サハリン島

  • 河出書房新社
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309208121

感想・レビュー・書評

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  • 【DESIGN DIGEST】書籍『サハリン島/カバーエドゥアルド・ヴェルキン著、北川和美、毛利公美訳』、CDジャケット『BOY/kim taehoon』、商品パッケージ『オサジ 冬の香り ヘアシャンプー Danro』ほか(2021.1.29) | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
    https://www.mdn.co.jp/di/contents/4575/77757/

    サハリン島 :エドゥアルド・ヴェルキン,北川 和美,毛利 公美|河出書房新社
    https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309208121/

  • 四苦八苦しながら、ようやく読み終えることができました。
    400ページ二段組みという、物理的な分量の多さに苦労したのもあるのですが、それよりも、読んでいて本当につらかったのです。

    北朝鮮が発射した核ミサイルがきっかけで、欧米の先進国がほとんど壊滅してしまった世界。
    日本は鎖国をし、太平洋一帯を領海域であると宣言します。
    そして天皇中心の大日本帝国を復活させ、それは維新と呼ばれます。

    というような背景は、最後まで背景のままで、ストーリーの中心に来ることはありませんでした。
    なぜなら択捉島から始まった物語は、ほとんどをサハリン島の出来事に終始するから。
    日本本国で一般大衆がどのような生活を送っているのかはわかりません。
    ただ、主人公のシレーニは貴族の生まれっぽいです。

    帝国大学で応用未来学を学んでいるシレーニは、研究の一環としてサハリン島を訪れるのですが、サハリンは囚人を収監する監獄の地。
    そして、つねに物資や食料が欠乏し、身体や精神に異常をきたす人がかなりの割合で存在します。
    どうにも非衛生的で、腐臭漂うイメージですが、そういうのは伊藤計劃・円城塔の『死者の帝国』やエドワード・ケアリーの『堆塵館』シリーズを読んでいるので、まだ耐えられます。

    しんどかったのは、徹底的な人種差別の上での暴力行為の数々。
    軍や行政機関の役職についているのは日本人のみで、囚人の中で権力を持っているロシア人、消耗品のようにこき使われる中国人、反対に金儲けに長けて肥え太り疎まれる中国人、人間扱いすらされないコリアン。
    「限定的な権利しか持たない人種に属するもの」=「中国人、コリアンとそれに類する人種」

    400ページ中300ページはこれらについて延々書かれていて、本当に休み休みじゃないと読み進められないくらいしんどかったのです。
    が、300ページを過ぎたとき、突如大きく話が転回します。

    MOB(移動性恐水病)という、致死率の高い伝染病が島を襲うのです。
    これは自然発生した病気ではなく、アジア発祥の軍事目的で人工的に作られたウイルスがひき起す病。
    人間がゾンビのようになって人を襲い、10日ほどで罹患者は死んでしまうというもの。
    後に空気感染もするようになりますが、シレーニがサハリンにいたころは接触感染のみだったので、とにかく海を目指して逃げるのです。

    が、シレーニにはサハリンの案内人であるアルチョーム、途中で保護したアルビノで手足の指と舌を失った少年ヨルシ、アルチョームが保護した盲目のコリアンの子ども3人を連れているので、かなりの苦労を強いられることになります。
    が、それゆえに、読んでいるうちに目に涙が溜まってきます。
    途中で投げ出さなくてよかった。

    ところがところが、350ページからのエピローグで再びその様相は変わってしまいます。
    私の目もすっかり乾きました。
    個人的にはエピローグ部分は不要と思いました。

    確かに変だなと思ったところもありました。
    特にヨルシの目。
    アルチョークは「銀色の目」と言っているのに、シレーニは「片方は赤で、もう片方は青」なんて言っているのです。
    ん?これは信用できない語り手ってこと?

    それでも。
    やっぱり350ページまでで終わってほしかったな。

  • SFと言いつつも、それはあくまで架空の近未来を舞台にしているだけで、その実態は冒険活劇小説だと思います。
    地震以降は展開がガラッと変わって、分厚い鈍器本ながらも、ページを繰る手を止められないものでした!

    言うなれば『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』のロシア版で、あっちがロボットならこっちはゾンビ!

    翻訳の力もあるんだろうけど、ほとんど違和感なく日本の作品かのように読めました。不思議。

    装丁も良い!!

  • 作品の粗知識を一旦頭に入れて読んだ・・というのも児童書が苦手の私だし、このボリューム、そしてロシア

    半分まで世界観に食いつくのがなかなか。しかし、文体が読み易く、2段組みと思って怯んだにも拘らず、文字が大きい事もあるのでサクサク進んだ。

    頭がついて行かないと自覚するのも情けないと思うのだがデストピアの向こうにあるユートピアの香りで終える。北朝鮮の弾道ミサイルから発した核戦争の「その後」の世界・・・舞台設定がサハリンというのは筆者の出自に関係しているとあるが、「私なりの知識」のサハリンではなく、「単に名前を借りただけのサハリンはすさんだ環境と薄汚い官僚、群がるゾンビ集団、武器はピストルと銛だけ。登場する人間はロシア人、中国人とコリアン、そして日本人。なぜか帝国との設定。出てくるコミュニティは監獄ばかり、腐臭と汚物は溢れ返り行きかう「人間」は不具・障がい者ばかり喜び・悲しみ・諸々の情感を逸脱した「時を過ごす」だけのソサエティは絵画に出てくるような地獄絵図。後半からはそれを十分に味わう旅に追随して行く・・ラストには見え間が用意され、幽かな黎明が。エデンの門の傍で待つ未来の子供達。

    筆者は芥川を好み、チェホフ、例ブラッドベリなどを愛すると言う。地名・人名などに聞いたことのある単語が出てくると関連を感じさせられる。モスクワ一帯を欧露というらしく、「超」が作へき地の極みサハリンを描いた筆者のセンスは東側では決して書けない超異形の世界だった。

  • 2021.9.12市立図書館
    思ったより分厚くて怯んでいる(しかも「バグダードのフランケンシュタイン」と同時に来てしまった…)。
    ちょっと手を付けられそうにないので、また借りよう。

  • タイトル通り、サハリン島を舞台としたSFだが、読みやすい。翻訳特有のうっとおしさがなく、訳者は本業が通訳をされてる方らしくて、伝わらないことには何も始まらない、を身を持ってわかってらっしゃる人なのだなと。楽しい、当たり!と思ったが、前半だけで、SFと思って読んでいなくて、後半はなんだか集中できなかった。あとがきの粗筋を先に読んで、世界観を頭に入れてから読んだ方が良かったのかも。ちょっと表現方法が変わってるのかな?と思ったが、元々児童書を書いてる人のようで、構成、さじ加減みたいのがそれっぽかった。

    • saigehanさん
      タイトル通り、サハリン島を舞台としたSFだが、読みやすい。翻訳特有のうっとおしさがなく、訳者は本業が通訳をされてる方らしくて、伝わらないこと...
      タイトル通り、サハリン島を舞台としたSFだが、読みやすい。翻訳特有のうっとおしさがなく、訳者は本業が通訳をされてる方らしくて、伝わらないことには何も始まらない、を身を持ってわかってらっしゃる人なのだなと。楽しい、当たり!と思ったが、前半だけで、SFと思って読んでいなくて、後半はなんだか集中できなかった。あとがきの粗筋を先に読んで、世界観を頭に入れてから読んだ方が良かったのかも。ちょっと表現方法が変わってるのかな?と思ったが、元々児童書を書いてる人のようで、構成、さじ加減みたいのがそれっぽかった。
      2021/09/05
  • 期待値が高かっただけにちょっと残念...
    翻訳の問題なのか、SF過ぎるのが問題なのか、一言で言うと「詰め込み過ぎ」な小説で、詰め込んだ割に結構よく考えられている詰め込んだ設定たちが雑に登場するので読み難い。
    設定は面白いけれど、小説としては詰め込み過ぎの闇鍋状態。

  • 北朝鮮の弾道ミサイルから勃発した核戦争後の世界を舞台にしたSF小説。大変な面白さだ。なんでもありのこの小説世界は、荒唐無稽ながらも破綻せずにちゃんと収まっている。いっちゃっているこの世界をぜひ堪能して欲しい!

  • 汚濁と退廃にまみれた大人のジュブナイル冒険活劇

  • 未来はきっと明るいと信じれるだけで幸せ。
    退廃的なSF
    コロナのこの時期に読めて、面白かった。
    族の区分け、特に手押し車族がどんなものなのかの説明がもう少し欲しかった。
    あまり体験したことがないと面白さだった。
    情景は生き生きと書かれてあり、それがむしろ気持ち悪く、誰が精神的に大丈夫なのか?分からなくなった。自分で自分を信じることができなくなる感覚は気持ち悪かった。
    何のために生きているのかわからないけれど、それはきっと明日が良くなると信じているからだろう。

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著者プロフィール

1975年旧ソ連生まれ。ゴーリキー文学大学で学び、児童向けSFで受賞多数。2006年初の長篇ファンタジー『夢の居場所』を発表。18年刊行の本書はこの10年で最も優れたロシアSFと高い評価を得ている。

「2020年 『サハリン島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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