Talent/Strategy/Risk 人材・戦略・リスク 長期的な価値創造を担う取締役会の仕事
- 日経BP 日本経済新聞出版 (2022年5月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784296113514
作品紹介・あらすじ
株主至上主義、短期主義から脱するために
取締役会は何に注力すべきか。
取締役会の新しいリーダーシップを
世界的専門家3名が解説。
伊藤邦雄氏(一橋大学名誉教授)推薦!
「新しいTSR(人材・戦略・リスク)」によって企業は経営の方向性を転換し、広く株主と社会全体の両方に利益をもたらす「長期的成長」を生み出すことができる。
・短期主義から脱却し、ひいては古いTSR(株主総利回り)も達成するために、企業はどのように新しいTSRを実践すればいいのか?
・新しいTSRによる企業経営を実現するために、取締役会に求められる新たな役割とは?
・コーポレートガバナンスを機能させる取締役会のベストプラクティスは?
機関投資家、企業経営のアドバイザー、人材マネジメントの専門家の3名が取締役会の役割を再定義し、長期的な企業価値のためにリーダーシップを発揮するものへと再構築する方法を提示する。
感想・レビュー・書評
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【Talent/Strategy/Risk 人材・戦略・リスク 長期的な価値創造を担う取締役会の仕事】
【本書の概要】
本書は、資産運用会社の元CEO、経営アドバイザー、HRコンサルの3名が執筆したものである。
彼らは、取締役会が企業の長期的な価値創造に貢献するためには、人材、戦略、リスクの3つの視点を重視すべきだと主張する。本書では、それぞれの視点について、著者たちの考え方と、彼らがインタビューした著名企業の実例を紹介する。
【人材の視点】
人材は、企業が中長期的に価値を増やしていくための最も重要な要素である。そのためには、採用、教育、評価、ローテーションなどの人材管理を効果的に行う必要がある。
(採用)
自社のニーズと競合他社の状況を把握し、優秀な幹部候補を確保することが重要である。
(教育)
将来の事業機会に対応できる能力開発を行うこと。すなわち、まず自社の将来の事業機会とはなにか?を定義しておくことが重要である。そのうえでそれに合致しトレーニングであること。
(評価)
従来の360度評価(社内完結)に加えて、社外の多角的な評価(+90度)の450度評価であること推奨する。なぜならば、外部評価を取り入れることにおいて、強みと弱みを明確にしたうえで「育成」「機会」を考察することができるからである。
(ローテーション)
特に、離脱してほしくない、育成したい幹部社員に対して、計画的に実施することが望ましい。会社が強化したい事業領域、それに該当する部署を中心に、1部署において3年から4年かけて必要な能力、技術習得に集中してもらうイメージである。
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【戦略の視点】
戦略は、企業がどのように収益を生み出すかを定義するものである。そのためには、自社の顧客と提供価値を明確にし、競合他社との差別化を図ることが重要である。
(脅威の把握)
新興企業や既存の競合企業の動向を常に把握し、脅威に対応することも必要である。
(戦略の評価、選定)
長期的な企業価値につながるかどうかを基準にし、その根拠を明確にすることが望ましい。また、戦略の評価においては、賛成派と反対派の意見を聞き、やりたいこと、勝てること、儲かることの3つの論点を検討することが有効である。
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【リスクの視点】
リスクは、企業が目標を達成する際に直面する不確実性や障害である。
(重要度と発生頻度)
コンプライアンスを守ることはもちろんのこと、守りづらいリスクを特定し、重要度と発生頻度に応じて対策を講じることが重要である。
(考慮する2つリスク)
オペレーションリスクとレピュテーションリスクの2つの側面があり、それぞれに注意を払う必要がある。レピュテーションリスクも、社外の専門家をいれたうえで、半期に1回、すくなくても1年に1回を実施することが望ましい。
(リスク管理)
リスク管理委員会などの専門的な委員会を設置し、取締役会に対して補完的な役割を果たすことが望ましい。
(業績予想)
変化の激しい環境に対応するために、バッファを持ったガイダンスを出すことが推奨される。資本市場に対しては、ガイダンスを設けた理由を説明することで一定の理解は得られるだろう。
(株主対応)
短期的なアクティビストの意見も聞くことは大切であるが、長期的な大口投資家の意見と比較し、評価することも必要である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
当初予想していたのとは結構異なる内容で、なかなか異色なビジネス書と思いました。
著者(3名)は資産運用会社の元CEO、経営アドバイザーとHRコンサルで広く知られるKorn Ferry社の副会長、の3名で、これだけでも本書の特徴がうかがえます。
本書では、取締役会はどうあるべきか、という内容であり、要は取締役やCEO向けに書かれた本です。 対象をこのように絞り込んで出版することもですが、そのような内容を書ける著者も限られるはずで、記載されている内容が貴重と言えるだろうと思いました。
ただ、読んでいてどうも頭に入ってきにくいな、と感じるのはおそらく和訳のためだろうと感じました。訳者はKorn Ferry社のコンサルで、翻訳者/作家ではなく、訳者が変わればだいぶ印象変わるのでは、とも思って読みました。 -
『取締役会の仕事』の続編的位置付け。米国のコーポレートガバナンス、取締役会の中身が垣間見えて、興味深い。(本間)
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『取締役会の仕事』の続編的位置付け。米国のコーポレートガバナンス、取締役会の中身が垣間見えて、興味深い。
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プロローグ 本書執筆の契機となった投資業界の変化
序章 長期のためにコーポレートガバナンスを再定義する
第1部 新しいTSR――長期的経営のためのフレームワーク
第1章 人材(Talent)のルール
第2章 戦略的な要請
第3章 リスクをマネージする
第2部 取締役会のベストプラクティス――新しいTSRと長期的な価値創造のためのマネジメント
第4章 優れた取締役会を作る
第5章 取締役会の委員会を再設計する
第6章 情報を多様化する
第7章 投資家と関わる
結論 ESG パズルの1ピースではなく、全体像を把握する
謝辞
日本語版解説 取締役会をグローバル競争力の源泉とするために