【2021年・第19回「このミステリーがすごい! 大賞」文庫グランプリ受賞作】甘美なる誘拐 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
- 宝島社 (2021年4月7日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784299014924
作品紹介・あらすじ
第19回『このミステリーがすごい!』大賞・文庫グランプリ受賞作! ヤクザの下っ端二人組、真二と悠人。人使いの荒い上司にこき使われる彼らの冴えない日常は、ある日、他殺体を発見したことで変わり始める。同じ頃、下町で自動車部品店を経営する植草父娘は、地上げ屋による嫌がらせで廃業に追い込まれかけていた。抵抗するため、父娘はある人物を頼るが……。一方、宗教団体・ニルヴァーナでは、教祖の孫娘が誘拐される事件が起きていた。様々な人物や事件が、衝撃のラストに帰結する、誘拐ミステリーの新機軸!
感想・レビュー・書評
-
第19回『このミステリーがすごい』大賞、文庫グランプリ賞受賞作。同時受賞は大賞に『元彼の遺言状』新川帆立。
出てくるのは麦山組のヤクザの下っ端のチンピラみたいな市岡真二22歳と草塩悠人23歳の二人組プラス手下のマサヨシ。
あとは店の土地と建物を売って立ち退きの要求をのまないがためにヤクザたちに嫌がらせをされている植草部品の植草浩一と、娘の菜々美。
そして起きた事件は、調布に住む金貸しの稲村徳也が殺され、その現場に居合わせたことを隠すために、調布の宝くじ売り場で宝くじの当たりくじ1億円を買ったことを真二と悠人が隠さなければならなくなり、自分たちで換金できなくなったこと。
『甘美なる誘拐』というタイトルですが誘拐をするのはかなり後半になってからです。
真二たちは上から命じられてニルヴァーナという宗教法人の教祖の孫娘の中学生長尾春香を誘拐する作戦を立てます。
以下ネタバレです。お気をつけください。
最後の黒幕が○○だったとは全く気づきませんでした。
「身代金取れたし、ニルヴァーナの変なお札も手に入り人質も無事に帰るし、いい誘拐だった」とマサヨシが最後に言ったのが、まさしくその通りだと思いました。
人質が『ハチミツとクローバー』や『ちはやふる』などのコミックを読みながら鳩サブレやジュースなどのお菓子を食べて待機しているのですよ。
ヤクザは出てきますがめでたし、めでたしに終わるコメディタッチのミステリーです。
最初は少しかったるいと思って読んでいましたが、最後はやっぱり面白かったです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ずっと前から「読みたい」に入れたり外したりしていた本。年初の中古本屋の割引セールの時に見かけたので購入。
ヤクザの下っ端・真二と悠人の冴えない日常を中心に、彼らが加わった新興宗教団体の教祖の孫娘の誘拐、遭遇した一体の他殺体とその現場にあった謎の未発表小説原稿、加えて、それらに何の関係があるのか地上げに悩まされる自動車部品店の父娘などが並行して描かれる。
サクサク読めて面白くないことはないけれど、前半は色んなことを仕込むばかりでスピード感に乏しくちょっと退屈。
後半は、あのメンツにしては事がうまく運び過ぎるし、人質もおとなしい限りだし、他殺体を捜査する警察はちっとも迫ってこないなど、都合が良すぎ。
なので、真相を聞いても、あぁ、そうでしたか…くらいにしか思えず、してやられた感が薄い。主人公たちの造形にも惹かれるものを感じずで。 -
主人公二人(ヤクザ見習い)が他殺体を発見する事から運命は変わる。本筋は"宗教団体の教祖孫娘の誘拐"。中盤まで長くテンポ悪いが,伏線回収がうまい。二重誘拐の理由,身代金受取の仕掛けの裏側が面白い。
-
ヤクザの下っ端二人が主人公で
上から言われた仕事(誘拐)をすることになり
その顛末の物語
それに自動車部品店の話も絡んできて・・・
前半はいろいろ盛りすぎではと思いながら読んでました
誘拐もなかなか始まらないし
でも中盤くらいからはなんかスピードに乗り
読み進めちゃった感じです
内容的にちょっと強引さを多々感じましたが
楽しめました -
大賞受賞作品
構想よし 読みやすさよし
格調高いというわけにはいかないが よく練られている印象
期待の作家です。 -
平居紀一『甘美なる誘拐』宝島社文庫。
第19回『このミステリーがすごい!』大賞・文庫グランプリ受賞作。評判も良いようなので期待が大きい。
ヤクザの下っ端と下町の自動車部品店を経営する父娘、宗教団体の教祖の娘が繰り広げるミステリー。物語はどうつながり、どんな結末を迎えるのか。
期待が大きかった割りには、ミステリーの出来はまあまあかな。
ヤクザの下っ端、真二と悠人はある日、世話になっている故買屋の老人が自宅で殺害されているのを発見する。同じ頃、下町で自動車部品を扱う店を経営する植草父娘は地上げ屋に追い込みをかけられ、知り合いに問題の解決を依頼する。一方、宗教団体・ニルヴァーナでは、教祖の孫娘が誘拐される事件が起きていた。
定価880円
★★★ -
このミスの文庫グランプリ受賞作と言うことで、本屋でも大々的に売られており、ブクログの評価も悪くなかったので、つい手に取ってしまった。
ヤクザの下っ端2人組、自動車部品工場の娘、そして新興宗教ニルヴァーナと、一見全く関係ない3者の様子をのらりくらり描きながら、ラストは見事なコンゲームとなる、面白いと言えば面白いけど、何だか、ラストの回収が見事過ぎて、それまでと同じ登場人物と思えないのが、微妙な評価。
時系列も行ったり来たりするので、かなり読みにくさを感じる。
ヤクザの下っ端の信二と悠人の軽妙なやり取りは、どこか伊坂幸太郎の「陽気なギャングは~」を連想させるが、「現実はそんなに甘くないよ」と思うところが多すぎて、個人的にはミステリーとしてイマイチ…
ま、好き嫌いが分かれる内容だろう。 -
メッセージ性も特にない、どエンタメ作品です。
そんな複雑な話ではなく平素な言葉使いなので、読みやすいっちゃ読みやすかった。ヤクザモノだけどエログロ一切無しでキレイな内容。それなりのキャストつけて映像化したらソコソコ万人受けしそうなストーリーですかね。
でも個人的にはイマイチかな。
なんか無理矢理ハッピーエンドに持ってってる感がすごい。
そもそも、主人公が何の大義もないただのチンピラ。
たまたまいい方向に話進んだけど、その偶然さえなけりゃ普通の誘拐に手を染めるような奴等ってことよね。恐喝的なこと平気でやってるし。
展開もなんかの映画で観たような観てないようなで、半分くらいは予想できた。てか宝くじ当たる時点で現実味ないし。
最後、人質の子はストックホルム症候群か何かですか? -
誘拐ものの新しいジャンルを切り拓いた感じのやつです。
そことそこが繋がるのか、、!という驚きがあります。爽快です。
結末にもかなり驚きますが、もう一歩欲しいな、といい感じはありました。
何だか腑に落ちないけど驚きはあるような感じです。