方が見事でした。いま死が身近にない人にこそ勧めたい。

  • 492.9

  • <閲覧スタッフより>
    現象学者である著者が、現役の訪問看護師6名とのインタビューの中から、在宅死や看取りについて考えていきます。暗いテーマだと思うかもしれませんが、訪問看護師が「楽しい」という明るい気持ちを持ってケアをしていることが分かります。
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    所在記号: 492.993||ムラ
    資料番号: 35003540
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  • 複数の訪問看護師にインタビューし、哲学や現象学などと照らし合わせて在宅看護を考察していた。
    読んでいて少し難しく思うところもあったが、とても感動したし、倫理観について考えたいとも思えた。

    様々な看取りをインタビューで語っていた訪問看護師の言葉に感動して涙が出てくる場面もあった。
    人は死ぬとき、本当の自分に出会えるものであると思った。
    家で死ぬことがこれからは当たり前になる時代、訪問看護師によるサポートがより必須になってくると感じた。

  • 訪問看護師の「とっさの判断」を、現象学という手法を用いて、言語化している。訪問看護をしている人間からすると、その行為を追体験でき、ある意味で事例検討である。

  • 患者に対する看護の役割を「快を与えるには?」「願いを叶えるには?」「運命に応じるには?」の3つに定義し、その観点で看護師の体験談と著者の分析が語られています。
    病院と在宅とでの患者の在り方の違いからそれに応じる看護の在り方も変わってくる。
    正解がなく個別性が高い状況に対し打ち手は無限に存在するという意味で在宅無限大というタイトルにつながっているようです。
    著者の文学的な語り口は好き嫌いが分かれるところかもしれませんが、インタビューを通したリアルな状況が描かれている良書と思います。

  • 現象学を専門とする哲学者が死の存在についてハイデガーとの違いを測ることで、在宅医療からみた死の性格を描き出すことに試みた著作。看護師に聞き取りをすることで、看護師から見えている世界とその動きを内側から描く。本書は、(1)患者の快適さを実現する、(2)願いを叶える、(3)困難な状況に応答する、という3つの側面をサポートする存在として訪問看護をとらえた。それぞれは看護の本質的な部分ではあるが、病院の制約がない分だけ、本来の看護の力が発揮できていると考えることが出来る。その分、無限大であり、個別的である。どのような患者に対しても言語的にも非言語的にも対話し、生を間主観的なものとしてとらえている語りにあふれている。哲学的な素養はないので、哲学的な解説は理解しにくかったが、看護実践の内面からせまる手法により、より看護の醍醐味が理解できる内容になっていると感じた。

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著者プロフィール

1970年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程満期退学。基礎精神病理学・精神分析学博士(パリ第7大学)。現在は、大阪大学人間科学研究科教授。専門は現象学、精神医学。著書に『治癒の現象学』(講談社メチエ)『レヴィナス』(河出ブックス)『摘便とお花見-看護の語りの現象学』『在宅無限大』(医学書院)『仙人と妄想デートする 看護の現象学と自由の哲学』(人文書院)などがある。

「2023年 『客観性の落とし穴』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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