まちづくりの新しい理論 (SD選書 210)

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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784306052109

作品紹介・あらすじ

本書は、著者がこれまで展開してきた建築や都市に関する理論と、まちづくりへの実験的な適応例がまとめられた実践の書であり、また、初めて彼について学ぶ学生や、まちづくりに興味のある一般の人達にとっては格好の入門書にもなっている。

感想・レビュー・書評

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  • 実験として、実際に街がかたちづくられていった変遷。それが綴られる「実験」の項目はアレグザンダーの思考が具現化された例としてとても興味深いものだ。

    現代のソフトウェア設計・開発にも大きな影響を与えているアレグザンダーの思想。
    漸進的に進め、全体を俯瞰しながら、ビジョンを見据えるー。こういった在り方が、過去の都市へのまなざしから着想されているというのは意外に感じる。

  • あらかじめ設定したいくつかの[コード]に乗っ取り、複数人の手によって、まちを漸進的かつ自律的なプロセスで成長させていったときに、はたしてそこに秩序を生むことはできるか……という机上の都市開発実験の報告書(だと思って読んだ)。「新しい理論」とはいうものの実験自体は1978年に行われたものであって、新しいかどうかはわからない。
    なんとなく囲碁と似ている感じがした。盤面の状況によって持ち石を置いて外部空間/地を形作っていく。それぞれの連関によって、広がりのある都市が生まれていく。
    封建制社会以降、さまざまな制度が複雑にからみ合う都市環境のなかに秩序を生み出すことは難しいのだろう。巨大なマスタープランに乗っ取ってまちづくりを行うことはできない。漸進的/自律的な開発の中に、人間の暮らしやすい秩序をもたらす手法があれば、それは素晴らしいと思う。
    ただ、アレグザンダー本人もこの実験が成功したかどうかは評価が難しいとしてる。抜け落ちている視点や、予想されうる障壁をあえて無視している部分もある。すべてを合理的に進めることはできないし、ディテールの追い込みは結局、個人の資質による。
    よいものを作るための「条件/コード」をどこまで抽象化して、それをどこまで適応すれば成功するのか。
    これは建築やまちづくりにとどまる話ではなく、あらゆるモノづくりの意思決定プロセスに共通する課題であり、永遠に揺れ動くつかみどころのない雲のようにも見える。

  • システム思考の本ですね。再読したい。

  • すべての新しい建設行為は「その周りに連続性のある全体性のある構造を生みださなければならない」という考えのもとに、まちづくりの方法論を組み立てている。

    全体性のある構造をつくるために到達した方法論が、しかしながら「漸進的」で小さなプロジェクトを積み重ねていくというものであるというところが面白い。

    さらには、それぞれのプロジェクトが敷地とその周辺の環境を読み取り、どのような建設がその周囲の都市環境を「癒す」ことができるかを個々に考えるという、ボトムアップかつ分散型の意思決定とも言っていいような進め方を提唱している。

    クリストファー・アレグザンダー氏といえば「パターン・ランゲージ」が有名だが、パターン・ランゲージ自体は、現状の都市の分析にのみ使われたり、単なるデザインツールという捉えられ方をしているような現状もあると思う。

    この本を読むと、筆者がこの本の中で実験しているように、個々のプロジェクト開発者が周囲の都市環境を読み解くというより創発的なプロセスが相俟ってこそ、パターン・ランゲージという手法も活きてくるはずであると感じた。

  • 第1部 理論(成長する全体という概念
    最優先のルール
    成長のための7つのルール)
    第2部 実験
    第3部 評価

  • 全体として調和し、自己成長・維持するまちづくりの方法を追求する。理論説明とシミュレーション実験の紹介・評価。違うジャンルの仕事をしていても考えるヒント、刺激、情熱をもらえる本。監訳者のツッコミ注がまた注意をうまく喚起してくれる。

    ・過去の美しい町や都市はどことなく有機的な情感で私たちの胸を打つ
    ・それ自身のもつ全体性の法則によって全体として成長してきたから
    ・このような質をつくるプロセスは失われてしまったが、とりもどしたい。
    ・以下7つのルールを自分のものとして使いこなすことだ。
     大前提:周囲に連続した全体性のある構造を生み出さなければならない。
     1.すこしずつ成長する
     2.大きな全体、構造、中心をつねに意識し、それを成長させるように個々の建設を行う
     3.文字通り心に見えるヴィジョン。それが情感をもたらす。
      現状に注意を払い、そこにある全体性の欠如すなわち最も本質的な問題を心で聞き取り、「何が、今の時点で生活に全体性をもたらすことができる最善の提案か」という心構えからうまれる。
     4.建物の外部空間がポジティブな性格をもつようにする
     5.大きな建物の内部プランは、街路や近隣と切っても切れない関係がある
     6.施工、見え方のレベルでも全体のまとまりを作る
     7.中心を作る、中心へ傾斜する、一番重要な中心とより小さないくつかの中心。心躍らせるほかとは違った何か。

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    『時を超えた建設の道』に続き、オブジェクト倶楽部イベント「アレグザンダー祭り」向けの予習2冊目。

    SI業界人が惹かれるのに納得。私もなにか光明を見た気がする。
    アジャイルに作る順序を決めるのに、本書の考え方が役立ちそう。アジャイル本にはそこらへんあまり書かれていなかったような?

    SIに適用したくなるけれど、まずSIが作るのは町か建物か別のものかを考える必要があると思う。

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