迫害された移民の経済史 : ヨーロッパ覇権、影の主役

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309228433

感想・レビュー・書評

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  • 「迫害された移民の経済史」ではあるが、

    重点は迫害ではなく経済にあって、

    迫害されながらも、なおそれによって離散していることを

    強みとして生き抜いてきた人々の一つの歴史である。




    ディアスポラというと、ユダヤ系のイメージが強く

    本書でもその系統であるアシュケナジムや、セファルディムはしっかりと紙幅がとられている。

    とはいえ、ほかにもユグノーであったり、

    スコットランド移民であったりの話があり、

    多様な形の移民がある。




    もっともそれでも西側に偏っているのは東洋からは

    経済圏としての勢力を持つようなまとまった移民がなかったからであろうか。

    宗教的な理由、政治的理由、または食糧難などさまざまな理由で

    元の故郷を離れる人がいて、それが新たなネットワークの拡大につながる。




    本書はそのような描写として興味深いものが多く、楽しめたが

    並列的に並べたディアスポラのケースを俯瞰して説明する視点がもう少し欲しかった。

    また、僕の知識不足もあるけれど、ヨーロッパの地名がバンバン出てきて、

    迷子になってしまうことが多かった。

    大航海時代前後の空気の一端は感じられるかな。



    >>
    手紙を送るときには、複製を送った。複製とは英語でduplicateといい、さらに、二通目の複製はtripcateというが、日本語ではそれにあたる言葉はない。日本と違って中金製のヨーロッパでは、数通の複製を作るのは当たり前であり、そのうちの一通が届けばよいと考えられていた(p.63)
    >>

    船便は沈んでしまうからね。本書によると地中海であってもそのリスクはあったということらしい。

    >>
    長崎に居住した人々のなかには、セファルディムもいたかもしれない。むろん、彼らはユダヤ教徒ではなく、カトリックを信じるふりをする隠れユダヤ人であった。彼らは、一六三九年にポルトガル人が出島から追放されるまでは日本にいたようである。(中略)
    >>

    ディアスポラの民として、イエズス会士を取り上げることに、違和感を覚える読者もいるかもしれない。しかし十五世紀末にイベリア半島から追放された人々のなかにはコンベルソが含まれており、彼らがイエズス会士として活躍していた。(p.42)




    余計なお世話とは思うけど、ここが一番やりたかったところだったんじゃないかなぁ。ここをもう少し掘り下げてくれるとよかったんだけど。

  • いわゆるディアスポラの民の引き起こした経済的影響についての話なのだが、ディアスポラの民は一神教の排他性のために故郷を去らざるを得なくなった、という趣旨の説明が冒頭と最後で繰り返されており、そこはかなり違和感を感じる。ユダヤを支配していたギリシアやローマ帝国とかって多神教文化だったし(一神教信仰なんか捨てればよかったじゃんとでも言いたいのだろうか?)、アルメニア人を虐殺したのは著者によると「寛容な方」な一神教だったイスラームだし、経済とか民族とかの要素はまるっとそこで抜け落ちてるしもやもやする。アジアが宗教に寛容だったのだとか言い出すのも疑問。当時の中国だって伝道の自由はなかったし、キリシタン弾圧した国の人間が軽々しくそんなこと言わないでほしい。なんだかそういう雑な要素が気になってしまって内容があんまり入ってこなかった。

  • ☆ユグノーとは、フランスにおけるカルヴァン派の人々。ユグノーなどの国際的な活動。

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著者プロフィール

玉木俊明(たまき・としあき)
1964年生まれ。京都産業大学経済学部教授。著書に『近代ヨーロッパの誕生』『海洋帝国興隆史』(講談社選書メチエ)、『金融課の世界史』『ヨーロッパ覇権史』(ちくま新書)などが、訳書にパトリック・オブライエン『帝国主義と工業化 1414~1974』(共訳、ミネルヴァ書房)などがある。

「2022年 『世界をつくった貿易商人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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