パルチザン伝説

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 42
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309026008

感想・レビュー・書評

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  • 読んでいてものすごくびっくりした本。何より天皇制を徹底的に否定している点。はじめて知ったので解説をあわてて見るとやはり発表された当時は受け入れられない人がいたよう。
    物語は弟が兄に向けて書かれた手紙で始まる。そこでは弟が天皇暗殺を企てるパルチザンとして活動した経緯がつづられる。次の手記で時代は戦中に移り、父の来歴について語られる。そこでも父が天皇暗殺を企てるパルチザンとして活動していた経緯がつづられる。
    日本の支配秩序や戦争に突き進んでしまった天皇体制、これらを変えるための敗戦が必要であったにも関わらず、天皇制は残ってしまった。この体制を変えない限り、日本の本当の戦後はない、とする強烈な主張は刺激的だった。
    いやー今の時代でも怒る人いそうだなーぶっ飛んでるなー。

  • 白井聡が読む『パルチザン伝説』 - 白井聡|論座 - 朝日新聞社の言論サイト
    https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019070400010.html

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    言葉が扼殺された世界、それがこの国の風景である――
    爆弾闘争に身を投じて戦後を生きた僕と、たった一人のパルチザンとして戦中を生きた父。二人の人生が繋がっていく先に浮かび上がる、恐るべき日本という国家のかたち。
    1983年、雑誌に発表され大きな話題を呼んだ桐山襲のデビュー作にして、文学的想像力の奇蹟的な到達点を示す伝説の作品、ついに刊行!

    * * *
    これは二重の、三重の、死者からの通信である。
    そのチャンネルは地下(アンダーグラウンド)にある。
    ――古川日出男(作家)

    この小説が突きつける
    日本社会への徹底した絶望を、私は共有する。
    絶望なくしては未来もないという確信も、共有する。
    ――星野智幸(作家)
    http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309026008/

  • 出版に関してひと悶着あった作品。今ではそんな過激な内容とは思えないのだが、発売をめぐる問題と言う事が、まるで70年代に頭脳警察のレコードが発売禁止になった当初の状態を連想させられた。終戦間近、本土決戦へ導こうとするパルチザンの話と高度成長期に頻発した学生運動の残党の手記、それらが絡み合って一つの物語となっている。今現在から見れば1960年代の思想や背景は古風に感じるかも知れないが非常に古さを感じさせない描写力と、また高度成長期に日本という国が持っていたエネルギーみたいなものも感じられる文章。語彙は少ないのに文章が洗練されているせいか、まるで目の前で起きているように感じられる。夏の暑さや、匂い迄も体験される。物語自体面白いが、何よりもこの人の描写力に非常に驚愕した。こういう優れた作家さんがもう亡くなっているとは非常に残念である。

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著者プロフィール

1949年東京都生まれ。83年「パルチザン伝説」でデビュー。他の著書に『スターバト・マーテル』などがある。92年、没。

「2017年 『パルチザン伝説』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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