エンタメビジネス全史 「IP先進国ニッポン」の誕生と構造

著者 :
  • 日経BP
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784296001439

作品紹介・あらすじ

「エンタメの歴史は、日本人の英知と野心の宝庫である」佐々木紀彦(PIVOT代表取締役)

おもしろすぎるゼロイチ挑戦の物語――。
任天堂、ポケモン、DeNA、手塚治虫、BL、コミケ、ジャンプ、コロコロ、正力松太郎、ディズニー、東アニ、エヴァンゲリオン、ジブリ、鬼滅、ソニー、ナベプロ、ジャニーズ、宝塚、松竹、吉本、力道山、グレイシー、東映、角川、巨人、新日本プロレス……

本書は、エンタメ産業がどんな環境下で誰の手によって生まれ、どんな手段でビジネスモデルを構築していったのか、そのエポックをまとめたエンタメビジネスの教科書である。同時に本書は、ゼロイチでビジネスを生み出すための教科書にもなる。なぜならエンタメは市場ゼロから生み出されたものだからだ。人を喜ばせたいというピュアな発想から生まれ、その可能性を見いだした投資家などの支援者がついて、コンテンツを供給するクリエイターが企業の中に入り、ユーザーが定期的にお金を払う状態に至るまで、並々ならぬ過程を経ている。

この産業には新時代の予兆がある――。
興味本位で非実質的なものだからこそ、エンタメ産業のビジネスモデル構築は非常に前衛的で実験的である。この実験が先行することによって、技術的イノベーションのたびにユーザーがどう変化するかを他産業は時間をかけて受容し、アジャストしていくことができる。「エンタメ産業のカナリア」の音楽産業が先行して引き受けたダメージを見ながら、他のエンタメ産業も、それ以外の重厚長大産業すらも、新時代の予兆を感じ取るのである。エンタメは社会構造の入口/出口に恒常的に立ち現れる、「産業の様式美」である。(「終章」より)

感想・レビュー・書評

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  • 確かに「色物」といわれ、ナメられているエンタメ業界だが、、、
    ここまで体系的に歴史と構造、その変遷を整理したものは初めて読んだので、知らないことだらけで、本当に面白かった。

    テレビ局による電波独占、電波使用料はわずか50億円。売上に対する原価率は0.3%。テレビ局の倒産事例はなし!

    様々な事例をデータをもとに定量的に説明されており、、、エンタメ社会学者を名乗る著者は、本当に凄い!

  • エンタメ社会学。
    エビデンスとなるデータに流れから各業界を分析。
    ゼロから産まれた市場との解説にたしかに。
    賭場と任天堂の時代を考えても遊びは子供のためだけでないことよくわかる。
    どの市場も究極的には無駄だが満たされる一過性の体験の継続性なのかも。
    本能はギャンブルにあるのだろうか。

  • 桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/volume/1319848

  • 序章、ゲームの章、終章を1時間で読了。サクッと読めた。というか読めてしまった。
    これまで本を読むのが苦手でほとんど読めたことがない自分が、転職を機に一念発起して読み始めた記念すべき一冊目であるが、これほどまでにスルスルと読めてしまったのはほとんど知っている内容だったからなのだろう。

    終章でビジネス人材がエンタメ業界に集まってほしいと書かれているように、ビジネス経験は豊富であるものの、プライベートで自分の好きなエンタメにしか触れていないような、土地勘のない人が最適読者と思われる。平たく言えば、オタクには物足りない本かなと。

    とはいえ、エンタメ業界の構造化が目的の本であるため、その意味では網羅的によくまとまっているとも言える。
    私も興行やスポーツにはそこまで詳しくないので、その章を読めばなんとなくの知識が体系化され非常に参考になると思う。

    そういった意味でこれからエンタメビジネスに取り組まんとするビジネス人材の教科書としてオススメ。

    誤字脱字が目立つのは今後の校正に期待したい。

  • エンタメの歴史がこんなに面白いと思わなかった

  • メディアありきのコンテンツの時代から、コンテンツがメディアを選ぶ時代になっている。
    時代のエポックをたどり、エンタメを9つのブロックに分けて説明してある。
    「興行」
    ゲームと映画と出版などの、表現をメディアに焼き付けた「平面的」なものではなく、「人と空間」がそのままメディアとして成立しているもの。春の桜のように「消えてしまう」ものであり、だからこそ本当に美しく、見るものを魅了する。「その瞬間」を消費するもの。興行とは物語でもあり、時代を超えたストーリーが人を魅了する。その物語もまた物語を紡いでいく。興行とは、「観客を集め、金を取って、見せるもの」ではなく、「見せるものへの期待値を作り出し、それによって金を払うに足ると感じるファンを集める仕事」、劇場と土地に紐付いている興行は利権との戦いでもあった。宝塚などは、買い占めた土地を分譲住宅用に高く売って利益をあげたりした。日本最初の「土地開発」である。劣等感が次のエンタメを育てる、仏や独といった文化的ライバルに劣等感をもつ英国、さらにそれに劣等感をもつ米国が、英国のスポーツであるクリケットやサッカー、ラグビーをこばみ、あえて野球やアメリカンフットボールを作り出していった。演劇もオペラを拒み「ミュージカル」を作り出していった。熱狂を生むといった点でライブ興行にまさるものはなく、ライブの持つ魅力は「感染力」である。ライブとは「その場その瞬間にしか起こり得ない雰囲気を楽しむものである」。興行の妙味は「場の盛り上げ」であり、ゲーム実況や音楽ライブなどもコラボや記念日などの「イベント」を起こし、投げ銭はさながら花吹雪である。「場の盛り上げ」のうまさは日本の興行界の磨いてきたもの、ゲームやアニメに落とし込んだのがVチューバー。
    「映画」
    「ブロックブッキング」によって成長。制作から興行まで一社統合型の企業が牛耳っていた時代に、作る段階で劇場での上映を保証する仕組み。テレビ局事に番組を作り、放送が保証されるテレビも同じ構造といえる。「メディアの出口を押さえているから、ゼロイチで確率の低い最初の投資を意欲的に行える」状況が、「千三つ」の段階で発掘・育成投資を行うことを可能にする。
    映画の凋落とともに、映画会社はリスクの高い制作を切り離し生存をはかった。映画俳優はテレビに出れない約束事も有名無実化し、テレビ進出、プラットフォーム特性を加味した作り方の模索が始まった。空白状態となった業界にインディーズによるピンク映画という新しい形態が現れた。金がかからず経験を積めるこの形式で多くの監督が育った。その後はビデオの発明で市場が広がった。実は自国の興行の半分を自国産映画で占めているという国は少ない(インド日本韓国中国のみ)。大抵が米国の映画を見ている。消費と制作の両方で独自性を持つというのはかなり難しい。規制などなくこれを実現している日本は、草の根のクリエイティブな監督・制作チームが育ち、消費者の嗜好の多様性が育まれているかが示されている。「映画大国の一角」である。
    「音楽」
    エンタメ業界のカナリアであり、技術の革新に1番影響されてきた。著作権の発生により市場が整備され、クリエイターに還元されるように。歴史としては、黒人から始まり、労働の中のブルース、キリスト教の影響を受けた南北戦争中のゴスペル、死者の鎮魂の意味で歌われたジャズなどがある。エルビィスプレスリーがロックを編み出し、黒人と白人の融合を促した。日本は世界的に見ても音楽業界はガラパゴスである。アイドルビジネスとしての音楽が人気になり、タレントがうたう歌が人気に。ナベプロやホリプロなどがテレビとの共犯関係の中でアーティストを育て、レコード、CDを販売するビジネスとなった。「360°ビジネス」というように、別のビジネスに展開しているのが日本の音楽の特徴。
    「出版」
    流行の周辺で繁栄を享受する産業である。日本の出版業界の特徴として「再販売価格維持制度(価格の固定)」「委託制度(書店が買い取らずに出版社に返品できる仕組み)」そして、出版-取次-書店が生み出す流通構造の3点にある。本は定価販売で安売りされず、また、書店が在庫リスクをもたないので売れない本も店頭に並べやすく、多種類の本を揃えることが出来る。再販制度は過渡期には良いが、成熟期にはメーカーと小売のバランスがアンバランスになる。著作物であるから再販制度は維持されている。委託販売は、書店の意思に関係なく大量の本や雑誌を送りつけられる。
    これらの流通の仕組みは、逆に何が売れるかの見立て力を持たない書店を乱立させる結果となった。書籍・雑誌が凋落傾向にある中で、ここに来てようやくメディアミックスとキャラクタービジネス化という異業種とのコラボが、出版業を次なる成長に導く道筋として見えてきている。
    「マンガ」
    戦後の紙芝居師から発達。キャラクタービジネスでさらなる発展をはかった。
    「テレビ」
    国家による電波管理下で競争なき独占であり、市場原理がなく、地方局はキー局などから番組が配給されたりもする。
    テレビの神正力松太郎が官僚から下野し読売新聞を買い取り、テレビに目をつけた。NHKとの過酷な戦いの末、市民権を得た、高価なテレビを街頭に置き、その様子を更にテレビで放送するなどの機転の効いたアイデアや、コンテンツとしての、巨人軍、力道山などのプロレスも正力松太郎がプロデュースした。田中角栄が、新聞社の下にテレビ局をつけるという資本構造を作り、地方局などの全国系列化を行い、制作会社の分社化を行った。まるで新聞社の販売店のように、全国に系列地方局を置きキー局から配給されたテレビ以外流せないようにする。地方局にとっては広告料を得れる良い構造。その後赤字が続いたテレビは制作会社を切り離し再建をはかった。すべてのコンテンツを吸収しで大きくなってきたテレビは、新しいメディアの誕生に脅かされている。
    「アニメ」
    ハリウッド45%日本25%、ハリウッドよりも破格のやすさで2Dアニメを量産。テレビ番組のジャンル別海外売上は、アニメが70%以上を占めている。手塚治虫が私財をなげうってアニメを開発した。その後、鉄腕アトム以降、菓子や玩具メーカーが番組に広告を出すスポンサーを出す形式の子供向けアニメが盛んに。アニメ製作委員会形式の「みんなで所有して、みんなで広げる」という仕組みが担保している。アニメで育った、関連グッズにお金を惜しまないオタクが育ち、継続的に商品を購入するファンの構造を元に、ターゲットが多様な大人向けのアニメができる。マネタイズの面以外でも、日本の深夜アニメが発達した理由に文化の違いがある。米国はアニメを規制した、日本はきせいしなかった。スタジオジブリがアニメを「作品」に仕立て上げた。製作委員会の出資を多く行ったアニプレックスはハイリスクハイリターンで、あたった作品はパブリッシングを行い、持続的な収益も得た。アニメは、リスクを取った分だけ成功した時利益を得れる。日本に足りないのは作家性と両輪をなす商業性である。
    「ゲーム」
    鎖国時の花札の任天堂をルーツとし、マンガなどのメディアリミックスで発展。家庭用ゲーム機でしのぎを削り、後にオンラインに移行していった。成功するかもしれないという期待値がモチベーションとなっている業界で、成功の保証はない。企業と同じようなプロセスをコンテンツを製作するごとに行っている。1人の「あの時、あの瞬間」の妄想に近いアイデアが何万何千万もの人をわかせる、やめられないアドレナリンプロセス。
    「スポーツ」
    新聞販売促進のために野球が盛り上がった、スポーツは興行収入、広告収入に分かれている。電通によるスポーツビジネスの寡占化。顧客開拓を目指す新しいメディアは、スポーツは確保しておきたいコンテンツである。メディア競争が放映権獲得を加熱化させる。グローバル・メディアに乗れるかがスポーツの分かれ目になってきている。日本は既得権益にしがみつく関係者のためそれが遅れている。日本で放映権が下がるにつれて、スポーツ団体チームの経営力が必要となる。スポーツコンテンツ配給国となるのか、スポーツメディア大国になるのか運命の分かれ目である。

  • エンタメの歴史が1冊で追える

  • 面白い!進めた友人も絶賛。

  • 興行は作り手と観客で作り上げるもの。CD・映画とは違い、ライブや演劇がそれにあたる。

    エンタメビジネスにおいて、日本に足りないのは、クリエイティブではなく、ビジネス側の視点やマーケティング。
    ジブリもプロ野球も、昔は欧米と市場規模に大差がなかった。

  • ここまで多岐にわたる芸能・コンテンツの長い歴史・背景を紐解いた書籍はないと言える大作。面白く、ためになり、今後の日本の生きる道を見据えた視点も得られ、かつ読みやすく簡潔にまとまった、手軽で貴重な一冊。

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著者プロフィール

ブシロード執行役員、早稲田大学ビジネススクール非常勤講師、シンガポール南洋工科大学非常勤講師1980年栃木県生まれ。東京大学大学院修了(社会学専攻)。カナダのMcGill大学MBA修了。リクルートスタッフィング、DeNA、デロイトトーマツコンサルティングを経て、バンダイナムコスタジオでバンクーバー、マレーシアにて新規事業会社を立ち上げる。2016年からブシロードインターナショナル社長としてシンガポールに駐在し、日本コンテンツ(カードゲーム、アニメ、モバイルゲーム、イベント、プロレス)を海外展開。著書に『ソーシャルゲームだけがなぜ儲かるのか』(PHPビジネス新書)、『ヒットの法則が変わった いいモノを作っても、なぜ売れない? 』(PHPビジネス新書)、『ボランティア社会の誕生』(三重大学出版会、日本修士論文賞受賞作)がある。

「2019年 『オタク経済圏創世記 GAFAの次は2.5次元コミュニティが世界の主役になる件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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