レモン

  • 河出書房新社
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本棚登録 : 176
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309208152

感想・レビュー・書評

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  • 女子高校生が殺され、そのために人生を壊された家族や周囲の人々を描いている。
    構成と語り手の選択、配置が上手い。
    事件に近づいたと思ったら遠ざかる不明瞭さは、今作の中心人物である被害者の妹の苦しみに重なる。
    生活の格差、女性蔑視といった社会問題も、登場人物の生と混ぜ合わせて書かれており、それも上手かった。
    作者の他の作品も読みたい。

  • ミステリのようだと思ったら、ミステリではない。あとがきを読んで、やっとこの本の主題が分かった。「事件の被害者家族が向き合う喪失」は意外と描かれることは少ないと思う。また、喪失に対して丁寧な描写はとても良いと思った。

  • 美貌の女子高校生殺人事件が物語の発端だ
    殺された姉の事件の真相を知ろうとする妹
    娘の死で人生が壊れた母
    被害者家族とえん罪の家族、おそらく加害者の人生を描く
    「人は平凡に生まれ、平和に生き、平穏に死ねないということがあたりまえだとわかっていながら…」と著者は語る
    「理由もなく過酷な生を強いられても」「か弱いムシのように過酷なことすら気づかず生きていく」人たちの姿をひたりとそばによりながら神の無知を叫ぶ
    「どうか一度でもいいから」「あなたの生が(平)であるように」とねじれた人生をおくる人びとを細やかに描きながら読者に思いを寄せる作品

    レモン 、目玉焼き、黄色いワンピース、マクワウリなど黄色が出てくる場面では黄色が表わす「光、親しみ、ユニーク」が強く描かれていると思う。

    へオンの黄色いワンピースは美貌の彼女のユニークさ。
    レモンの詩ではダオンとサンヒオンニが一瞬だけ近くなる。マヌの妹ソヌが目玉焼きを焼く場面では復讐を考えていたダオンとマヌ、ソヌと短い間だけ打ち解ける食事する。その時のダオンの手みやげがマクワウリだった。
    このような親しみ、コミュニケーションも長くは続かず光となって彼らから飛び立ってゆくのだ。

    神に叫びつづけるところ、神を無知だと断罪するところなどカラマーゾフ的だと思う。

  • ミステリーだと思って読んでたら、ちょっと違かった。
    正確にはミステリー要素のある作品であった。

    生と死について語られている。
    内容は短いながらも伝えたい内容は分かりやすくシンプルで読み易い。

    生きている人たちが何を背負って生きていくかに焦点を当ている為、ミステリーだと思って読んでいると違和感を感じる。

    ハン・マヌの馬鹿っぽい話し方は少しやり過ぎで読みにくく感じるけど、恐らくそれも伝えたいことを引き立てる為な気がする。

    個人的にはミステリー作品を期待していたけど、それを差し引いても面白い作品だと思った。

  • 事前情報は「亡くなったお姉さんの顔そっくりに整形した妹の話」だけだったので、百田尚樹の「モンスター」みたいなある種の猟奇的な執着心の話かと勝手に思ってたら、ちょっと違った。

    ある事件から、それに直接的あるいは間接的に関わった人たちの、ある種トラウマティックなその後の群像劇みたいな感じだった。その意味で言うと少し前に読んだ光州事件モノの「少年が来る」と類似点があり、小説の構造的に目新しさを感じられなかったのが残念。こちらを先に読んでいたらまた違ったのかもしれないが。

    姉の顔に整形する妹は、その死を知ることになる電話が鳴った時、「トイレで生理ナプキンの羽を夢中でくっつけていて」、上はパンパンになって膿が出そうなニキビの広がる顔と下は経血で血まみれになった黒々した陰毛の自分を鏡で見る、という状況設定がすごいと思った。現実の生々しさとしての描写もさることながら、いい加減うんざりする自分自身への嫌悪感が彼女の内部でここではっきりアクティベートされたんだな、と思った。

  • これは最初に思っていたよりめちゃくちゃ面白かった。なんというか面白さの度合いが高い。書き方も良かった。章だてて視点がかわる。美人で有名だった女子高生が殺されてその容疑者とされた同じ高校の生徒がいた。殺された女子高生の妹が元容疑者や周辺人物に会いに行くお話。それだけじゃないんやけど。盛りだくさんだし、犯人ははっきり書かれてないけど分かるしそこだけでも面白かった。韓国の小説ってなんでこんなに面白いと思えるんだろう。ワタシには面白いものが多い。

  • 帯には「黄色い天使の復讐が始まる」とか「哀悼と報復のサスペンス」とか書いてあって、訳者あとがきには著者は「死を扱ったミステリーを書きたい」とあったけど、サスペンスやミステリーを期待したらちょっと違うねんな。そちらは想像の余地やら余韻で楽しむ作品かもしれん。
    それにタイトルに惹かれて読んだんやけど、なんで「レモン」だったのか、読み終わってもわからへん。謎。
    ま、映画「パラサイト」のように格差の実態を描きながら、著者いわく「深い喪失感に陥った人たちの痛み」に重点を置いて書かれた作品ではないかと思う。
    この小説が長編にリライトされる前の作品が、韓国では舞台化されたらしい。著者はその舞台を観て、さらに加筆修正してこの小説が完成されたとか。
    日本でも、どこかの劇団がやってくれへんかな。
    そうそう、この著者クォン・ヨソンさんはかなりの酒好きで「春の宵」という短編集など、酒絡みの作品一色で、これもおもろかった。

  • ミステリーかと思ったら、違った。

  • 暗い

  • 文章が、食い込んでは来るけど、物語として収束しきってなかったから、もの足りず。

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著者プロフィール

クォン・ヨソン(権汝宣)
1965年、安東生まれ。ソウル大学国語国文学科修士課程修了。
1996年、長編小説『青い隙間』で第2 回想像文学賞を受賞しデビュー。短編集に『ショウジョウバカマ』、『ピンクリボンの時代』、『私の庭の赤い実』、『カヤの森』、『春の宵』(橋本智保訳、書肆侃侃房)『まだまだという言葉』があり、長編小説に『レガート』、『土偶の家』、『レモン』、エッセイ集に『クォン・ヨソンの今日何食べる?』がある。
呉永寿文学賞、李箱文学賞、韓国日報文学賞、東里文学賞、東仁文学賞などを受賞。

「2020年 『韓国の小説家たちⅠ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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