日本で治療薬が買えなくなる日 (宝島社新書)

著者 :
  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本
  • / ISBN・EAN: 9784299030542

作品紹介・あらすじ

現在、治療薬の欠品が続いています。ジェネリック医薬品のメーカー不祥事で100品目以上の医薬品が供給不足に陥っています。この傾向は、今後さらに1000品目まで広がり、2年は続くといわれています。これは政府にも問題があります。薬価をおさえすぎたため、ジェネリック医薬品メーカーの品質管理がおざなりになったのです。さらに、医療費削減が進まない現状に、政府は薬局を1万店まで減らすことを考えています。これによって地方の病院近くにある薬局はなくなり、薬が手に入らなくなる人たちが増えます。まさに日本では、「治療薬が買えなくなる日」が目の前に迫っているのです。その現実をレポートします。

感想・レビュー・書評

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  • ●手に入りにくい医薬品の多くはジェネリック。全体の4分の1にあたる。
    ●製薬工場は、ブラックボックスのように何が起きているかわからず、不正を告発しても、無視される「軍隊のような上意下達」の環境で作られていた。
    ●6万店を突破した薬局。人口10万人あたりで見ると、OECD加盟国中、最も数が多い。薬剤師(31万人)
    ●日本では、1つの薬ができるまでに、9〜17年もの歳月を要し、費用は約500億円と言われる。新薬の開発に成功する確率は約30,000分の1とも言われ、ほとんどの候補物質は途中の段階で断念される。
    ●ジェネリックの普及は沖縄が1位で90%近く。再開は徳島の70%。全国平均で約8割と思ったより高い。
    ●小林化工が製造した抗菌薬で、爪水虫などの治療に使われる。これが3人を生死の淵に追いやった犯人。この会社では、360製品のうち313製品が、国の承認した以外の方法で作られていることがわかっている。
    ●原薬の輸入元を明らかにしない。
    ●ドイツでは、医師が参照価格よりも高価な薬を処方した場合、患者はその差額を自己負担する。この制度によりドイツではジェネリック薬の普及が9割近くになっている。
    ●血圧と心臓の薬は、先発医薬品から始めよう。
    ●国民医療費は、一人当たり35万円強
    ●日本では、特許期間中でも薬価が大幅に引き下げられている。これでは新しい薬が作られない。
    ●なぜ医療費削減のため、薬価ばかりに狙いうちにされるのか。医師に関係する診療報酬は「聖域」なのだ。
    ●薬局は3万店もあれば充分。半分になる。

  • 同業者間で話題に上がったので、興味持ち読んでみた。

    著者の過去の著作や東京新聞の論説委員という肩書から、正直読む前は警戒していた。だが思った以上に多角的にちゃんと調べて、一般向けにこの問題をまとめられてくれているなと感じた。

    インタビューのチョイスもチェーン系薬局のマネージャーや、薬剤師のYouTuberなど多方面に及ぶ中で、ジェネリックに批判的な医師の部分が大変残念。医師として実績はあるようだが、言ってることははっきり言って週刊誌レベル。これを出して「あなたはどう思うか?」という言い方も週刊誌レベルで、せっかく全体は丁寧にまとめているのにこの部分でだいぶ自分の中の評価が下がってしまった。

  • はじめに 本当に日本の医療は「世界最高レベル」なのか
    第1章 製薬業界でいま何が起きているのか
    ジェネリック役
    安さが武器のリリーフ投手
    日本人は薬好き
    高齢者への警鐘
    医療費削減の切り札
    3000品目以上が不足

    第2章 薬不足を招いた重大事件
    犯人は抗菌薬
    薄利多売で生き残る
    急激な拡大に体制が追い付かず

    第3章 ジェネリックの普及は進むか
    1万円以上違うケースも
    オーソライズド・ジェネリック
    食料、エネルギーも外国に依存

    第4章 薬価を狙い撃ちにして起きたこと
    薬価は国が決める
    価格が決まる2方式
    薬価改定という引き下げ

    第5章 日本でドラッグラグが再燃している
    新薬の遅れは1~2年だったが
    個人輸入を試みる人

    第6章 薬局、薬剤師は生き残れるか
    先進国でトップの薬剤師の多さ
    医薬分業の始まり

  • 日本のジェネリックについて知りたくて読書。

    コロナ禍のストレス(と認識)で、僕も痛風発作を発症。現在、1日1錠の薬を服用している。服用している薬は、まだジェネリックがないので、いわゆる先発品を服用している。

    それもあって、ジェネリックについて初めて知ったことが多く驚いた。

    成分、原薬の輸入先など違いなどジェネリックは、単に安くてお得な薬だけではなかったのだ。

    小林化工の事件は、報道レベルでは知っていたが、実は、製薬業界が抱える問題の氷山の一角であったことがわかる。

    薬局は、患者にとって何の意味、利点があるのだろうか。確かに店舗数は多い。都内だからかもしれないが、この2年間で、複数の薬局で薬を受け取るも、正直どこへ行っても説明やサービスに大差はない。

    痛風持ちとなったので、尿酸値を下げる薬などについて調べる機会が増えた。現在、中国での痛風発症率は、日本を上回るスピードで増えているようだ。中国では、日本の痛風の薬が重宝されていて大人気らしい。

    誰も買える尿酸値を下げると謳う機能性表示食品であっても人気がある(よく知人から依頼される)。

    しかし、本書を読むと中国の製薬を巡る状況の違った一面を知ることができる。

    さて、この問題の苗床は、国の制度、指針に問題がありそうである。しかし、僕は、ジェネリックを売ったほうが稼げるなどの一部の利権に走る人たち。そもそも日本人が平気でうそつくようになってしまった点が大きいと思う。

    読書時間:約1時間10分

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著者プロフィール

五味洋治:1958年長野県生まれ。82年早稲田大学第一文学部卒業。83年東京新聞(中日新聞東京本社)入社、政治部などを経て97年韓国延世大学校に語学留学。99~2002年ソウル支局、03~06年中国総局勤務。08~09年、フルブライト交換留学生として米ジョージタウン大学に客員研究員として在籍。現在、論説委員。主に朝鮮半島問題を取材。著書に『朝鮮戦争は、なぜ終わらないのか』(創元社)、『金正恩 狂気と孤独の独裁者のすべて』(文藝春秋)、『父・金正日と私 金正男独占告白』(文春文庫)、『女が動かす北朝鮮 金王朝三代「大奥」秘録』(文春新書)などがある。

「2021年 『金正恩が表舞台から消える日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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