延びすぎた寿命

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309228532

感想・レビュー・書評

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  • 公衆衛生改善の歴史、経済発展と工業化・都市化、そして医療技術の発展などを振り返りながら、これまで人間の寿命がどう推移してきたかを詳説した書。

    その昔、人類の平均寿命(出生時の平均余命)は25年~30年程度でずっと低迷していた。それが、18世紀半ば以降、社会情勢が変化し人々の健康状態が向上しだす。するとその後は一貫して平均余寿命が延び続けきた。

    しかしながら現在、「人間の健康は深刻な後退に見舞われて」いるという。慢性疾患が増え、「富裕国の一部で死亡率が上昇し、寿命が低下した」。途上国でも慢性疾患が増えており「寿命が延びなくなるのはほぼ確実である」という。その原因は、飽食と運動不足、ストレス、環境汚染、気候変動、感染症などなど。

    思っていたのと全然違う内容だった(生物としてのヒトの寿命の限界を探る内容だと勝手に思ってた)のでガッカリ。

  • 平均寿命が長くなったと
    明らかに言えるのは、たかだか
    200年前から。
    しかも、医学の貢献は
    小さい。ーーー そんなバカな!と
    驚かされる内容からスタートし、
    平均寿命が長くなった歴史を
    解説してくれる。
    非常に面白かった。

    いろんな発見、医療の発達、公衆衛生の施策
    が積もり積もって、現在の
    「人生100年」(という嘘っぱちスローガン)
    を唱えることのできる状況まで
    登ってきたと分かり、感動しました。

  • 寿命に関わる因子とその変遷の分析で、非常に面白い。乳幼児死亡率の低下が平均寿命の向上に寄与する事はよく知られているが、それ以外の長寿理由は、医学の進歩によるものだと漠然と考えていたが、当然それだけではない。栄養、衛生、戦争、感染症、ワクチン、経済、薬学、文化制度。例えば、都市の公衆衛生状態はひどく、農村よりも死亡率が高かった。感染症も、瘴気説が広く信じられていて接触による伝染、ウイルスなども認知されていなかった。

    単に寿命が延びても、やりたい事をして、人生が謳歌できるかは別問題だ。健康でなければ闘病に苦しむ時間が延びるだけ。お金が無ければ最低限の事もできず、友人や家族がなければ孤独。趣味だって必要だ。寿命が延びたのは結果論だが、有意義な時間を生きられるかは分からない。タイトルの「延びすぎた」という書き方は、その生を持て余したようなネガティブな表現でもある。

    アメリカでは、自殺やオピオイドのオーバードーズで2014年頃に平均寿命が下がったらしい。長く生きていたい、と今は思うが、安楽死を望みたいと思う時も来るのだろうか。余命を充実させられるか、まさに健康第一で備えるべきだと再認識。

  • 『感想』
    〇寿命はここ200~300年で3倍となったが、これは医学の進歩ではなく行動、環境生物学だと。つまり病気になったあとの対策ではなく病気にならない事前の準備ができるようになったとのこと。

    〇寿命ではなく健康寿命を延ばすことが求められるが、そのためには適度な運動、体に悪いことをやめること、環境を整えることが求められる。これ医者に健診で言われることと一緒だな。またこれらは経済力で格差がある事に社会の不平等を感じる。日本は恵まれている。

    〇人が長生きしたいのと一緒で、ウイルスも滅亡することなく存続したいんだよな。簡単に消滅させられる恐れがあるからこそ、人が想像できない進化を素早く遂げる。

    〇寿命という誰もが気になることについて書かれているので面白かったが、中身は簡単ではなくかつ長いため、読むのには疲れた。

    『フレーズ』
    ・健康の歴史は医学の歴史ではない。健康が医学で決まる割合は10%から20%にすぎないからだ。かつてこの割合はもっと低かった。医学以外に健康の決定要因が三つある。行動、環境、生物学。大雑把に言えば年齢、性別、遺伝である。(p.10)

    ・こんにち疾患は多様化し、新しい疾患が次々と出現しているが、昔はその反対だった。原因の大半を占めていたのはつぎの三つであったとみられている。微生物感染症、栄養不足、暴力である。(p.18)

    ・所得の低さが身体の不調に先行するのは明らかで、原因と結果が逆になることはない。(p.205)

    ・種が消滅すると、それに依存して生きていたウイルスが圧力を受ける。そのため、ウイルスは新しい環境に適応しようとして、宿主を変えるのである。(P.278)

  • 女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000058227

  • これまで人類の寿命が延びてきた、その要因が何だったのかということを歴史的に考察する。〈健康の歴史は医学の歴史ではない。健康が医学で決まる割合は10%から20%にすぎないからだ〉と序文にあるとおり、それ以外の記述にかなりの分量が取られている。健康の決定要因は医学、生物学、環境、行動の4つと分析、時代によってそれらの比重が変わるとして1750年代以降の人類とその健康状態について概説。それほど突飛なことが書いてあるわけではなく、概ね納得できる主張。

    I.微生物の時代
     人口統計の始まり、衛生環境の向上により乳幼児死亡率が下がる、ワクチン接種のはじまり、都市化と環境政策、細菌説の需要と消毒、スペイン風邪の大きなインパクト
    II.医学の時代
     抗生物質とワクチン、がん治療の取り組み、薬と製薬産業
    III.二一世紀の健康をめぐる三つの問題
     健康の経済学・健康関連支出、所得と健康格差、慢性疾患と行動リスク――たばこ・アルコール・運動不足・肥満、化学物質汚染
    IV.二一世紀――後退
     絶望死・アメリカにおける平均寿命の低下、気候が健康に与えるインパクト、新興感染症とパンデミック

  • レビューはブログにて
    https://ameblo.jp/w92-3/entry-12758577167.html

  • 8月新着
    東京大学医学図書館の所蔵情報
    https://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/opac/opac_link/bibid/2003615541

  • 医学医療の歴史の内容で目新しいことは特になかった。今は肥満や薬、アルコール中毒で寿命が縮んでいると。なぜそうなっているかの考察が知りたかった。資本主義の格差だと思うが。

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著者プロフィール

肝臓・消化器疾患の専門医、医学博士。欧州最大の病院グループである公的扶助パリ病院機構で常勤医師、特別研究員を務める。国際的な科学雑誌に多くの論文を発表。「ル・モンド」紙や「レ・ゼコー」紙などにも寄稿。

「2022年 『延びすぎた寿命 健康の歴史と未来』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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