世界文学としての源氏物語: サイデンステッカー氏に訊く

制作 : 伊井 春樹 
  • 笠間書院
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感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784305703118

作品紹介・あらすじ

川端康成のノーベル賞スピーチ『美しい日本の私』を翻訳者として知られ、戦後初めて源氏物語の翻訳をするなど、日本文学を海外に紹介した立役者、サイデンステッカーが語る、戦後源氏研究秘話。

感想・レビュー・書評

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  • 翻訳者からの視点で源氏物語を語っているのが新鮮で面白かったです。翻訳が大変難しそうでしたが、面白いですよねー!源氏物語!わかるわかる!と思いながら読みました。

  • 3位
    サイデン先生言いたい放題の巻。源氏物語翻訳の苦労話からなにから、全部しゃべっちゃいます。聞き手は伊井春樹さん、加藤昌嘉さん、藤井由紀子さんの三人。

    紫の上が亡くなる場面では泣いてしまう、と告白。
    「先生も読みながら涙を流される?」
    「恥かしい話ですけど。シクシクシクシクと(笑)。おたくは泣かないの?」
    「泣くほどでは……」
    「冷たい人だねえ(笑)」

    登場人物で一番好きなのは玉鬘。
    「玉鬘などはどういうところがお好きなのですか?」
    「やり手(笑)。あの女はやり手ですよ」

    源氏で最もすぐれている巻は宇治十帖、しかし好きな巻は違うという話から
    「現代文学ですと、問題なく、「一番好きな作家」は永井荷風です。しかし「一番いい作家」とはお世辞にも言えないと思います、小説家としてはね。『源氏物語』にもそういうところがあるのですよ」

    そしてまた
    「日本人に「海外で一番多く読まれている日本の作家は誰か」とよく聞かれるのですが、それは紫式部です。三島とか川端とかいう返事を待っているのだと思いますが、紫式部だと思います」

    「大変いやらしい話になりますが、お金になったのは源氏だけです。苦労した分だけの潤いを与えてくれました。谷崎先生も川端先生も私を潤してはくれませんでした。私は悲劇的な人生を送っています(笑)」

    谷崎源氏に円地源氏ということで、交流のあった作家たちの話も。
    「谷崎先生には――悪く響きますが――「はったり」がありました。自分が本当に感じて信じていないものを……。『陰翳礼賛』がそうでした。谷崎先生はそういう建築が好きではなかったんですよ」

    「谷崎源氏を川端先生は「町人の源氏」と言いました。ちょっと面白いじゃない?」

    「三島さんはすごく頭のいい人ですよ。Intelligence man としては川端さん谷崎さんよりも上だと思います。でも、小説家としてはあまり買いません」

    聞き手の加藤さんも話の勢いで
    「まあなんで大江がノーベル賞をとったのも分からないんですけど……」
    と言っちゃう(サイデン先生答えて「賛成です」と)。

    長年のライバル(?)へも一言。
    「私は教育者としては(ドナルド)キーンよりも成功したと思っています」

    源氏物語のマンガやダイジェスト版については
    「世の中には愚かな人がいるね(笑)」
    「商売! 商売!(笑)」と一蹴。

    いやもう楽しい楽しい。奇しくも、この本が遺作となりました。

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