- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309208954
感想・レビュー・書評
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『ブラッシュライフ』?という出だし。
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マーリ・アルメイダ。
戦場カメラマンにして、ギャンブラー、そしてヤリチン。
物語の舞台は、1990年のスリランカ、内戦真っ只中のコロンボだが、その様子は全て死者であるマーリの目線から語られる。
マーリは、気づくと冥界のカウンターにいた。周りは死者で渋滞。戦争の被害者である彼らは、死者になってもくだらない手続きのために列に並んでいた。そして42階で〈耳の検査〉を受けて〈光〉に行くよう案内される、、、
しかし、途中不思議な雰囲気の若者の霊と会い、生者の世界に干渉するための力があることを告げられる。残された時間は月が7回昇るまで。腐敗した政府の闇を暴き内戦を終わらせようと、スクープ写真を残してきた友や恋人に託すことにする。マーリの地獄めぐりがはじまる。
平和で、夢があって、未来のことを楽しく想像できるような世界にいる人間からはとても生まれようのない言葉が次々に出てくる。戦争はきっと情報過多なのだろう。一人の人間に処理できる以上の情報が際限なく脳に押し込まれる。殺人、拷問、死体の処理。そういうものが生活に染み込んでいる人たちの、突き刺すような言葉が、痛み以上に不思議な魅力をもって紡がれる。作品の中の好きな文章を何度も声に出して読んだ。
逼迫した状況でも、どこか自分を客観視したような一人称の語り口は独特で、物語全体にブラックミュージックのような抗いがたい原始的なリズムを刻んでいる。
そしてストーリーは、死者の移動手段である"風"のように、ユーモアをたっぷり含んでどんどん進んでいく。どこをとってもとにかく面白い。こんなに厳しい時代を、完璧に物語にしたことは、いまだに続くスリランカの混迷に何かしらの一石を投じてくれることと思う。
2022年、満場一致でブッカー賞受賞を果たしたという本作、下巻もとても楽しみ。 -
内戦下のスリランカで、戦場カメラマンのマーリ・アルメイダに起きた奇想天外な物語。
冒頭、彼は冥界の受付にいる。そこで告げられたのは「7つの月が与えられる」だった。死者に残された時間は月が7回上るまで、つまり7日間。その間にマーリは自分の死の真相を突き止め、やり残した使命を完了させることを決意する。
第1章はマーリ及び読者に死後の世界のルールやら時代背景やらを説明するため長く読みにくい。スリランカなんてまったく未知の国で、なんの知識もないから尚更だ。
第2章からいよいよ物語が動き出し面白くなってくる。 -
日経書評 2024年3月2日
鴻巣友季子
マーリ・アルメイダの七つの月(上・下) シェハン・カルナティラカ著:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO78893080R00C24A3MY5000/