人類と神々の4万年史 下

  • 河出書房新社
4.14
  • (3)
  • (3)
  • (0)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 79
感想 : 8
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309228471

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 古代からの世界中の神々、
    そして現在へ至る。
    神は存在するのか………
    まさか、この本でプーチン大統領の写真を見るとは…

  • まだまだ知らない事だらけだ。寧ろ、私など知っている事など僅かであり、努めて物語に執着する習慣すらも持たない。しかし、世界には、物語を信仰とし、自らの死生観や善悪を照合する基準を宗教として保有する人たちも多い。何が違うのか。それは躾という距離感の近接した教育の影響が大きい。しかし、二世信者ではない事は、信仰の自由の確保という点において親に感謝すべき事の一つではある。

    下巻は、メキシコのグアダルーペの聖母の絵から始まる。様々な偶像、絵画。信仰を補強するようなエピソードを纏い、より神々しく飾られた創作と神話の融合。必要なのは事実や科学ではない。信仰をより多く集めて繋ぎ留める求心力だ。集団の一体感を醸成する事が、集団の利益に資する。

    下巻で興味深かったのは、特に次の内容。ギルガメシュ叙事詩は紀元前2000年以前のメソポタミアの都市国家で作られて暗唱されていた詩であり、初めて、神々の会議が文学に描かれているもの。メソポタミアでは1人の神が統治支配する事は許されなかった。複数の神により、常に話し合いが行われ必然的に意見の対立もあったが、権威主義、中央集権よりもそのほうが好ましいと考えた。

    それがある日、神々は会議により、増えすぎた人類を全滅させるために洪水をもたらすことに決めた。その時点で人間は不死であったため、人類は増え続け、騒音がひどくなり、神々が眠れなくなってしまったから、人類を滅亡しようという話だ。先ず疫病を試したが、結果は至らず。結局、洪水を引き起こしたが、その後、この判断の誤りを巡り神々は分裂。神の会議はビールを飲みながら行われるから、誤ることがあるのだという。随分人間的だ。結論、洪水で人類を全滅させては神を崇める存在がなくなるため、全滅という判断は誤り。不死を改め、ならば死を創造(設定)しようと。

    古代ローマも、よその土地を征服した時、その土地の人々に市民権を与えるだけではなくその神も取り込んでいった。一神教を信じるアブラハムの3大宗教に対し、多神教の利点の1つは神の数を多くしたり少なくしたりできること。一神教の文化同士が接触するときに起きるような正面衝突がないことである。そのため古代ローマの人々は多くの民族、多くの神々と友好的に暮らすことを可能にした。

    民主主義の起源。いや、宗教論争、利害信仰を巡る戦争の本質であろう。但し、異教徒を取り込んだ所で価値観の対立が必ずしも話し合いで解決可能だというお花畑には辿り着かない。この本を読み、やはり平和のヒントは、信仰を捨てるか、上書きするか、統一する事が手段の一つ、ただ、拝金主義、偏差値による権威主義がオルタナティブにはならないので、異なる制度設計が必要だが。

  • 大英博物館の元館長が
    「神々とともに生きる」
    人類の歴史を語る。

    総合図書館ジュニア・スタッフ(文学部3年)

    ▼東京大学附属図書館の所蔵状況(UTokyo OPAC)
    https://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/opac/opac_link/bibid/2003598301

  • 4万年史とはあるが通史のような内容ではない。様々なトピックを大英博物館の収蔵物とともに紹介・解説しながら、宗教─あるいは超自然的な何かに対する信仰が普通の人々の生活にどのように関わってきたかについて語る本。やはりヒトは何かしらに対しての信仰─あるいは自分を登場人物と思える物語をその手に持っていなければ生きていけない弱い存在なのだろう。そしてそれは、決して消えることはないと思われる。

  • "「アルテミスと彼女の兄のアポロンは、成長することはありませんでした。ふたりはいつまでも一〇代のままでいたため、アルテミスはつねに性的成熟のとば口にいました。彼女はそのとば口をくぐることがなかったので、生殖能力を利用することなく自分の中に抑えこんでいました。それで彼女は、自分の体を支配できたのです。彼女は野生動物の女神であり、ギリシアの信念体系では、結婚していない女性もまた野生とされていました。未婚女性は結婚によって飼いならされるとされていたのです。しかし、野生動物の女神は飼いならされることはありません。彼女は万人の女神で、男性も女性も守り、とりわけ分娩時の女性や、幼児期から成人期への移行期などの、危険な変化を見守りました」" 下巻 P.18

    "しかしこれらのようなモノ(引用者注:宗教的絵画・シンボルなど)は、別のより深刻な困難をもたらす。われわれはそうしたイメージに異なる読み方をすることもあり、また喚起される感情が激しいため、それらのイメージは、宗教的な権威者たちが予測も制御も不可能な方向に見る者を導くおそれがある。人生を変えてしまうようなイメージは、とても危険だ。プロテスタントの宗教改革家の多くが、そうしたイメージに強硬に反対した理由のひとつがそれだった。ほかの多くの宗教活動と同様に、彼らは宗教の真実を伝えるのに結付信頼のおける方法は言葉によるものであり、イメージは真の信仰に対する危険であり、破壊すべきものだと信じていた。" 下巻 P.66

    "「困ったことに神々はしばしばビールを飲みながら会議をおこなうので、その判断は、いつも適切に考え抜かれたものではありません。神々は間違いをおかし、そのうちのひとつが、不死で際限なく増えつづける人類を創造してしまったことでした」" 下巻 P.100(フラッド・タブレットに記載されたウトナピシュティムの物語、ノアの方舟の話と酷似しているところもあれば重要な違いもある物語において、神々が洪水を起こしたのは、寿命を持たない人類が増えすぎて神々が安眠できなくなったため、とされている)

    原題と邦題の問題はあれど、知らないことを知る喜びを得られた。贅沢を言えば「4万年史」の名に偽りのない著述も読んでみたいものだと思う。

    英国の著作物、そのなかでも歴史や地理を取り扱ったものの中には、日本を引き合いに出してこきおろすものがある。その際、バランスの片側として日本のしでかしが載せられることが常である。英国が自らしでかしたことのあまりのアレさに制作者が耐えきれず、ヨーロッパ圏という意味で同朋たるドイツについては手心を加えるしかないので、こきおろしても反撃がこない日本のしでかしを「奴らよりはましである」といわんばかりに執拗に書き記すのである。
    楽しんで読んでいた本書にも、28章で不意打ちを受けた。フランスやロシアのしでかしについても言及があるが、日本のそれについては粘性が著しく高い。アメリカに対しては忖度が目に見えるようである。

  • 第4部 イメージの力
    女性守護者
    再生される信仰と美術作品
    意味を重ねる
    人生を変えるイメージ
    イメージを拒み、言葉を崇める

    第5部 唯一の神、よろずの神
    多神教の恵み
    一神教の力
    土地の精霊
    神がわれらとともにあるなら
    寛容と非寛容

    第6部 地と天の力
    天命
    御国が来ますように
    圧迫
    「神はいない!」
    ともに生きる

  • ドイツ南部のウルムで発見されたライオンマンは、約4万年前にマンモスの牙で作られた想像上の存在とされる。

全8件中 1 - 8件を表示

著者プロフィール

1946年イギリス生まれ。1987~2002年、ロンドン・ナショナルギャラリー館長の後、2002~2015年、大英博物館館長を務める。邦訳に『100のモノが語る世界の歴史』がある。

「2022年 『人類と神々の4万年史 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ニール・マクレガーの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×