愛すること、理解すること、愛されること

著者 :
  • 河出書房新社
2.95
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本棚登録 : 186
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (164ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309027203

感想・レビュー・書評

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  • 意表を突かれました。

    タイトルに惹かれ読みましたが、思いもよらない
    物語・・・心中小説と書かれていますが、
    ストーリーというより、人物を追うような小説。

    登場人物がリアルで、本当に存在しているのだと
    思ってしまうし、実際そんな人間を、人間の様を
    描いている小説なのだと思う。

    いいとか、悪いとかでもなく
    面白いとか共感でもなく
    なんとも言えないバランスを保ちながら
    進む登場人物の人生。

    小説をもっと読みたくさせる作家さんだと思いました。

  • 2組のカップルと1人の女の出会いとその後。そもそも出会いからして唐突なシチュエーションであり、その後の波乱を微かに予感させつつも、想像のつかない方向へと物語が急速に展開していく。果たして、これは小説なのか。しかし、そこには心地よいスピード感と、予期せぬ動き、そして、誰もが納得する普遍的な感情が込められている。破綻しているようで破綻せず、不思議な魅力を放っている。

  • 【内容】
    陶芸サークルに所属していた4人組(現在は、夫婦1組とカップル1組)が、自殺した後輩の妹から別荘に招かれる。影の薄かった後輩とは裏腹に、後輩の妹は美人で意志が強く、気立ても良い。彼女がどうして4人と会いたがったのか。彼女の存在が、その後の4人にどんな影響を与え、変化をもたらせたのか。スピーディーな会話劇で構成されている。

    【感想】
    会話劇が読みにくいの、なんのって。
    唯一の関西弁の光介のセリフだけはわかるけど、残りの標準語3人組からは読み解くのが難しい上、地の文ですら主人公が不安定で、何回か戻って読み直した。
    内容も、あらすじを読んだ限りだと、4人に恨みがあったり、個人的に誰かと繋がってたり、とかいろいろ期待しながら読んだが…なーんにもなかった。
    涼子と純吾がくっつくのはあからさまだったし、ノノって名前をつけるのも浮世離れしてるし(もし、片仮名のノノさんが実在していたらごめんなさい)
    3部でそれぞれ立場や環境が変わって、第一印象と異なっていくのは面白かった。それだけの感想。

  • 文章が読みづらく、
    龍徳さんの中にあるものが、上手く文章に落とし込めていないように感じた。
    ちぎられた文章、世界観。
    荒く粗い作品。

  • 李龍徳氏の作品は、敢えて人間関係を瓦解させるような言葉が飛び交う。著者の作品は、これまで単行本として三冊発行されているが、意識的に相手を打ちのめす、呪詛ともいえる暴言が必ず吐かれる。

    著者の作品の肝は、その会話劇にあることが多いのだが、当たり障りもない自然で穏当な場面から、あることがきっかけに、徐々に不穏な空気が漂ってくる。人は情報をさらけ出しながら生きている生き物なので、それが外見にすでに立ち現れたり、自分の口からつい漏らしてしまったりする。会話が白熱していくと、次第に男女らは険悪なムードになっていく。もうそこから、嫌な予感というものがひしひしと感じさせられて、まさにその瞬間、相手を傷つける一言を口にしてしまう。本来、そこまで言ってしまっていいのかと躊躇するような言葉は、諸刃の剣で、言われた相手も言った本人もいろんな意味で傷つく。しかし、言ってしまった直後に、お互い計算なんてできない。言われた相手は、とても看過できない言葉に、人格を貶められて、尊厳を踏みにじられて、理性では憤りを諫めることが難しく、売り言葉に買い言葉、相手を罵倒する怨嗟の言葉の応酬がひたすら続く。とても見逃すことができない、心の核を貫く本質的な暴言には、平常の理性的な振る舞いはできずに、ただただ感情的にがなり立て、自分自身の理性をコントロールできなくなってしまう。果たして徹底的に化けの皮を剥がしあったその先に、幸せな結末が待っているのか? 否、徹底的に殴り合うことで分かり合えるのは、少年漫画の登場人物くらいで、相手を傷つける目的の悪意たっぷりの罵り合いの先には、別離しかない。

  • 待望の李龍徳さんの新刊!
    大学時代の陶芸サークルの後輩が自殺したという連絡を受けた光介と巴香の夫婦。純吾と珠希のカップル。
    4人は自殺した後輩の妹・涼子から手紙をもらい、彼女たちの別荘へ呼ばれ軽井沢くんだりまで出かけてゆく。
    記憶もあやふやなほど大して仲良くなかった後輩のはずだが、なぜ自分たちが呼ばれたのか?
    涼子が言うには、姉の日記に4人のことが生き生きととても楽しそうに綴られていたというのだ。それが本当なのかこの目で確かめたかったと。
    光介がつくったご馳走を並べた夕べの宴、そこで繰り広げられる腹の探り合いのような会話シーンが軽妙で不穏ですごく良かった。
    一触触発のような緊迫感と、どこか間の抜けたテンポ。
    李龍徳さんは本当に人間と人間の本音の応酬を書くのがうまいなぁと思う。痒い所に手が届く会話劇だ。

    ストーリーはその数年後、さらにまたその数年後とすすんでいく。
    涼子にとことん責められ詰められる珠希の生き方を、私は肯定することも否定することもできない。
    【人生はやり直せる。生きていくしかないのだから、私は、私自身をどうしてでも幸せにする。たとえそれが子供を捨てることであっても。まだ間に合う。生き直せる。私にはそれができる。】
    珠希のこの心の底からの叫びに、私は返す言葉がみつからない。

  • 四人、五人か。五人全員の行動がなんだか軽薄で、苛立たせられたのはさすが李さんかなと思いながら読みました。中盤からは会話の応酬によって、嫌悪を示し、攻撃しながらも敵意は出し切らない、みたいな煮え切らなさが、またもやもやします。生ぬるい言葉だから、相手までに届かずに、結局は自分自身を傷つけているような気がしました。愛の結果としての生命の扱い方ですが、愛をうつくしいものとしてでなく、限りなく現実的に残酷に描写してあると思います。
    ほんとうに、李さんの作品は、こう、心にずん、とくるものがありますね。

  • 引き込まれて一気に読んだ。
    登場人物がそれぞれ個性的でおもしろい。

    P63
    「子供は作んないでください。お二人はそれで、そんな感じの馴れ合いの、閉じられた関係性の夫婦でいいかもしれないですけど、そこに産み落とされる子供がもしこの先、出てくるとすれば、それはあまりにも、惨すぎる。毎日こんな罵り合い、しかも両親のを聞かされるなんて逃げ場ないし、いやあ、いや、不妊治療なんかすぐ止めてください。お願いします」

  • 専業主夫と陶芸家の妻、そして友人カップルの4人で大学の同窓生の妹の招待で別荘へ。招待の目的が不明なままディナーを共にするが、会話の端々に違和感が生じ、それぞれの関係性が揺らいでくる。夫婦間、カップル間ならではの関係性の様々を提示すると同時に、愛の儚さが描かれる。会話のみで展開するシーンがこの作品の肝だと思う。

  • 群像小説として凄く好き。
    個人的には智香&光介夫妻は嫌いだし、珠ちゃんの我が子を受け入れられない切なさが痛くて…
    でも読み物として凄くいい!
    ぷつんと終わる感じも

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著者プロフィール

1976年、埼玉県生まれ。在日韓国人三世。2014年『死にたくなったら電話して』で第51回文藝賞を受賞しデビュー。2020年『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』で第42回野間文芸新人賞を受賞。

「2022年 『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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