一気読み世界史

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784296200290

作品紹介・あらすじ

人類5000年の歴史を7時間で一気読み!
一気に読むから、流れがわかり、教養になる。
暗記不要。日本史、西洋史、文化史、経済史…
全部つなげてまるごと学ぶ、新しい教科書。
入門に、学び直しに、論述テスト対策にも。

人類5000年の歴史の大きな流れが一気につかめる画期的な入門書。『哲学と宗教全史』『人類5000年史』シリーズなどの著作で知られる出口治明氏の待望の最新刊。日本史、西洋史、東洋史から、政治史、文化史、経済史まで、歴史を「ひとつなぎ」で学べる新コンセプトの世界史です。1万冊の本を読破した「現代の知の巨人」ならではの大局的な歴史観が、この一冊にぎゅっと凝縮されています。7時間で読める分量でも、歴史の要諦と本質があますところなく学べます。中高生から社会人まで、歴史の大局的な流れをつかみたい人に最適の新しい歴史の教科書です。

感想・レビュー・書評

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  • 地球規模で人類の歴史を俯瞰するような内容。
    少し難しいところもあって時間がかかったけれど、
    目から鱗の部分が沢山あって、わくわくしました。

    「はじめに」にある作者の言葉。
    『大きな目を持つことで、小さな目の鋭さが増します。
    大きな目で見れば、プーチンは何者でもありません。
    小さな目で見れば、プーチンがもたらしている現状は大変で、
    必死で対応を考えなければいけません』

    俯瞰することと細部を見つめること、両方大切。
    これって、毎日 自分の周りで起こる出来事にも当てはまるかな。

    面白いなと思ったことの一つ。
    「国民国家」という意識の誕生について。 
    「○○の生まれの人間だ」とか「○○王の兵隊だ」
    としか考えていなかった人々。
    そこに「フランス国民よ、立ち上がれ」と呼びかけたのは
    フランス革命時のナポレオン。
    「そうか、今こそフランス人として立ち上がらないと」
    人々はこれをきっかけに国民という意識を持つようになったのだとか。
     
    日本も明治維新前は「○○藩の人」であって
    「同じ日本人」という概念はなかったかもしれません。
    ただ、この国民国家という概念が
    戦争の原因であることも否定できない気がします。
    ジョン・レノンの “Imagine” の世界は理想なのでしょうか。

    日本の歴史の中で面白かったこともいくつか。
    例えば、持統天皇のロールモデルは
    唐を50年にわたって仕切った武則天という女帝だったとのこと。
    唐というのは女性の地位が高い部族がつくった国で、
    優秀な女性リーダーたちが輩出されていたのだそうです。
    そもそも「天皇」という称号を作ったのが武則天で
    それを日本に持ち込んだ持統天皇が
    唐に見せるために作ったのが「日本書紀」という歴史書であり、
    藤原京であり、律令だったとか。
    『負けへんで。うちらもきちんとした国やで、と示すためです』
    出口氏は、持統天皇の想いをこんな風に記述します。

    他にも、興味深い内容がたくさん。
    十七条憲法の作成は聖徳太子ではなかった?
    幕末に功績があったのは、坂本龍馬ではなく阿部正弘だった。
    アヘン戦争が世界の経済の中心を東洋から西洋に移行した。
    日米安保条約時、吉田茂は一人で責任を取るつもりだった。
    ゴルバチョフが西側諸国で人気の理由は?
    最後に記される事象は、ロシアのウクライナ侵攻。

    後ろに索引がついています。
    高校の時に世界史を避けてきたので、
    頭がパンパンになったけれど、
    あとで何回読み返しても 面白そう。
    図書館で借りて読んだけど、買おうかな。

  • 5000年。
    歴史は長い長いSTORYだなぁとしみじみ思います。
    原因が結果になり、結果がまた原因になる。
    常に流れ続けてきたし、これからも流れ続けるでしょう。

    この本、最初は少しずつ読んだけど、
    終わりの三分の一位は一気に読みました。
    この辺、今の世界に直接つながっているし
    私たちはどうするのがbetterか参考にできるんですね。

    第三次大戦にならないために、
    ウクライナ以外の国ができるのは武器供与しかないかも。
    ゴルバチョフみたいな人が出てこないかなぁ。

    大好きな「出口さんの歴史本」久しぶりに読んだ私。
    出口さんのおからだも大事ですから。
    ただ愛読者としては学長やるより、
    執筆活動に精を出してほしいのですが。

    一冊の歴史本を繰り返し読めばいいと言われるかもしれませんが
    過去は変わりますものね。たとえば
    「冠位十二階と十七条の憲法を作ったのは、
    おそらく蘇我馬子でしょう」
    と出口さん。
    その辺ぐらいは自信があったのに…。
    更新に追いついていかないと。

  • 大学受験の現役生の頃、世界史ができなくて、浪人生時に他科目へ変更した。変更は上手く行って、志望校に合格できた。しかし、世界史に対してトラウマができた。

    大人になってから、トラウマ解消のために、こうして世界史との再格闘が始まった。まず、高校教科書中心に勉強したら、早くも挫折!

    山崎圭一本を読んでも、教科書よりはだいぶわかりやすかったが、記憶が断片的にしか入らない。その後、集英社の漫画「世界の歴史」全20巻を読破して、なんとか立て直して、次に漫画「もし世界が1つのクラスだったら」で開眼。

    あとは色々な歴史書を読んで理解を深めたが、どちらかというと、近現代史に特化していたのがネックだった。

    どうしても、世界史の通史を流れで押さえたい・・・。そんなときに、出会ったのが、本書だった。

    本書は、まさにそんなボクが求めていた書だったのである。この本を2~3回はまた通して読みたい。最終的には、「茂木誠の世界史Bが面白いほどわかる本」レベル、すなわち今の受験生の共通テスト並みの知識をゲットするのが夢。

    本書では、「もし世界が1つのクラスだったら」以来、再度の開眼を果たした。まさに渡りに船だった。ありがとう、出口先生。

  • 人類史5,000年を7時間で一気読みというフレーズの通り、小気味よく世界史の流れが繋がりとして理解できる構成となっている。定説とされていることがサラリと覆されていたりしてるけど、理屈が通っているから納得感も高い。世界史を学んだけどいまいち頭に入らなかったことが、「あれはこういうことだったのか」と振り返って理解できる感覚が心地よい。

  • こんな本を待っていました、一人で書かれた紀元前から現代までの五千年の世界史を解説した本です、その時代の世界各地で起きた出来事のポイントが書かれています。

    高校の世界史の授業では、どうしても時代の塊で授業をするので、その時代に東洋と西洋で何が起きたのかを比較しながら勉強することはできませんでした。特に試験前に一夜漬けしていた私は試験が終わると綺麗に忘れていましたから。

    試験のために勉強することから解放されて、それまで避け気味であった世界史にも少しずつ興味を持つようになりました、それも同じ時代に西洋と東洋で何が起きていたのか、西洋と東洋の興隆はどのように起きていたのかに興味を持つようになりました。

    この本でも書かれていますが、その起点となるのは、どうも寒冷化にあるようですね。今、CO2減少に取り組んでいるので温暖化対策ということなのでしょうが、地球が寒冷化に向かっていった場合には、今栄えている文明が衰えて、その代わりの文明が栄えることになるのかもしれませんね。今でもその兆候は見られるようなきがしますが。このような考えができるようになったのも、この本のような通史を知ったことのことのお陰だと思っています。

    以下は気になったポイントです。

    ・産業革命の何がすごかったかというと「気候変動の関数」を打ち破ったこと、19世紀までの大国の攻防には気候変動の関数が大きく作用していた。要は地球が寒冷化すると、北から様々な部族が南下して混乱が始まり大国が分裂する、そして温暖化すると大国が復活し政治が安定する。今まではその繰り返しであった、産業革命により生まれた工業の力は、温暖化を待たずとも大国を形成することが可能になった(p3)欧米列強の覇権の土台には、産業革命と国民国家という2大イノベーションがあった、これが世界に広がっていった(p4)

    ・人類五千年の歴史の中で、死後にも残るグランドデザインを描き大帝国と呼ぶに相応しい帝国を作った人は数えるほど、カエサル・フェデリーコ2世、ナポレオンの3人(p5)

    ・興味のある時代やジャンルがあって小説やノンフィクション、歴史書を取るときに、背景となる人類五千年の歴史の流れが頭にあれば小さな物語の意味をより深く理解できる。大きな流れや文脈の中で小さな物語を捉えることで、個別の事象や登場人物の意味や造形がくっきりと浮かび上がる、目にうつる世界の解像度が上がる(p6)

    ・メソポタミアでは、アッカド王サルゴンが初めて統一国家を作った、これが世界初の帝国(いろいろな言語を話す人を治める1つの国)である。帝国を治めるには共通語が必要になる、アッカド語は世界初の共通語(リンガ・フランカ)(p24)

    ・小さな民族のフェニキア人はアルファベットをシナイ半島(メソポタミアとエジプトの交差点)、メソポタミアは「くさび形文字」エジプトは「象形文字」を使っていた。両方覚えるのは大変なので、シナイ半島の人々はアルファベット(あらゆる言葉を20数文字で表現可能)を生んだ。このイノベーションはサボりたいという気持ちから生まれる(p10)

    ・アッシリアが瓦解して、新バビロニアなど4国が並列する時代を経て、アカイメネス朝というペルシア人の大帝国が誕生、ダレイオス1世が道を整備し、駅伝の制度を作った、さらに共通語をアラム語に変えて、第二の共通語を作った、その後、マケドニアのアレクサンドロス大王はギリシア語(コイネーと呼ばれる口語)を共通語にした(p33)

    ・紙は始皇帝の頃から原型(竹簡や木簡)があったが、書写材料に、漢字という文字が揃っているので文書行政ができたところが中国の凄さである。始皇帝は、文字を統一、度量衡を統一、車軌を統一した、車の幅を揃えることで泥道に鉄道を引いたようなわだちができて物流が楽になった、貨幣の統一は二世皇帝である(p37)中国で大国が多くできたのは、漢字があり書写材料が豊富であったから(p45)

    ・ユダヤ人のディアスポラ(散在)はユダヤ人は故郷を失って世界中を放浪するようになったのではなく、田舎へ帰るのは嫌な人々が、都会を渡り歩いたというのがユダヤ人の歴史である(p49)

    ・パウロはコイネーと言われるギリシア語でキリスト教を説教した、イエスはアラム語(2番目の共通語)であった、3番目の共通語を使っていたのでユダヤ人でない人でもみんなわかった、これがキリスト教が広がった理由である(p52)

    ・ローマ帝国はコンスタンチノープルへ遷都して東方中心に国をまとめようとするが、あちこちで道路や役所が異民族に襲われ、自慢の情報網が機能しなくなった、そこへアンプロシウスというミラノ司教がローマ皇帝のテオドシウスへ、キリスト教のネットワークを使うことを提案し、その代わりにキリスト教をローマ帝国の国教にしてもらった。教会勢力は、さらにギリシア・ローマのお祭りである、古代オリンピックを廃止させた。さらに6世紀には、ユスティニアヌスというローマ皇帝に思想弾圧をやらせて、プラトンとアリストテレスが作った大学(アカデメイア、リュケイオン)を閉鎖させた(焚書坑儒)学者達はサーサーン朝(ペルシア)へ逃れたの歳以上、ギリシア・ローマ学問はペルシアで保存された(p58)

    ・奈良時代の日本で作られた大仏の大本は、北魏か伝来した、日本の平城京の語源は、北魏の首都の平城と言われる(p60)

    ・百済が日本に最新の技術体系を教えた理由は、当時(538年の仏教伝来)は高句麗や新羅に押されて国が滅ぶかどうかの瀬戸際にあった、538年とは百済が新羅から逃れるように遷都した年である(p65)仏教を受け入れる方(蘇我氏)が圧勝するのは、ゼネコンが喜ぶから。お寺を建てたり仏像を作ったりして工事が増えるから。旧知派についても仕事は来ない(p66)

    ・白村江の戦いで負けて日本は国家存亡の危機にあったが、唐と新羅が喧嘩をして時間が稼げた、持統天皇と藤原不比等はその間に日本の体制を立て直そうと努力した、日本という国号を作り、武則天が作った「天皇」という称号を日本に持ち込んで日本書紀を作り、藤原京、律令を作った(p75)

    ・東にセルジュク朝、西にノルマン人、東ローマ帝国は1071年(マラズギルトの戦い)以後に、戦いをやめてお金を使った外交でやっていくという転機となった(p90)

    ・東ローマ帝国にローマ皇帝はいるが、ローマ教皇からローマ皇帝として戴冠されたザクセン朝のオットー1世は後に「神聖ローマ皇帝」と呼ばれる(p91)

    ・1054年に東西協会が最終的に分裂し、この状態は1965年に相互破門を解消するまで900年続いた、東方教会とローマ教会はこの時から違った道を歩み始めた(p92)

    ・スペイン、トレドには大図書館があり、アラビア語に訳されたギリシア・ローマ古典がたくさんあった、アルフォンソ6世はラテン語に翻訳させた、それまでプラトン、アリストテレスの著作はヨーロッパにから消えていたが、それが欧州に戻ってきて、12世紀のルネサンスは始まった(p94)

    ・支配階級のフランス人にとって牛は食べ物だったので、牛肉をさすビーフというフランス語が英語に入った、アングロサクソンにとって牛は飼って畑を耕したりするものなので、オックス、カウという英語は家畜の牛を刺す言葉として残った(p95)

    ・もともと東方のイスラムの方がはるかに文明が進んでいたので、十字軍国家は歯が立ちません、十字軍がまともに勝てたのは最初だけであった(p96)十字軍のおかげで、ベネツィアといったイタリアの海の共和国が栄えた、最初はアマルフィ、それからピサ、ジェノバ、ベネツィアが地中海貿易で勃興した(p97)

    ・平清盛は宋から宋銭を本格的に輸入することで日本に貨幣経済を持ち込みマネーの循環を生み出した、中国は進んでいて紙幣を使い出したから(p106)

    ・マグナカルタができたのと同じ年1215年に、ローマ教会に告解部屋ができる、顔を見られずに司教や司祭とこっそり話ができる、これが結果的にものすごく大きい権力をローマ教会に与えた、膨大な小さな情報が全部ローマ教会に集まったら大きな絵が描ける、ローマ教会は悩みの情報ネットワークによってものすごく大きな力を持つようになる(p109)1216年には異端審問制度を作った、これを持つのはキリスト教の中でローマ教会のみ、世界の宗教でこれを持っている宗教はない、異端と思ったら追放すれば良いものを、わざわざ処罰して死刑に処すのがこの制度である、こんな制度を思いついたのは、教皇領という領土を持ってしまったからかもしれない(p111)

    ・テムジン(チンギスカン)の子供4兄弟は非常に優秀であった、長男のジョチの子供バドゥはボルガ川のほとりにジョチ・ウルス(キプチャクハン)。次男がチャガタイハン、4男トルイの次男クビライが大元ウルス、三男フレグはペルシアで、イルハンを作った(p116)

    ・クビライが日本に攻めてきたのは日本にある硫黄に目をつけた、その後に他の国でも硫黄が発見されたので日本の硫黄に対するニーズは減った(p121)

    ・1473年のバシュケントの戦いにおいて、オスマン朝は鉄砲を持たせた歩兵イェニチェリ軍団を作った、その軍団がユーラシアで無敵を誇ってきた騎馬軍団を破り、ここから騎馬軍団の黄昏が始まった(p138)

    ・5つに分かれていたイタリア半島にあった国(ミラノ、ベネツィア、フィレンツエ、教皇領、ナポリ)は仲良くしようということになった、1)オスマントルコが東ローマ帝国を滅ぼした、2)イギリスとフランスの100年戦争がフランスの勝利で終わった(p140)

    ・コロンブスの新大陸到達により旧大陸と多くのものが交換された、旧大陸はジャガイモ、とうもろこし、タバコを得た、新大陸は小麦を得たものの、病原菌により新大陸は旧大陸に大負けした、一矢報いたのは梅毒だが被害の規模が違いすぎる(p145)

    ・かつて(13−14世紀)のモンゴルは16世紀には5分割された、明の中国、ムガール朝のインド、サヴァヴィー朝ペルシア、ロシア、オスマン朝(p148)

    ・1721年に二スタット条約が結ばれて大北方戦争が終わる、これはスウェーデンの死亡診断書と言われる、エストニアなどの大陸に持っていた領土の多くを失い、ロシアがバルト海進出を果たす、ロシアはロシア帝国に昇格した(p185)

    ・1820年には清とインドで半分を占めていたGDPは半分を占めていたが、1870年には30%程度、米英が7%→20%程度に躍進、日本は3%程度(p204)1913年には中国9%から1950年5%、アメリカは19→27%、日本は3%程度(p258)1973→1998年において、中国インドは、5%,3%→12%、5%へ、アメリカは22%、日本は8%程度、ソ連は10→4%(p274)

    ・1899年の英蘭のボーア戦争により大英帝国のインド洋における兵力(50万人)が南アフリカに釘付けにされたので、これが日英同盟に結びついた(p224)

    ・第一次世界大戦のドイツの賠償金は当初1320億金マルク(ドイツ帝国で使用されていた通貨)で当時の日本国家予算の40年分、現在価値で4000兆円、最終的には30億金マルク(p239)

    ・民族自決の方針(アメリカ大統領、ウィルソン)は、負けたドイツ・オーストリア、オスマン朝の領地及び植民地にしか適用しないとしたので、トルコがこれに反発、今日も続くトルコのクルド人問題はここから始まっている(p240)

    2023年2月24日読了
    2023年2月25日作成

  • 割とさらっと読めましたが、
    やはり世界史は人物が頭に入ってこなくて
    理解としてはいまいちかもしれません。

  • 気候変動と世界史の動きを意識したことがなかったので、一つの切り口として興味深かった。
    関西弁の表記やカタカナの固有名詞の表記方法に癖があり、余計なところで違和感を覚える箇所多数。色々な地域の話が次々に展開されるので、ちょっと忙しいなと思った。

  • 記録が残っている人類の歴史5000年分を、タイトル通り一気におさらいするための本です。文明の起こりであるメソポタミアから現代までの過程において詳らかに記述されており、それこそ読んでいて物凄いスピード感を感じます。

    出口さんの歴史に関する本は今までも何冊か読んでいますが、読むたびに新しい発見をすることができ、非常に面白いです。

    ・旧約聖書の「創世記」は実はバビロンでの話がもとになっていた。
    ・天皇号の起こりは武則天で、持統天皇も武則天がロールモデルになっていた。
    ・海賊のイメージが強い「バイキング」は実は海の商人であった。
    ・クビライはむしろ近代的、合理的に東アジアを統治した賢君であった。

    また、ダイバーシティを用いた統治のコツ、中世欧州の複雑な歴史の紐解き、誰もが納得する理屈を作り上げれば外交交渉を制することができることの例示、終わらせ方や戦後のビジョンをあらかじめ描いたうえで戦争を始める例など、歴史から学ぶことができるのも出口さんの綴る歴史書の魅力の一つでしょう。

    もっと詳しく触れたい人は『哲学と宗教全史』『全世界史』などもお勧めです。特に前者はまた違った視点が得られるかと思います。

  • とても分かりやすくまさに一気読み

  • 『感想』
    〇やっぱ歴史ってのは様々な出来事が反応し合い生まれるものだから、国レベルで縦に見るだけでなく、その時周囲の国の状況はどうであったか横のレベルでも見ていかないといけない。その出来事が日本にも影響していたのかと知ることができるのは楽しい。

    〇今から過去の出来事を見ると、結果としては知っているからその原因を簡略化してしまうところがある。でも色んな要因があるわけで、時が経つことで判明することもある。

    〇歴史は知識をアップデートしていかないと、昔の常識が今の常識でないと知ることができない。

    〇世界史を300ページいかない本にまとめることができるのは、世界史をよく知る出口さんだからだな。読んでいくと新たな発見とか昔の記憶がよみがえることとかあるけれど、いかんせん知識としてすべて定着させることはできない。ある程度把握している人には、アップデートにちょうどいいのだろうな。これの日本史版が欲しいと思う。

    〇小見出しに中身が集約されていて、とてもわかりやすい。世界史についてこれだけのページを読むのは厳しいと思う人は、小見出しだけでも見ていくと分かっていくし、興味のありそうな部分を選ぶことができる。ただ小見出しは2ページで3つぐらいある感じだから、目次だけで12ページもある。しかも文字ばっか。

    〇本の構成として私が気になった点は、すでに説明した部分に対して「~でしたね」と当然わかっているよねと言われているようなところ。すいませんわかっていませんと何度も思った。読者すべてが出口さんが一般知識と思っているほどのものを持っているわけではないのだから、一度の説明で分からない人のことも考えてほしい。

    『フレーズ』
    ・産業革命の何がすごかったかというと、「気候変動の関数」を打ち破ったことです。19世紀までの大国の攻防には、気候変動の関数が大きく作用していました。要は、地球が寒冷化すると、北からさまざまな部族が軟化して混乱が始まり、大国が分裂する。そして温暖化すると、大国が復活し、政治が安定するといった具合です。(略)工業の力によって、温暖化を待たずとも、大国を形成することが可能になりました。(p.2)

    ・四大文明はかつて、ばらばらに起こったと考えられてきました。しかし、今では、メソポタミアの刺激を受けて、ほかの地域で文明が起こったと考えられています。(p.24)

    ・イエスはアラム語で説教をしましたが、パウロは、コイネーと呼ばれるギリシャ語で説教していました。共通語を使っていたので、ユダヤ人でない人もみんな、わかるわけです。キリスト教が広がった理由は、ここにあります。(p.52)

    ・(百済から伝来したころの)仏教とは「教え」ではなく「最新の技術体系」であると考えてください。(略)どの国でも仏教を受け入れる方が圧勝しています。要するに、ゼネコンが喜ぶからです。(p.65)

    ・日本初の武家政権を誕生させた清盛はイノベーティブな天才でした。宋から宋銭を本格的に輸入することで、日本に貨幣経済を持ち込み、マネーの循環を生み出します。どうして宋銭を輸入することができたのかというと、中国はずっと進んでいて、紙幣を使いだしたからです。(p.106)

    ・江戸時代の日本がなぜ鎖国をできたかといえば、世界商品がなかったからです。(p.136)

    ・課税問題から革命が起きたという意味で、アメリカ独立革命とフランス革命は一緒です。しかも、アメリカ独立革命の精神がパリに飛び火して、フランス革命が始まったわけです。(p.198)

    ・新聞の大量発行で「ネーションステート(国民国家)」誕生(略)国民国家は「想像の共同体」です。だって、顔も名前も知らない人たちのことを、「同じ日本人だ」「だから仲間なんだ」と思っているわけでしょう。しかも仲間の日本人は皆、理屈の上では自由で平等なのです。(p.199)

    ・アメリカ市民戦争(南北戦争)を奴隷解放の戦争と思っている人も多いですが、実は本題ではありません。(略)「保護貿易主義対自由貿易主義」というのが、市民戦争の本質です。政策上の争いであり、イデオロギーの対立です。(p.218)

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著者プロフィール

出口 治明(でぐち・はるあき):立命館アジア太平洋大学(APU)学長。ライフネット生命創業者。1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒。日本生命入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2006年に退職。同年、ネットライフ企画(株)を設立し、代表取締役社長に就任。2008年4月、生命保険業免許取得に伴いライフネット生命株式会社に変更。2012年上場。2018年より現職。著書に『全世界史(上・下)』(新潮文庫)、『0から学ぶ「日本史」講義』シリーズ(文春文庫)、『歴史を活かす力』『日本の伸びしろ』(文春新書)、『哲学と宗教全史』(ダイヤモンド社)、『一気読み世界史』(日経BP)、『ぼくは古典を読み続ける』(光文社)等多数。

「2023年 『人類5000年史Ⅴ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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