丁庄の夢

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 76
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309208015

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  • 兎に角不幸な話に、好んでコレ読んてる人は病んでるのではないかと心配になる

  • 中国の僻村丁庄を舞台にした現実と空想が入り混じった話で国の売血政策によりエイズが猖獗した貧村の家族の顛末である。
    経済発展のため血液が必要で、売血運動が推進されることからこの物語が始まる。政策に悪乗りして次から次へと商売を生み出して巨富を貪る父親、一貫して不条理に抵抗するが流れに抗しきれない教育者の祖父、そして熱病に罹り同じ患者と賊愛(姦通)に堕ちる伯父のこと等々無機質なストーリーが連綿と続く。伯父と琳琳の賊愛は疫病が猛威を振るうなか特殊な純愛として、二人が各々離婚し結婚して死ぬまでの話が綴られる。
    この小説は父への村民の恨みから毒入りトマトで殺された息子が霊になり、語り部としてこの世で起こったことを紡いでいくという構成である。延々と続く刺激的な出来事は読者を独特な世界に引き込む。
    売血王の父は注射針の使い回しで村にエイズを蔓延させ、死人に当局から交付される棺桶をくすねて棺桶商売で大儲けする、又陰親婚という夭折し埋葬された子供同士を掘り返し結婚を取り持つという商売でも儲ける。そして悪行のすべてを死んだ伯父の仕業にする。正義や忠心・孝養、すべて「カネ次第」で何とでもなるということを地で行く様は迫力がある。本音と建前が乖離した共産主義社会では強欲と嘘で立ち回る父のような便乗者を生み出し社会の不条理を募らせる。
    委員会というのがやたら登場して滑稽である。
    村民は売血に殺到し、学校の机や資材をリヤカーで家に持ち去り、棺桶用に村に生えてる木をすべて切り倒す。
    父は怨嗟の村民からは逃れ得るが、最後に祖父による棍棒の一撃で世を去ることになる。
    幻想か妄想か、はたまた現実か、人間の欲は「自分さえよければ」という人の不幸に乗じた金儲け手段をこれ程生み出せるものか。閉塞する制度・体制の中で権力に便乗した商売はルールに沿って自由に競う成長分配とは異なり内向きの騙し合いで奪い合いだ。
    虚構なのにリアルで読み終えてなんとも言えない哀しさと虚脱感に囚われる。
    毒々しい内容でヒトの性(さが)を抉る面白い小説だ。

  • 2020I058 923.7/E
    配架場所:C1

  • 河南省の人。毒殺された土中の少年の視点から、エイズで滅んでいく村、家族を描く。全体に暗いけど、精一杯生きていて面白い。

  • 「愉楽」とか「炸裂志」に比べるとハチャメチャさ、マジックリアリズムっぽさは背後に回って人間のリアルなイヤらしさ、意地汚さがリアリティを持って表に出てる感じ。とはいえ語り手は毒殺された子どもだし、「年月日」みたいなストレートなお話ではなく。棺桶とか陰親、冥婚とか人民中国での死後への執着っておもしろいと思ったり。

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著者プロフィール

1958年中国河南省生まれ。80年代から小説を発表。2003年『愉楽』で老舎文学賞受賞。その後、本書を含め多数の作品が発禁扱いとなる。14年フランツ・カフカ賞受賞。ノーベル賞の有力候補と目されている。

「2022年 『太陽が死んだ日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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