人は意外に合理的 新しい経済学で日常生活を読み解く

  • 武田ランダムハウスジャパン
3.21
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本棚登録 : 426
感想 : 43
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784270004364

作品紹介・あらすじ

この世はとかく不条理なもの、人間はとかく不合理なものだとだれもが口をそろえて言う。だが、本当にそうだろうか?イギリス発・新進気鋭の人気ジャーナリストが経済学を使って日常生活の裏側に隠された因果関係をあぶり出す。

感想・レビュー・書評

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  • さて、この本で一章を裂いて「合理的な人種差別の危険性」というテーマが書かれています。基本、アメリカ黒人についての話なんだけど。

    要するに、生得的な能力に人種間に差がなく、「黒人嫌い」というような不合理な差別意識が雇用側になかったとしても、黒人労働者は教育を受けることをやめ、雇用者は黒人をなるべく傭わないよう、負のスパイラルが起きてしまう可能性とそのメカニズムの話がありまして。

    さらに、「白人の真似」をするやつは嫌われるというシステム、「勉強好きな黒人の子供は仲間から徹底的にいじめられる」という背景にも残酷だけどある種の合理性がある、どんよりする話が載っている。

    一応念のため、この章の最後には(とてもアメリカらしい)希望の種も乗っています。しかしこの希望の種は日本では、特に現代日本では成立しにくい要員があるので、ますますうんざりできます。

    という章を読み終わった後で、Twitter読んでいたら姉と知人がこんな会話をしていた。

    * 「そえば小学校高学年の頃の勉強のできる女子には、独特の「優等生やってらんねーなあ」的アンニュイ感があって、あれはよかった。萌える。...」
    * 「彼女たちが向かった高偏差値の私立の女子高ってのは、シェルターだったのかもしれないな。」


    ああそうだった、日本の場合、自縛的に発生してしまう最も顕著な差別は性差だった。

    昔から分からないことがあって、少なくとも僕は自分の周りにいる人たちを見る限り(まあなんていったって妻はどう考えても僕より優秀なエンジニアだ)、 Computer周りの作業をさせたりさせたときに、女性が男性よりも優れている理由はあっても、劣っている理由はあまり見つからない。ただ単に人口が少ない。

    この前中3相手に教えていて改めて気づいたのだが、「それが分かるか分からないか」以前に、コンピュータに関する話と言うだけで、女子の一定層が "It's not my business!" 感を醸し出しているような気がしたのだ。

    気がしただけなのか本当にそうなのか、合理的に説明できるような統計は取っていないので、印象論なのですが、コンピュータに限らず、「理系に女子が少ない」のは、「理系に女子が少ない」から。「女性の社会進出が進まない」のは、「女性の社会進出が進んでいないから」というような、自己完結的な説明と、それを裏打ちする自縛的なコミュニティによる同調圧力がかかってるせいなんじゃないのか、という仮説がだんたん重くのしかかってくる。

    勉強をすること、特に理系の勉強をすることが「男の子の真似」というような明示的な揶揄をされることは少ないとは思うのだが、「女の子のくせに」というフレーズであれば、まあ馴染みがあるでしょう。

    ちなみに、ちなみにその続きで知人がtwitいたのだが、

    「子供の頃、いじめられるのって真っ直ぐっていうか純粋っていうか不器用な子じゃない?勉強できるできない関係なく。真っ直ぐ学問にうちこんでる人もその中に含まれるかもしれないけどー...」

    まあ、そうなのかもしれず。要するに自分の知的能力を「空気を読む」事に振り向けているほうが、短期的な生きやすさに圧倒的に寄与する。それをしないですむのは、「空気を読んでかつそれを無視して自分のしたい方向に空気を作れる」HPとMPを持つ革命家か、「空気を読んでないと言われてるのを無視して、自分のしたいことに熱中できる正負両方の鈍感さ」を持つ魔法使いしかないのだろうか?

    となると、シェルターとしての私立女子校は一種のアフォーマティブ・アクションとして機能して居るんだろう。一次逃避には有効だろうけど、中期手に社会全体にとっては逆に足かせになってしまう可能性もある。

    まあいろいろ考えつくんだけど、この章の「黒人」を「女子」だと思って読んでみると、気味が悪いほど一致するような気がするんだよ。そして、その事がものすごくこの社会を僕にとって生きにくくしているような気がして成らないんだよね。

  • 昨年から読書会に参加するようになり、経済学のそれなりに分厚い本を読むようになりました。といっても経済学を体系的に学んだこともなければ本職でもなく、それゆえにもっぱら読み物的なものしか読んでおらず、素人に毛が生えた程度ではあるのですが、この本はそれなりにおもしろく読めました。

    経済学の理論といえば、現実にはあり得ない制約や単純化がなされた市場モデルや、難解な数式の羅列というイメージがありますが、本書で取り上げられるのは日常生活の中の、およそ経済学とは関係のなさそうな問題であり、数式を全く使わずに人の行動を解いていきます。
    経済学のモデルでは人間は完全に合理的な判断を下す前提ですが、実際には趣味嗜好もあれば感情もある。そのため不合理に見える判断を下すこともありますが、実は不合理に見えるという私たちの常識のほうを疑うべきだ、というのが、本書全体を通した考え方と言えるでしょう。

    さて本書、1章がいきなりセックスの話なので、読んだ矢先にどん引きする人もいるかもしれません(しかも2章がギャンブルの話だから、なおさら)。ですがセックスもギャンブルも経済学の理論から、常識に反すると思われる行動が実は合理的だったということを導いています。

    後半の、都市と農村(人口過密と過疎)の問題は、自分の経験としてよくわかります。2009年に、自分は徳島から東京に転職し、住まいも埼玉に移しました。元の仕事が嫌だったということはなかったのですが、東京という大都会が持つ強い魅力――多くの人に会え、刺激を得て、知識を獲得すること――にとりつかれ、住宅や通勤の環境が悪化することは受け入れることができました。
    それと同じことが、多くの人の身に起こっているのだというのがわかります。交通網の発達とインターネットの普及で、地球のどこにいても同じものを食べ、同じ情報を得ることができます。ところが実際には生きた情報を得るため、人の多いところにさらに人が集まってきます(交通網の発達により、移動も楽になったことも理由でしょう)。これが、都市がさらに発達し、農村がますます過疎化するロジックです。

    こういった、一見不合理に思えることが実はそうではない、ということが、経済学の立場から見えてくるというのは、非常に示唆に富んだ話だと思います。
    先日のブログにも書きましたが、大相撲の八百長問題を経済学的に研究する人はいないでしょうか。

  • まあまあかな。原題『The logic of life』で、邦題はややミスリードか。
    人がいかにインセンティブに反応するかを、様々な事例を引用して明らかにしていく。

    なぜ人種差別がなくならないかを、インセンティブの観点で説明したのは面白かった。

  • 3.4

  • 【 #書籍紹介 】 @BizHack1
    13年前に買った経済学の本を再読。

    10代米国人の性問題、恋愛と結婚、雇用と労働、住居、人種差別、犯罪など盛りだくさんですが、1頁で眠くなるほど読みにくいのは変わらずデス。

    内容は良いですが、根気が必要です。

    #人は意外に合理的
    http://ow.ly/nsif50G4cQd

    2021/09/04

  • 感想
     12年前の本ですが、私の人事の狭い世界からすると、広い視野を持てと言われているようだった。

    評価
     図解が一切なく、論理構造の説明もないので、
     頭の整理が苦手な自分には結構苦労。
     意外な?合理性はいくつもわかるが、
     多様なエピソードが紹介されており、
     日本の社会には向かないものもあるかなと。

    内容

    ・未成年のセックス事情の変化
     リスクテイクの変化によるもの
    ・ポーカーのゲーム理論
     綿密に考えられた、手札とゲーム手法の戦略
    ・職場の生産性
     一人の労働者の影響力が生産性を上げる

  • 1

  • *「ヤバい経済学」を併読する。

  • インセンティブの話が意外とおもしろい。合理的と思われることの裏側にはロジックがあった。



  • mmsn01-

    【要約】


    【ノート】
    ・新書がベスト

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著者プロフィール

フィナンシャル・タイムズ紙シニアコラムニスト。
フィナンシャル・タイムズ紙で長年にわたりコラム「The Undercover Economist」を連載。2006年~2009年にはフィナンシャル・タイムズ紙にて編集委員を務めた。シェルや世界銀行での勤務経験もある。2011年~2017年、英国王立経済学会評議員。英国王立統計学会の名誉フェロー。オックスフォード大学ナフィールド・カレッジの客員フェロー。現在はオックスフォード在住。

「2022年 『統計で騙されない10の方法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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