奏で手のヌフレツン

著者 :
  • 河出書房新社
4.28
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本棚登録 : 111
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (504ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309031583
#SF

感想・レビュー・書評

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  • 「奏で手のヌフレツン 」(酉島伝法)を読んだ。
あゝ読み終わってしまった。
    
壮大なる新しき世界誕生神話出来!
    
浮揚感と高揚感とゾワゾワ感。稀に心拍数の上昇。
これが世に言う『酉島伝法酔い』なのか!
(嘘です。私が勝手に命名しました。)
    
他に類を見ない世界観と目眩く造語の数々がたった一人の頭の中から湧き出してくるってのが信じられないわ。
    
『 ''でょでょでぃ、でょでょ——"
隕星はときおり、鳴き声とも呼吸ともつかない音を洩らす。』(本文より)

  • 造語だから出来ること、日本語だから出来ること、SFだから出来ること、それらを追究し、洗練させた果にこの小説は在るのだろう。
    だがここで描かれるのは、多くの人が知っている”営み”と、連綿と続く生命の”輝き”だ。あまりに力強く、あまりに美しい命の賛歌を聞いた。

    舞台は球地(たまつち)。繰り出される造語の数々は、その字面自体が異世界への導入となっており、親から子へ、子からまたその子どもたちへと時代が進むことで、徐々にこの世界を理解する仕組みとなっている。作者の持ち味はかつてないほど洗練された形で発揮されており、独特でありながら読みやすい。

    音楽SFとしても傑作であることは間違いなく、ラストの壮大な光景は圧倒的。同時にちょっと他にないくらい「我が事」と感じながら読んでしまう普遍性があり、展開、登場キャラ、世界造形、卓越した文章、どこを切り取っても素晴らしかった。一文一文、いや、一音一音を愛でるように読ませて頂きました。

  • 世界観を楽しめるかどうかだけど、執拗なまでに細部まで構築されたアナザーワールド、『球地(たまつち)』の世界観には圧倒的なものがある。ただ、当て字の漢字表現が濫用されているため、脳内変換する手間がかかかり、読むのに時間がかかるのにはまいった。もう少し純粋に物語が楽しめれば尚良かったが、内容を吟味して味わうというより、語感含めて読んでいるライブ感を楽しむ作品と思いたい。世界観が受け入れられて、じっくり取り組める方にはかなり有意義な作品と思われる。

  • 複数の太陽が地を巡り、その太陽を音楽でコントロールする世界を描いたSF。

    世界観の作り込みが凄い。作中の世界は球体の内側にあり、月や星は獣のように行動する。太陽は身を捧げた人々の足で運行するものであり、それを崇める信仰がある。歯が生えたり髪を切ったりするときは激痛で、子どものうちは手足が切れても再生する。単為生殖で、性という概念は存在しない。
    それだけ異質な世界を描き出しながら、そこで生きる者の価値観、世界のしくみが実にリアルに、納得できる形で示される。

    本書の文体で特徴的なのは、大量の造語だ。
    その世界にしか存在しない事象を表す単語(「御迎臓」(P265))や、単為生殖におけるきょうだいを表す「後胞(あとがら)」「先胞(さきがら)」。焙音璃(ばいおんり)のように、元の単語を彷彿とさせながら、単語の漢字を見慣れないものに入れ替えるものもある。
    表意文字である漢字のイメージがうまく使われ、言葉の意味の説明が特にされなくても、なんとなくどういう性質のものか分かる。こういう作品を母語で読めるのは本当に幸運なことで、翻訳するとなったらものすごく難しいだろう。

    そうした独自の世界を作り上げる一方で、そこで展開する物語にはとてもリアルな手触りがある。
    たとえば蟹解体工房の場面では、蟹の臓器「惛臓、慳臓、忿臓、悔臓、嫉臓、覆臓、愧臓、慚臓、眠臓、掉臓(p160)」といった造語ばかりが出てくる。にも拘わらず、生臭くて湯気のこもった工房の空気が感じられ、惨斬(=たぶんハサミ)を扱う緊張感が伝わってくる。
    造語ばかりで描かれる風景、造語ばかりの食材を並べられた食事の様子、造語ばかりの楽器名で奏でられる音楽の描写が、それでも美しかったり美味しそうに感じられるのは凄いことだ。

    また、登場人物の心情がとても自然だ。
    とりわけ三代にわたる親子の情愛や確執はストーリーを貫くテーマだ。親に分かってもらえない苛立ちや、幼い子の成長を見守る若い親の愛情。家族の衝突があった後に、幼い末っ子が家族の間を取り持とうとしてお喋りになる(p257)といった描写がとても生き生きしている。
    異性愛というものが存在せず「家族以外の他人と親しくなりすぎる」ことがタブーとされる世界ではあるが、ジラァンゼとラナオモンの関係は、他の相手とは違う特別なものだったと感じさせるものがある(p239)。

    読後、なんだかやたらと音楽を聴きたくなり、普段あまり聴かないクラシックの音源を引っ張り出した。

  • 読み終えたら⭐️五つ

    だったかも、、、

    でも、どーしても、最初の数ページから、
    読むのに疲れ
    世界に入れず

    そこを乗り越えたら良かったのかもしれないけれど
    想像の世界かつ
    当て字の多さに
    先を読む気になれず諦めてしまいました。

    素晴らしい本でも
    面白くないと、今の私にはまだ読み進められません

    面白い、は、主観的なので
    きっと面白い、素晴らしいと感じる方は
    たくさんいらっしゃると思いますが。

  • この人の作品はいつも知らない世界へと連れて行ってくれる。最初は世界に中々馴染めないけども笑。世界観に慣れたら割とスラスラ読める。

    「思考は言葉に縛られる」と言う通り、自分の知ってる言葉以上の世界を見る事や理解する事は出来ないから、こういう造語の物語って全く自分の埒外の世界を見られるという意味では希少な作家だし作品。圧巻の一言。

    理解力が乏しくて、ラストの「起」かどの時点の記述がちょっと解らない。ヌグミレがいなくなるの少し切ない。

  • 喃鵺粘《なんやねん》。前々忌若乱《ぜんぜんいみがわからん》。出毛転載《でも天才》。始終こんな調子で濃厚な文体だが、ずっと物語に浸ってぐいぐいと読んでしまった。純文学なんだけど、純文学を超えている。前衛ってこういうのを言うんだと思う。

    こういうの書いてみたいんだよなぁ俺も。夢裡鴨痴内《むりかもしれない》。霧鸝堕浪《むりだろう》。一価薗討《いつかそのうち》。

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