さみしかった本

  • 岩崎書店
4.00
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本棚登録 : 160
感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784265850259

作品紹介・あらすじ

ある日、図書館に1冊の新しい絵本がはいりました。森のキノコの下で妖精たちが踊る美しい絵本は、たくさんの子どもたちに人気があって、読んでもらうたびに、本は幸せな気持ちでいっぱいでした。でも、年月がたち、古ぼけてしまうと、もう本はだれにも読まれずに、さみしくてたまらなくなりました。ひとりの少女が、本を見つけて、ページをめくってくれるまでは…。
読んでもらえる人を待っていた本に、本が大好きな少女との幸せな出会いがありました。
「さみしかった本」が、おだやかなあたたかい気持ちに包まれていく時間の流れが、やさしく描かれています。

感想・レビュー・書評

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  • 図書館で、誰にも読まれた形跡のない本に出会うことがある。
    小口も黄ばんで、重いドアを開くように硬くなったページを開く。
    読んで良書だった時は、嬉しくて少し寂しい。
    「待たせてごめんね。ずっとさみしかったね。これからは私が友だちだよ。」
    そう声をかけることがある。イタイと思われるのでこっそりとだけど。

    少女アリスは、古本のセール日に大好きだった本を見つけた。
    どうしても忘れられなくて、探しに来たのだ。
    新刊の頃は借り手が次々にいたのに、時が過ぎて忘れ去られ傷んでボロボロになった本。
    最後の1ページは落丁している。
    しかしアリスにとっては、かけがえのない一冊だった。

    「この本は、ずっとあなたを待っていたのね」
    「じつはわたしもね、子どものころ この本が いちばん好きだったの」
    司書さんの言葉が胸の中に沁みてくる。
    本をしっかりと胸に抱くアリスが、とても幸せそう。
    そして家に帰ってしたことは・・ここはじーんと来るところ。

    低学年の子たちに大人気の本で、丁寧に読むと16分かかる。
    おうちで読むのにもお勧め。
    柔らかい挿絵とあいまって気持ちをとらえて放さないものがある。
    そのうえ、大人の本好きさんにも大人気。
    大切な本の思い出。あれからあの本どうしただろう・・
    色々な思いが駆け巡るのかもしれない。

    訳者の福本友美子さんは「としょかんライオン」を紹介してくれたひと。
    https://booklog.jp/users/nejidon/archives/1/4265068170

    その数年後には「図書館のふしぎな時間」という本も書かれたひと。
    https://booklog.jp/users/nejidon/archives/1/4472059932

    もとは公共図書館の司書さんだったという福本さん。
    もっと図書館を利用してほしい、子どもたちに良い本を届けたい、そんな願いが伝わってくる。
    そしてこの本はもっと大きなものを連れてくる。
    皆さんは、特別な一冊を持っていますか?
    その本に出会ったときの気持ちを覚えていますか?
    今、その本はどこにありますか?

    図書館学の五法則の中に、こんな言葉がある。
    「いずれの読者にもすべて、その人の図書を」
    「いずれの図書にもすべて、その読者を」
    すべての本に、読まれる喜びがありますように。
    すべてのひとに、そのひとだけの一冊が見つかりますように。
    そして「一度も貸し出されなかった本」を展示してほしいと願うワタクシなんである。

    • nejidonさん
      5552さん♪
      そうなのですよー。
      みんなが読む本ならすでに情報があふれかえっているでしょ?
      だからそういうのはスルーするのです。
      ...
      5552さん♪
      そうなのですよー。
      みんなが読む本ならすでに情報があふれかえっているでしょ?
      だからそういうのはスルーするのです。
      読まれない本にスポットを当てたいの。
      それが結果としてマニアックな本になっているのです。
      それなのに「いいね」をして下さる皆さんには頭があがりません(*^^*)
      そうねぇ、ブクログの特集で新たに欲しいところですよね。

      この本、ありましたか!良かった良かった!
      すごくじわっと来るので、泣かないでくださいね。
      2021/03/10
    • トミーさん
      nejidonさん

      nejidonさんの優しい心に打たれました。
      見習わねば…
      nejidonさん

      nejidonさんの優しい心に打たれました。
      見習わねば…
      2021/03/12
    • nejidonさん
      トミーさん♪
      ありがとうございます!
      本には優しいけど、人間にはどうかなぁ(笑)
      というのは冗談ですよ(*'▽')
      どの本もみな、読...
      トミーさん♪
      ありがとうございます!
      本には優しいけど、人間にはどうかなぁ(笑)
      というのは冗談ですよ(*'▽')
      どの本もみな、読まれることを願って世に出てきたものです。
      全ての本が等しく陽の目を見られると良いですよね。
      2021/03/12
  • 表紙をめくると、‘これは◯◯◯◯◯の本です’と、○の部分に自分の名前が書き込めるようになっている。
    あー、そうだそうだ、子供のころは自分のものには全部名前を書いていたっけ、一年二組○○○○○みたいに。
    なんだか嬉しかった。

    あなたは‘これは自分の本’といえるような、そんな特別な本を持っているだろうか。
    図書館で何度も借りてしまうような、家の本棚に何十年も差さっているような。
    そんな‘特別な本’とある本好きな少女の物語。

    表紙の絵が好き。
    お気に入りの場所で、窓から差し込む太陽光で本を読む。
    棚の上には、いつでも読める大好きな絵本が見守っている。
    こんな幸せな状況ってない!(断言)

    • 5552さん
      夜型さん

      今後ともよろしくお願いしますね。
      夜型さん

      今後ともよろしくお願いしますね。
      2021/03/28
    • 夜型さん
      5552さん

      じゃあさっそく
      マタタビ町は猫びより(辰巳出版)をどうぞ。
      5552さん

      じゃあさっそく
      マタタビ町は猫びより(辰巳出版)をどうぞ。
      2021/03/30
    • 5552さん
      夜型さん

      ああ、その本は昨年読みました。
      ブクログに感想はあげてないのですが。
      頭にサイレンをのせた「ねこポリス」が、いる町のお話...
      夜型さん

      ああ、その本は昨年読みました。
      ブクログに感想はあげてないのですが。
      頭にサイレンをのせた「ねこポリス」が、いる町のお話なんですよね。
      もう、可愛すぎて顔がフニャーフニャーになります。

      夜型さん、球筋はグッドですよ。(←何者)

      そういえば『猫の島』買いましたよー。
      かーなーり、重い話のようなので、覚悟ができたら読みますね。



      2021/03/30
  • この作品は、「5552」さんの感想から出会うことができました。
    「5552」さん、いつもありがとうございます。

    タイトルが過去形で良かったなと、本当に思う。

    紗のかかったような独特な絵柄に味があり、ノスタルジックで温かい雰囲気を感じながら、読んでいくと・・・内容としては、長く図書館で誰にも借りられずにいた本に、アリスが興味をもって借りるという、シンプルなおはなしなんだけど、何故だろう。すごく、私の胸にこみ上げてくるものがある。フレーズも素敵で、

    「こんなすてきな本、見たことないわ。かりていっていい?」

    「きょうは このたなで ねむるんだな、とおもうと、本は うれしくて たまりませんでした」

    「ここはきっと めでたしめでたしでおわるのよね」

    アリスの本に対する、こまやかな愛情をこれでもかと感じてしまう私。お子さんが読めば、すごくうれしい気持ちになると思うのだけど、おそらく、本を別のなにかに例えたりしだすと、妙に本に感情移入してしまい、アリスの、とめどのない、本にそそがれるやさしさには、泣きそうになる。

    雨が降ってきた場面での、本の表紙の女の子の涙は、大人へのメッセージにも捉えられるし、絵本だけど、老若男女問わず、本の好きな方にお勧めできる、やさしい気持ちになれる作品だと思います。
    特に、いつまでも大切にしている本のある方には、きっと心に響くものがあると思います。

    本をうれしそうに掲げてるアリスの絵が好き。

    • 5552さん
      たださん、こんばんは。
      コメント欄でははじめましてですね。

      こちらこそ、いつもありがとうございます。
      『さみしかった本』お読みにな...
      たださん、こんばんは。
      コメント欄でははじめましてですね。

      こちらこそ、いつもありがとうございます。
      『さみしかった本』お読みになったのですね!
      実はこの本、フォローしている方のレビューを拝見して読んだんです。
      こうやって本の輪が広がってゆくと、ゆるやかな繋がりの読書会をやっているみたいで楽しいです。

      あ、そうそう。
      たださんの感想がきっかけで『みつばちと少年』と『prey human』読みました。
      どちらもたださんの感想がなければ読むことは無かったと思います。
      ありがとうございました。

      これからも感想を楽しみにしていますね。
      2021/10/03
    • たださん
      5552さん、こんばんは。そして、はじめまして。

      いつも5552さんの個性あふれる本棚を興味深く拝見しており、一つの図書館を巡っているよう...
      5552さん、こんばんは。そして、はじめまして。

      いつも5552さんの個性あふれる本棚を興味深く拝見しており、一つの図書館を巡っているような楽しさを感じております。

      本もいいですけど、音楽や映画に関しても、時折、私の思い出を刺激するのが、また印象的です。

      5552さんも、レビューがきっかけだったのですね。私のそれにも、興味をもっていただき、ありがとうございます。

      確かに、色々な考え方や嗜好をもつ方々のレビューを読んでいくうちに、次々と新たな興味や、知らなかった作品を知る喜びを知り、それが本の輪となってゆく過程は、なんとも言えない楽しさを実感しますね。

      「ゆるやかな繋がり」というのが、また私の性に合っているようで、いい言葉だなと思いました。

      今後ともよろしくお願いいたします。
      2021/10/03
    • たださん
      5552さん

      コメント、ありがとうございます。
      5552さん

      コメント、ありがとうございます。
      2021/10/03
  •  日曜日の新聞、図書紹介のページは毎週の楽しみです。様々な分野の本の紹介、レビューアーのコメントがあり、次はこれを読んでみようと毎週楽しみにしています。そんな記事で紹介されていた本です。

    本の紹介より

    「ある日図書館に新しい本が1冊入りました。
     本は大勢の子供たちに読んでもらって幸せでした。
     でも、何年もたって古ぼけてしまうと、
     本はもう誰にも読まれず、さみしくてしてたまり
    せんでした。
     一人の女の子が、本を見つけてページをめくって
    くれるまでは。」

     読んでくれる人を待ち続ける本と、本が大好きな
    女の子との出会いを優しく描いた絵本です。

     古くなり最後のページが無くなった本も、少女にとっては宝物で、最後のシーンに想像をめぐらせていました。閉架エリアに移されて、出会うことのなくなった本を少女は探します。やがてバザーに出される本との再会。

     司書さんのやさしい一言「私も小さいころ、この本が大好きだったのよ」初めて図書館に入った本を囲んでいた少女の一人は、後の司書さんでしょうか。

     翻訳者の福本友美子さんの別作品「としょかんライオン」も楽しいエピソードです。

  • 図書館の本の運命というものを考えてしまいました。新刊として、次から次へと借り出され、いろんなタイプの読者に出会う。そのうちに、他の人気本に押されて、だんだん借りられなくなってきて、書架で、そのうち書庫で過ごすようになる。遂にはリサイクルされてしまう。この本は、ずっと好きでいてくれたアリスのもとに落ち着くことができた、幸せな本。もうさみしくありませんね。
    アリスは、広い好奇心と自分の原点に繋がる「好き」をバランス良く備えた賢い子だなぁ。

  • 〝ある日、図書館に新しい本が1冊はいりました。鶯色の表紙で、森のなかの大きなキノコの下で、女の子がひとりで立っている絵が描いてあります。この本は沢山の子どもたちに人気があって、読んでもらうたびに、本は幸せな気持ちでいっぱいでした。でも、年月がたち、古ぼけてしまうと、もう誰にも読まれなくなり、寂しくてたまらなくなりました。ひとりの少女が、この本を見つけて、ページをめくってくれるまでは…〟本が大好きな少女と「さみしかった本」との幸せな出会いが、穏やかであたたかい気持ちを育んでくれる絵本です。

  • 表紙の女の子の表情がとても好きです。
    本を読む人の表情って…
    老若男女問わず
    みんなこんな顔をしているんじゃないかな。
    なんて思いました。

    この絵本は、とある本と女の子の出逢いを描いたものです。

    この女の子と本との出逢いほどではなくても、
    運命的な本との出逢いは、
    本を読む人には
    訪れるもののように思えます。

    私にとっては、どうだろう……
    『みどりのゆび』
    は、何度も何度も学校の図書室で借りてきた
    大切な本です。
    その他にも
    手元にはもうなくても、
    時折思い出しては、
    あたたかい気持ちになる本もありますね。

    この絵本を読んで、
    本のある生活を送ってこれたことを
    しみじみと良かったな…
    と思いました。

  • 一冊の本と少女の恋物語です。といっても過言ではないでしょう。
    切なくて、何となく懐かしい匂いのする絵本でした。

    仕事上多くの本と接する人間としては、ツッコみ所もありつつ、本当に考えさせられるお話でした。

    この本は「さみしかった本」であって、今はさみしくないんです。

    でも実際の公共の書架には「さみしい本」がたくさんいます。
    「しあわせな本」「いそがしい本」「疲れはてた本」「満身創痍の本」いろいろいますが、やっぱり本として一番悲しいのは「さみしい本」でしょう。
    そして、人の意識の外にあるから気づかないけど 「さみしい本」は思っているより多いということ。

    中には自分が生まれるよりも前に入ってきているのに、一度も開かれた形跡のない本にもよく会います。もう「さみしかった本」のように人を恋しく想う「心」も失ってしまうだろうな。

    子どもはもちろん、大人にも、書籍とふれあう機会の多い人にも読んでほしい絵本でした。

  • 図書館の本
    たくさん読まれて 古びて 忘れられていく
    だれかの大切な一冊になれる
    それがしあわせかなあ
    本をさみしがらせてるかな 私も

    ≪ あの出会い 心ときめき いつまでも ≫

  • 「本」冥利に尽きる…


    「本」になったことはないけれど。

    あたらしかった本があたらしくない本になり、
    さみしかった本がさみしくない本になるまでの紆余曲折。

    結末を想像できるのだけれど、それでも、
    「ほっ」と胸をなで下ろしてしまう。そんな結末。

    表紙が色あせても、
    ページが破けても、
    最後のページがとれてしまっていても。
    女の子にとっては「かえのきかない その本」


    この本の最後のページはとっても幸せなページです。

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著者プロフィール

【ケイト・バーンハイマー・文】  アメリカの作家。絵本作品の"TheGirlintheCastleInsidetheMuseum"(未邦訳)は、2008年のパブリッシャーズ・ウィークリーで「最も優れた絵本」に選出された。おとぎ話の専門家、作家、編集者としても活動。作品に"Horse Flower Birds"(未邦訳)ほか多数。"MyMother She Killed Me My Father He Ate Me:Forty New Fairy Tales"(未邦訳)で、2011年に世界幻想文学大賞を受賞。

「2013年 『さみしかった本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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