- Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784296115846
作品紹介・あらすじ
【内容紹介】
日本を代表する演技派俳優が来し方を振り返り、即興風に綴った初の自伝!
――実人生と俳優業の原理は似ている。そこがおもしろい――
8月の日経新聞朝刊の看板連載「私の履歴書」に登場し、大きな反響を呼んだ山﨑努さん初の自伝が早くも待望の書籍化です。連載では掲載しなかった章も多数収録、滋味深き文章にさらに磨きがかかった作品に仕上がっています。
3、4歳の頃、染物職人の父におぶわれて散歩に連れて行ってもらった松戸の川べり。父の肩ごしから見ていた、赤い襦袢をまとった〝狂人〟への畏怖が、自分の俳優業の原点ではないかと書く少年時代。そこから上野の映画館でマーロン・ブランドを観て俳優を志す高校時代までは、なぜ自分がのちに俳優になったか、その原点を当時の思いもよらなかった行動から掘り起こしていきます。
そして俳優座養成所から文学座へ。黒澤明監督の『天国と地獄』の誘拐犯人役にオーディションで選ばれてからは、映画、舞台、テレビドラマで、演技派俳優となっていく半生を、俳優・山﨑努の肩ごしから見つめて紡いでいきます。
登場する人物は芥川比呂志、岸田今日子など新劇の人たち。森繁久彌、三船敏郎といった映画界の人たち。現代テレビドラマの最高傑作のひとつ「早春スケッチブック」の脚本家・山田太一、寺山修司、和田勉。さらに山﨑さんの主役が欠かせなかった映画「お葬式」「タンポポ」「マルサの女」の監督・伊丹十三。日本の俳優の演技に違和感を持ち続けたゆえに親友となった英国の俳優・演出家テレンス・ナップ……最後は円環を描くような余韻深きラストシーンが待っています。
感想・レビュー・書評
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著者の幼少期から現在に向かって進んでいくが、しだいに著者の人生から醸成された俳優論、演劇哲学の話に展開されていくのがおもしろい。淡々としているが、ユーモラスでチャーミングな語り口。至近距離で、著者の独り語り芝居を見ているような感覚だった。
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稀代の名優の自伝。
山﨑氏本人の語り口調で書かれているが、朗読が聴こえてくるよう。
「素人に見えるくらいうまい」が理想というのは、すごく印象に残った。若いころの苦労や挫折と、それを乗り越えてきた努力と俳優への熱意も伝わってくる。
今なお「勇気をもって投げ出すこと。守ってはいけない。」という。老害にならない秘訣かもしれない。
個人的には「男はつらいよ」や「必殺仕置人」、「九門法律相談所」の話も「聴き」たかった。 -
山﨑努さんを初めて意識したのはTVドラマ「クロサギ」だったはず。僅かな登場シーンであっても圧倒的な存在感を持つ俳優だという認識はあったが、それを裏付けるかのような自伝だった。疎開先で過ごした幼少期や俳優座での修業時代に始まり、三島由紀夫や黒澤明監督との出会いなど、登場する面子がビッグネームばかりで圧倒される。自身を俯瞰するようなユーモラスで独特の語り口調も味があり、何よりも文章が上手い。演技に対する真摯な姿勢が伝わる芝居論も実にストイックだ。俳優とは本来これ程の熱力なしには務まらぬ職業なのではあるまいか。
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芝居を始めた頃の山崎氏のギラギラした姿が目に浮かぶようで嬉しい。しばらくお仕事から遠ざかられていて寂しく思っていたが、またTVでお芝居を拝見出来、SNSで呟きも聞け、本まで読ませていただけて、こんな日が来るとは思わなかった。有難や。
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三島由紀夫、安部公房、遠藤周作など、名だたる作家さんの名前が脚本家としてサラッと登場し、時代を感じると共に、当然ながら読んでいて、当の作品を観たくなった。
即興風の書き方で、繋がりつつ、短く区切った話が順々に繰り広げられ、頭に入りやすいので一気に読めた。本を読んだというよりは、ドキュメンタリーかトークショーのような、録画していた番組を1つ見終えたような読後感だった。
渋い役の演技の印象が強く、山崎さんについては漠然としたイメージしか持っていなかったが、それでもどこか惹かれるところがあり本著を読んでみた。意外と受け身(自分で役を決めない)だったり、芝居とはこうだ!と定まったものではなく自由であるべきだとか、人間くささを感じ、親近感が湧いた。 -
筆者の言葉がスルスルと入ってきて一気に読んでしまいました。おこがましい話ですがこの方の世界の捉え方は自分とよく似ていると思いました。
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天国と地獄の犯人役は忘れられない。
軽妙な文章で読ませる。