- Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309204932
作品紹介・あらすじ
老婆がその長い沈黙を破ったとき一族の知られざる秘密が明かされる-南イタリア、灼熱の太陽のもと、呪われた宿命に抗って果敢に生きるスコルタ家5世代にわたる波瀾の物語。ゴンクール賞受賞。ジャン・ジオノ賞審査員賞も同時受賞の話題作。
感想・レビュー・書評
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舞台は南イタリア。灼熱の太陽が容赦なく照りつける村。村から厄介者扱いされた荒くれ者の先祖を持つ一族が、村の者たちからの偏見や、辛い運命に抗いながら懸命に一族を守るため働き生きる。5世代にも及ぶスコルタ一族の話。ゴングール賞。
初めて読むフランスの作家さんでしたが、文章が印象的でした。太陽の容赦ない熱が文章にまで注がれているように乾いていて、長編映画を観たような充足感でした。
新島進さんの訳も、独特なお話の雰囲気を壊さず、とても工夫されたのではないかと頭が下がる思いでした。
自分達が生きてきた、やってきた事を子や孫に話し、受け継ぐことを大切にしているスコルタ一族。
例えば、甥のエリーアに話したこと…
「皆が自分のできるだけをやってみる。やってみるしかないんだ。けれどな、その行き着く先に何かを期待しちゃだめだ。行き着く先に何があるかわかるか?老いだよ。それだけなんだ。(中略)俺からの言葉は、汗を味わえってことなんだ。なぜならそれが人生でいちばん美しい瞬間だからだ。」
一族が集まった饗宴で食べきれないほどの美味しいものをたらふく食べ、笑い、話す。貧しさや労働で辛い時も、一人ずつ世を去って、残されて心に穴が空いた時も、一族にとって、その時間が後に何よりの幸せな思い出になる。このシーンは特に印象的でした。一人一人の上気した息づかいまで聞こえてきそうでした。
この作家さん、他にもたくさん書かれているのに、残念ながら日本語に訳されてないようです。自分が大学の仏文科の時にこの方のことを知っていたら、絶対に研究しただろうなと思うほど、魅力的な文章でした。面白かったです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「話をするのだ。この沈黙の太陽のした、ただ家畜のように生き、くたばるだけの人生にならないように。」
"トカゲが魚になることを夢見る" ような日に読みはじめた。本の中の灼熱とともに滾る情熱が、ほんとうにじりじりとわたしの肌を焼いてゆくようだった。そしてそれが、じょじょに心地よくなってゆく。物語のなかにある 太陽 をわたしはばりばりと食べた。
「自分は幸せだったろうか」
世代をこえて、何度もくり返されるこの言葉のさいごに、わたしはようやく涙する。"一族" なんていう枷も絆も、わたしじしんにはみえないけれど、あれは、なんの涙だった? "幸福の残り香" とたったひとつの伝えるべき言葉をみつける、という微かな希望と、そしてそれもやがて無に帰するという避けられない運命が、薫ったから?
でてくる家庭料理(イタリアン)もとても美味しそうで、彼らの(わたしたちの)人生においての、この不穏に満ちた物語のなかでの、まちがいなく幸せで安寧ないっときであった。
あーあ、もうおなかがすいちゃった。きょうも、食べて/読んで、働いて、汗をかいて、生きるのだ。
Pancia Piena??
「人生は過ぎ去っていた。価値のない、なにも賭けていない生涯。なにかを望んだことはなく、なにかをし損ねたこともなかった。なぜなら、なにもしようとしなかったから。」
「俺が長く生きたのはこの世界が俺に似いてたからだ。」
「とにかくやってみた。それだけさ。力の限り、やってみた。どの代の者もそうする。なにかを築く。持っているものを堅固なものにする。あるいは大きくする。家族の面倒を看る。皆が自分のできるだけをやってみる。やってみるしかないんだ。けれどな、その行き着く先にはなにかを期待しちゃだめだ。行き着く先になにがあるかわかるか?老いだよ。それだけなんだ。」
「俺の、俺からの言葉は、汗を味わえってことなんだ。なぜなら、それが人生でいちばん美しい瞬間だからだ。」
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南イタリアの、やけつくような太陽以外には何もない貧しい村を舞台に繰り広げられる、5代の家族の一族の物語。
悪事を尽くし、村から存在を否定された男を父祖に、偏見と戦いながらひたすら汗を流し、這い上がろうともがき続けた家族。一族集まって繰り広げた束の間の饗宴の記憶を糧に、ひたすら働く。
短い言葉を重ねた乾いた文体、老婆の回想の独特の語り口が、物語をより幻想的で、印象深いものにしている。
とても読み応えがあった。 -
サーガもので、軽くないのにとても読みやすくて面白かった!
初めから引き込まれる設定。
血筋の呪い、さだめを、貧しい田舎で扱った5世代にわたる深い濃い物語。
こんな作家がいたなんて知らなかった!まだまだ面白い作品を生み出してくれることに期待。 -
3.93/38
『南イタリア、灼熱の太陽のもと、村の広場に地獄の使いのような一人の男が現れた。スコルタ一族の、5世代に渡る呪われた宿命との戦い。ゴンクール賞、ジャン・ジオノ賞審査員賞ダブル受賞!』(「河出書房新社」サイトより▽)
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309204932/
原書名:『Le Soleil des Scorta』(英語版『The House of Scorta』『The Scortas' Sun』)
著者:ロラン・ゴデ (Laurent Gaude)
訳者:新島 進
出版社 : 河出書房新社
単行本 : 244ページ
受賞:ゴンクール賞(2004年) -
素晴らしい!の一言。色々本探してて良かったなぁ。途中までは描写がアレで、あらあらどうしましょと思ったけど、崇高で幻想的で本当に素晴らしかった。南の太陽を感じられる。惜しむらくはこの人フランス人で、複数書いてるらしいんだけど、この作品しか翻訳されてないんだよなぁ。
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【選書者コメント】題名にしても著者名にしてもフランスっぽくないが、ゴンクール賞受賞の現代フランス文学を代表する小説。
[請求記号]9500:646 -
これじゃなくて百年の孤独を読むべし