- Amazon.co.jp ・本 (157ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309018362
感想・レビュー・書評
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★3.5
彼女と同棲中の28歳、求職中で猫探し中の高橋。倦怠期っぽい彼女と別れるんじゃないか、変な事件に巻き込まれるんじゃないかという不安は悉く裏切られ、ひたすら淡々と綴られる日常がどことなく可笑しくて愛おしい。特別な何かは起こらないけれど、メモリアルな石たち、猫と話が出来る少女、フリーターが参加資格のフローの会等、身近に面白いことがいっぱいある。その後の高橋の仕事っぷりや彼女とのあれこれも気になるものの、軽く中途半端、でも清々しさが残るラストが、この小説に合っていたと思う。ただ、猫の顛末だけは辛い…。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
同棲している彼女が(1週間だけ)飼っていた野良猫のマリーを日々探している28歳フリーター高橋。
物語に動きができるということは、出会いが否応なくやってくる。彼女に強要されて猫探しのポスターを作り、出来が悪いと作り直しを迫られ、友人でデザイナーの設楽に制作のお願いに行ったりする。彼女のめぐみもそうだが、出てくる人殆どが定職に就いておらず、唯一勤め人らしい大西は一癖も二癖もあり、ちょっとまともではない。なのに「定職に就いている」というだけで大西に説教される高橋。
高橋は、基本的には受け身で、積極的に何かをしようとは思っていない。それは履歴書を書くときに志望動機と自己PR欄を書きあぐねるとことでも端的に表現されている。
猫探しはさながら地獄巡りであり、そこで出会った大西を始めとした人々は、結局猫探しには何一つ貢献していない。高橋のためになった印象も無い。しかし高橋はそれを否定的に捉えるでもなく、案外(大西との一件以外は)と楽しそうなのだ。そういうところが彼の特長であり、欠点にもなるのかも知れないなと感じた。
読んだ我々ももちろん得るものは殆ど無い。唯一、猫を探す時ノウハウくらいだろうか。
ちょっと前の、ちょっとだけ牧歌的な時代だった時に牧歌的な存在だったフリーターたちだなあと思った。そういう時代の記録として、アリなんじゃないかと思った。
最後にあれだけ熱心にコレクションしていた石を捨てためぐみは、何を考えてのことだったのかな。でも、多分だけれどあの石は、彼女の、うだつの上がらない高橋に対してのわだかまりの象徴だったのではないかなと感じた。
この不安定な世の中では果たして彼らが「めでたしめでたし」となったかは分からないけど、このままサラリーマンを続けるにしても、結局「フローの会」に舞い戻るとしても、そこそこ生きていくんだろうな、と感じさせるものがある。まあ、頑張って欲しい。 -
同世代の感覚で溢れていた。
なんというか、この薄っぺらさの薄さ加減とか、疑問を持つ視点の角度とか、酒の飲み方とか。
変な懐かしさすら感じた。
こんな空気を吸ったことがあるわ、みたいな。
面白かった。 -
ほのぼのとした、結構良いお話。
笑えるところも多々あって。
マリーが死んでいたところだけ、ちょっとリアルさがなかったような気がする。
プレハブの中に餌まで置いてあったのに、紐に絡まって死んでたなんてアリ…!?
紐を解くのに必死で力尽きるって、猫ってそんなに体力ないの?
なんだか、そこだけ納得いかないなぁ。 -
なんでもない普通の話だった。だからなのかスラスラ読めた。普通だけどじんわり浸透していく感じがなんとなく好きだな。
なんであの表紙なのか最後でわかる。 -
読みやすいようで読みにくかった。内容もあるけど、行間とか段組みとか改行とかそういう読みにくさを感じた。冒頭はあえてなのはわかるけど。
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私もそろそろ、こっち側に飽きてきたかな。
読んだ後、何でか泣いちゃった。
静かに体に浸透する何かがあって、それがすごく心地いい。 -
内容はどうとも言えないが、装丁よし。しかし、この川に小島ができるくらい石を詰めたとしたら、女のリュックはバカでかい。
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可もなく、不可もなく。
フリーターの高橋は就活を始めたものの落ちまくり。同棲する彼女も昼と夜のバイトで疲れている。バイトと面接の合間に猫を探す話。
中盤までは浅野いにお系の痛々しい話かと思っていたが、意外な気持ち良さがあった。重苦しい雰囲気はない。表紙がとても気に入って、粗筋も作家さんも知らずに借りてきた本だったが、この、夜明けの澄んだ堅い明るさみたいな雰囲気そのものな終わりは好きだと思った。 -
写真、佐内さん。装丁、マッチの黄金コンビ。
そして表紙は鴨川。
表紙で読者に刷り込ませた青が、最後、無条件に頭に浮かぶ。
話云々よりもそういうところに引かれた。
町口さんに乾杯!