カルデラ湖殺人事件

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309004648

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  • 【あらすじ】
     岐阜県にある岩波教授の大邸宅では親しい人々を集めてパーティーを開く準備をしていた。
     また、そのパーティーに参加予定のヨシオとマリも車を飛ばしていた。
     しかし何の因果か時空が歪み、彼らは時空のアンバランスゾーンに迷い込むのであった!
     大地震だ!B29の空襲だ!恐竜だ!地底湖だ!地底人だ!
     果たして彼らの運命は……。


     何と言っても表紙が山上たつひこさんですよ!そして帯のポップで軽快な紹介!B級仮面の純チャン大錯乱のB級ホラーコメディーらしい。
     この表紙と帯の文句から想像すると、気楽に笑えるポップで軽快なユーモアミステリーかと思いますよ。
     しかし読んでみた感想は、ユーモアどころか戦争中の虐殺に対する復讐という非常に深刻な内容でした。
     しかもミステリーなら名探偵がトリックを解決して事件を説明して終わると思うでしょ?
     しかし本作品では解決はなく、幼い子供を含む一族全員が皆殺しになって終了です。
     登場する主要キャラは皆嫌なキャラなので気の毒さを感じないのが唯一の救いか。
     B29や恐竜や地底人は一体何だったのでしょう。
     また、戦争中に祖父が南方の島で行った虐殺事件を子孫が映像で見るシーンもあるのですが、その現象が何だったのか説明もありません。
     全て説明のつかない怪奇現象によるものだということです。
     そして残酷にも、幼い子供達も含めて関係者一族全員皆殺しです。
     ディアトロフ事件を彷彿とさせる、救いも合理的説明もない昭和のイヤミスであり、救いようのない残酷なホラーであります。

     表紙と帯は素晴らしいんです。この帯の文面風に本文も描かれていたら良かったのに。

     本作品の出版は1987年。当時はまだ戦争は身近だったのでしょう。戦争を経験したおじいちゃんが普通に存在していたのです。
     現在は2024年。戦争は遠くなりにけりです。
     
     山上たつひこさんの表紙は面白いのですが、作品の内容とはマッチしていません。こんなギャグテイストではなく、悪を追及するような社会派の作品です。山上たつひこさんなら『光る風』の頃の画風の方がマッチしているように思います。


    OLDIES 三丁目のブログ
    救いも合理的説明もない昭和のイヤミス
    ★【カルデラ湖殺人事件】★平野純
      https://diletanto.hateblo.jp/entry/2024/04/10/203643

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著者プロフィール

作家・仏教研究家。1953年東京生まれ。東北大学法学部卒。1982年『日曜日には愛の胡瓜を』で第19回文藝賞受賞。
作家活動と並行してパーリ語、サンスクリット語等を習得し、仏教文化を研究。インド仏教が日本の性愛の文化に与えた影響が、近年の主要な探求のテーマである。
著書:『怖い仏教』(小学館新書)、『はじまりのブッダ』(河出書房新社)、『裸の仏教』(芸術新聞社)他。

「2022年 『怖すぎる仏教』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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