- Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
- / ISBN・EAN: 9784271310013
感想・レビュー・書評
-
「世界は夢の間に作られたひと筋の歌か旋律に似ている」
「きょうびは、結婚は葬式じゃ。」
宥恕すらも罪になる、そんな時代。社会の因襲と自由意志とでもがきゆれる、男女(They)のおはなし。結婚という儀式にとらわれずに愛に満ちた家族として幸せに生きてみたいと信じる彼らのおはなし。そしてこれは今から130年ほどまえの、おはなし。
大空を、夢みることすらもゆるされない可哀想な鳥たち。けれど天は それ に(きちんと)いかづちを落とすのだ。
おんなはさびしい。おとこは飢える。相見えてしまうその狡さを、お互い認知していればいいのに。
結婚が、最終的な逃げ場所でも楽天地でもないのだと、しっている。"生きたくないという来るべき普遍的な願望の始まり"すらも。
信仰と懐疑。からっぽな歌でからっぽをうめて、からっぽな神を仰ぐ。その真理をしってしまって、どんなにか空虚を哀しみで満たしたであろう。もうそんなものはごめんだ、という抗議のさけびも、曇天に吸いこまれてゆく。
この時代のスーをおもうと、彼女はあるいは特別なセクシャリティだったのかなともかんじた。
あと関係ないけれど、再婚をなんどもくりかえすひとはなんてロマンチックなのだろう、とおもう。肉体的苦痛があるのなら逃げたほうがいい。けどさ、ふたりで行き詰まったその先に、ふたりのそれぞれの成長と進歩があったかもしれないのに。我慢したり寄りそう努力をしようとしないひとは結局、おなじところに行き着くのに。なんて生意気にもおもうのでした。
「思うてたんとちがう!」それは人生そのものですもの、ね。
時爺の哀しみは「存在のない子供たち」、群衆のなかでのジュードの説教は「聖なる犯罪者」だった。はるかむかし、150年くらいまえからとっくに謳われていたんだ、世界の真理は。
「いま男どもが酒場で酔っぱらっている理由がわかり始めた。」
「たとえこの世の醜さを見ても、病的な悲嘆は避けること、そうではなかったか?」
「この性格の弱さ─ そういってもいいだろう─ は、かれの無用な人生に幕がおりて、再びすべてよしとなる前に、たっぷり苦しむように生まれついた類の男であることを示唆していた。 」
「ぼんやりとおぼろに、社会の習慣には何か間違ったものがあるように彼には思われた。それは長年の思索と労力を伴うよく練られた計画を抹殺し、下等動物に優っていることを示し、時代の一般的進歩に苦労を捧げようとする男の唯一の機会を棄却するのだ。」
「ある意味で、キリストと大聖堂の両者を知っている、浮遊民族の学生や教師は、この地の意味では、まったくクライストミンスターではないのである。」
「どの顔にも、彼女らがこねて作られた女という性の罰として、「より弱きもの」という伝説が刻まれていた。」
「ねえ、スー、人は証拠がなくても何かを信じなくちゃならないんじゃないか。ユークリッドの問題を信じる前にすべて解くほど人生は長くはない。ぼくはキリスト教を選ぶよ」
「でもね、君のしたいようにみんながしたら、世の中の家庭は崩壊しちゃうよ。もはや家族が社会の単位ではなくなってしまうだろう。」
「妙なことねえ、あなたを夫としてでなく、昔の先生と思い始めた途端、あなたが好きになるなんて。」
「ただ女は、結婚によって与えられると思われている威厳と、時には結婚によって得られる社会的な優位のために結婚するのよ── あたしは威厳も優位もまったく要りませんわ」
「敗北に同意したのは私の貧困であって、私の意思ではなかった。───── 国の名士になる絶好のチャンスをとらえるには、魚のように冷血で、豚のように利己的でなければならないのです。」
「成功者は、多かれ少なかれ、利己的な人です。献身的な人びとはしくじります……」
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
資料ID:21403206
請求記号:938.68||H||13
配架場所:普通図書室