- Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309018911
作品紹介・あらすじ
文豪たちはきものをどのように書き、どのように着こなしていたのか。きもので読み解く、もうひとつの文壇史。
感想・レビュー・書評
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梯久美子『昭和二十年夏 女たちの戦争』で知り、どうしてもよみたくなった一冊。
読み応えがあり、楽しかった。
樋口一葉から中里恒子まで、永井荷風や夏目漱石までを取り込んだ14人を選び、着物を切り口に、作品そのものはもとより、その奥に透けて見える作家の人となりを論じている。
論ずる……というと、物々しいが、着物を追うことが「空中浮遊しているようなうれしさ」と語る通り、著者の語り口は楽しげだ。
私は着物に詳しくないので、わからない点も多いのだが、選ばれた作家はどうだろう?
たとえば、田村俊子や長谷川時雨当たりは、ご存じない方も多いのではないだろうか。
また、それぞれに着物姿の作家の写真が添えられているのも嬉しい限り。
これを機会に、このかつての作家の本を手に取るなんて言うのも、また一興かもしれない。
私はもちろん、大谷崎、「王朝のみやびを求めて」が一番読んでいて楽しかった。
『細雪』は、わがバイブル。
映画や舞台で四姉妹を演じる美しい女優さん。でも、著者は「美しいが感動は誘わない」とばっさり。
それよりも、谷崎夫人松子を含む姉妹の写真に惹かれるという。
似た顔立ち、、似た生活感情、似た教養などから滲み出される重層された何かが呼びかけてくるからである……なるほど、なるほど!
また、少女の頃、好きだった立原正秋。
今なら、私も、もっと、大人の読み方ができるはず。
着物を切り口に、再び楽しんでみたいと思わせてくれた。
私にとっては、魔法の玉手箱のような、尽きない楽しみが詰まっている一冊だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
近藤富枝さんの本は装丁が美しい。明治から昭和の様々な文士たちのきものへの思い入れを綴ったエッセイ。「着物」より「きもの」のほうが匂い立つ香気を感じる。明治の小説には絢爛たるきものの描写が多数あったのだなあ。まるでファッションカタログみたい。明治の読者は微細に描写されたきものの豪華さに胸をときめかせていたのだろう。正直文章できもの描写をされてもピンと来ない面もあり隔世の感があった。谷崎潤一郎の妻・松子夫人の姉妹が勢揃いした写真は白黒ながらため息が出るほど美しい。文学ときものに興味がある方にお薦めしたい一冊。
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資料番号:011074242
請求記号: 910.2/コ -
近藤富枝さんが出会った物故作家の作品の中の「きもの」の取り上げ方と、その作家のきものライフを描いたもの。
着物用語すら、はっきりとはおぼつかない私が読むのですから、近藤さんの感じた「着物表現の美しさ」への感動には程遠いのですが、女人にとってきものとは、生きるスタイルそのものなのですね。
谷崎、漱石、康成、紅葉、幸田文、長谷川時雨、岡本かの子、吉屋信子等々の着物姿の写真がなんともステキです。
いまどきの着物ファッション写真って、丸太のように下ごしらえして着付けるので、どれも一辺倒の感じがする。
しかしこの写真に見られる着つけは、なんと自由で解放されているのだろう。そしてその人柄が現れていてどれも美しいのです。
宇野千代さんは、文学のほかに自分で着物作家となってしまうほどの人だった。「おしゃれしないのは泥棒よりひどい」といつてたそうだ。
また長谷川時雨さんの着こなしは、日本橋風(色町ではなくしゃれた下町との意味)だとか・・。若い女たちの着物は地味でも、前掛けは友禅などの彩り多いものだったとか。
今、着物姿のステキな人、思いつくのはスイスのヴァルティス夫人かも・・。
着物には手作り感がある。いまのファッションは変化追求と消費表現が中心と思うのは私だけ?
本当のおしゃれ(自分なりの工夫)を、多くの人々が知っていた時代があったことを思い浮かべて楽しんだ。