- Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
- / ISBN・EAN: 9784305709363
作品紹介・あらすじ
多くの人が子供のころから親しんできた、おなじみの日本昔話。
無邪気に楽しむ一方、心の底でこんな疑問が浮かんだことはありませんか?
「なぜ乙姫は、開けたら年を取ってしまう玉手箱を浦島太郎に渡したの?」
「かちかち山のうさぎの仕返しってやりすぎじゃない?」……などなど。
大人になると「所詮子供向けのお話だから、多少おかしくても仕方ない」と片付けてしまいがちですが、じつはそんなツッコミをもとに昔話の背景や裏事情を想像することで、より奥の深い楽しみ方ができるんです。
本書では、ふだんは子供向けの本を中心に活躍中で昔話や民話・伝説にも詳しい著者が、資料や文献を紐解きながら“大人向け”の昔話の新解釈を披露。
王道の昔話12話を取り上げ、成り立ちや様々なバリエーションを踏まえて理解を深める考察と「じつはこんな裏側があったのでは?」と自由にイマジネーションを膨らませたifストーリーなどの読みものも展開します。
「あのキャラクターは本当は裏切っていた」、「あの話の背景はドロドロだった」などという秘められた裏切りや裏事情を通して、「いいお話」としての昔話のイメージを「裏切る」新しい楽しみ方を提案します。
【目 次】
はじめに
第1章 浦島太郎―乙姫の愛と復讐
第2章 たにし長者―入れ替わった男
第3章 こぶとり爺さん―異端の象徴としての「こぶ」
第4章 手なし娘―継母の執念とその背景
第5章 花咲か爺さん―花は本当に咲いたのか?
第6章 舌切り雀―爺と雀の二時間サスペンス
第7章 鶴の恩返し―人情と金のはざまで
第8章 猿の婿入り―異類婚姻譚はなぜ悲劇に終わるのか
第9章 かちかち山―残酷描写・言葉遊び満載のエンタメ?
第10章 食わず女房―普通の暮らしにあこがれた山姥
第11章 耳なし芳一―天才アーティストを巡る嫉妬と愛情
第12章 桃太郎―次世代ヒーローとして求められること
あとがき
参考文献
感想・レビュー・書評
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裏切りとあるが、そんなにセンセーショナルな内容でもなく、まあそうだろうという感じだった。
ただ花咲か爺さんの話は、よく考えてみれば飼い犬を隣人に殺されて平静でいられるわけがないのはよくわかる。
ショックのあまり心神喪失というのはとてもしっくりきた。
また、カチカチ山での掛け声がラップ対決に見えるというのも、話して聞かせる昔話なので、テンポと語呂が良い掛け合いになるのも当然か。
ぜひとも音声で聞いてみたいものだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
なぜ乙姫は玉手箱を「開けてはいけない」と言ったのか?花咲か爺さんが、隣の性悪爺さんにさんざん嫌がらせをされながら、文句ひとつ言わなかったのはなんで?どうして和尚さんは芳一の耳だけ呪文を書き落としたの?昔話には謎とツッコミどころが満載。そこを、良く知られている普及バージョンだけでなく、各地に伝わる異稿的な内容のものや、関連性のある古典・文献をひもときながら突っ込み、それぞれの物語に隠れている別の姿を浮かびあがらせていきます。モトネタがなじみのある昔話だけに、たいへん楽しく読ませていただきました。昔話はもともと「子どもも大人も楽しめるエンターテイメント」だった、そんなことにも気づかされましたよ。
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図書館の新刊紹介で発見。
YouTubeで、バカリズムの「浦島太郎問題」という動画を見てから、日本の昔話の詰めの甘さみたいなものが気になっていた。子供に聞かせるには教訓めいたストーリーではなかったり、ただ痛々しいだけだったり。「なんでそんなオチ?!」ということが多い日本の昔話によくあるそんなモヤモヤを、著者なりの解釈で(きちんと時代考証や文献調査を行いながら)解きほぐした本。
かなり砕けた口語で昔話の出演者の言葉を言い換えたり、妄想後日譚がついていたり、学術書的な内容でありながらもとてもわかりやすく表現されていた。以前、グリム童話の本当の怖さを伝える本が流行ったけれど、日本の昔話もブームが来ることがあるかもしれない。
参考:バカリズムの浦島太郎問題
https://youtu.be/14ZAtFCm5Rw