対話と承認のケア:ナラティヴが生み出す世界

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  • 医学書院
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  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784260041614

作品紹介・あらすじ

人の物語に触れることが、なぜケアになるのか。20年にわたりナラティヴを研究してきた著者が、「ケアする私」「ケアされる私」、また「解釈」「調停」「介入」をキーワードに、ナラティヴがケアになるときを解き明かします。これはナラティヴ・アプローチ探究の決定版です!

感想・レビュー・書評

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  • 宮坂道夫氏『対話と承認のケア』が第15回日本医学哲学・倫理学会 学会賞受賞 | | 記事一覧 | 医学界新聞 | 医学書院(2022.03.21)
    https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2022/3462_04

    新潟大学宮坂研究室
    https://www.miyasakamichio.com/

    対話と承認のケア | 書籍詳細 | 書籍 | 医学書院
    https://www.igaku-shoin.co.jp/book/detail/105536

  • 本は癌患者への、医者・看護師・患者のやり取りの例から始まる。ナラティブアプローチが、心理療法に限った話ではないことに今更気づく。

    例を通じて、解釈的ナラティブアプローチと、調停的ナラティブアプローチ、介入的ナラティブアプローチがあるということを説明してくれる。
    これは、わかりやすかった。

    と、同時に上田勝久さんの「個人心理療法再考」も読み直したくなる。こちらは、心理療法を支持的心理療法
    探査的心理療法、マネジメントにもとづく心理療法、で分類し説明してくれている。

    その後各章では、解釈的ナラティブアプローチの例として、急性疾患、慢性疾患、高齢者介護の現場など。
    調停的ナラティブアプローチの例として、アルコール依存症や、オープンダイアローグについて。
    介入的ナラティブアプローチの例として、心のケア、心理療法について書かれている。

    それぞれにおいて、対話をして彼らの人生史に思いを馳せ承認すること、逃げずにい続けることがケアになる。ということはもちろんわかる。

    しかし、「対話」とは一体何なのか。
    ここでの対話は、お互い思ったことを言い合い、認め合うものではおそらく全然ない。
    ケアされる側の尊厳感を高めるために人生史を一緒に振り返り、振り返る中で見落としていたであろう価値というものを見出して、新たに物語を作る作業。
    (個人的には伊藤絵美さんが書かれたマインドフルネス&スキーマ療法の本で書かれていたやり取りを思い出す。)

    ケア者は想像力を総動員し、タイミングと言葉選び、自身の表情、声のトーン、ありとあらゆるものを駆使して、傷つけないように、時に覚悟を決めて介入する。そして逃げ出さずにいる能力も求められる。
    それは対話と言えるのだろうか。

    心理士であっても治療契約もした上で、時にはスーパーヴィジョンもして介入していくことを、医師や看護師が専門の仕事をしつつ、対価に含まれないけれども簡単には行えない「対話」というケアを行うことは本当に大変だと思う。

    それほど、「対話」というものがその人の尊厳感を高める上で大切なわけであるから、まずは「家族」という最小単位でどうでもいい対話が生まれるべく、「ただいる」ができる社会になって欲しいなと思うし、どんな状況でも逃げ出さずに対話をし続けてくれる、心理職の重要性も改めて感じた。

  • ものの見方には「実在論」と「構築論」があり、医療現場ではEBMとNBMが当てはまる。近年、話題になっている「正義の倫理」と「ケアの倫理」もこの観点で考えられるかもしれない。本書ではEBMに比して影が薄いNBMについて、ナラティブアプローチを「解釈」「調停」「介入」の三つの分類を行うことでケアになるという説明がされる。ただこれだけでは不十分で、ケアする側とケアされる側との対話実践への協働の姿勢(共同の営み)が重要で、その背景には、いつかお互いは死ぬべき存在であるという弱さの共有があるということが前提である。ケアという分かりやすくて分かりにくいものをナラティブの観点から説明された良書である。

  •  
    ── 宮坂 道夫《対話と承認のケア:ナラティヴが生み出す世界 20200225 医学書院》
    https://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4260041614
     
    (20220223)
     

  •  妻から本著を勧められ本を貸してくれた。
     西洋医学的なエビデンス・ベイスド・メディシンを実在論的ヘルスケアとし、構築論的ヘルスケアとしてナラティブ・ケアが位置付けられている。今日のナラティブ・ケアにいたるナラティブ・アプローチの研究ご丁寧に紹介されている。ケア者と被ケア者の両者ご向き合い、そして語られる「物語」を両者が共有することがナラティブ・ケアの一歩ということになろうか。保健医療者(ケア者)でない研究者としての著者の距離感でまとめられた勉強になった一冊だった。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50204404

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