- Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309020488
作品紹介・あらすじ
歴史の教訓がよみがえる。被災を乗り越え、新しい文章を付して、名著復刊。
感想・レビュー・書評
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過去に三陸地方を襲った津波の記録。東日本大震災の便乗本のようですが必ずしもそうではなく、ずっと前に出たものの再版のようです。これを読むと、津波による惨劇を語り継ぐのも大事だけれど、これほどの過去の惨劇がなぜほとんど語り継がれずにきたのか、その「忘却の構造」とでも呼ぶべきものを探ることも大事だと思いますね。震災の後で読むと、実にやるせなくなる一冊。
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【東日本大震災関連・その21】
(2011.08.20読了)(1990.12.31購入)
「哀史 三陸大津波」山下文男著、青磁社、1990.11.15、320p、 \1800
ハードバックで出版されたのは、1982年。死亡者名簿、等が省略されて「普及版」が出版されたのが1990年。今回河出書房から再版されているようです。
手元にあるのは、1990年の青磁社から出版された普及版です。
三陸沿岸を襲った三つの大きな津波、明治29年、昭和8年、昭和35年、について当時の新聞や市町村で編纂した震災誌など調べて綴った本です。
昭和8年の津波に関しては、著者自身の体験も綴られています。著者は、三陸町綾里村の出身です。現在三陸町は、岩手県大船渡市に組み込まれています。
明治29年(1896年) 6月15日の地震は、発生時刻 19時32分30秒ということで、夜に発生した地震です。旧暦で5月5日だったので、端午の節句に当たります。
地震自体は、震度2ぐらいだったので、まさか津波が来るとは思っていなかったようで、たくさんの犠牲者が出たとのことです。
現在のような交通手段、通信手段がありませんでしたので、実態の把握も簡単にはできなかったでしょう。「風俗画報」の挿絵が何枚か掲載されています。
昭和8年(1933年) 3月3日の地震は、午前2時30分48秒の発生ということなので、夜中の地震です。震度が5ぐらいとかなり強い地震だったので、津波の発生を予測した人たちが多かったようで、海の様子を見に行き、引き潮を確認し、大声で、避難を呼びかけたようです。
取るものもとりあえず、とにかく高台へと逃げた人たちは助かり、あれこれと持物を見つくろっていた人たちは、逃げ遅れたようです。
電話交換代の女性たちが、電話の加入者たちに電話で津波の発生を連絡したという話も取り上げられています。
明治の津波を教訓に家を高台に移したところは、被害を免れ、津波で流されたところに再建した人たちは、再び被害に遭ったという話は、今回に東日本大震災と同様です。
三陸の大津波は、37年周期説というのがあるそうで、70年も生きていると2回は確実に遭遇しそうな頻度です。
僕も、1960年のチリ地震津波と2011年の東日本大震災とで2回目です。
昭和35年(1960年) 5月22日15時11分14秒に南米のチリ沖で発生した地震は、津波を発生させ、5月24日未明に日本に到達しました。
日本人にとっては、地震がなしで、襲ってきた津波だったので、大変な驚きです。
この時は、僕の姉の家が1階の天井近くまで津波をかぶり家財道具がずいぶん流されてしまいました。住んでいた人たちは、波に追われながら逃げて助かっています。
大部分の人たちは、元の場所に家を再建しました。姉の家も元の家を修復して住んでいたのですが、10年ほど前に、高台に土地を求め家を新築して住んでいました。
元の家の近所の人たちからは、立派な家があるのに、わざわざ高台に引っ越すなんてと言われたそうです。今回の津波は免れることができましたが、元の地域の人たちの家は、みんな流されてしまいました。複雑な心持だろうと思います。
☆山下文男の本(既読)
「綾里村鮑騒動始末記」山下文男著、青磁社、1988.04.15
(2011年8月23日・記)