いつも異国の空の下 (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 206
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309411323

感想・レビュー・書評

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  • 終戦間もない昭和25年異国に旅立ち、日本人歌手として海外を回った石井好子さんの約8年間を綴ったエッセイ。

    出国当初は会話にも不自由する中全く知らない土地で女ひとり生活出来る所、行動力と社交性の高さを感じ、自発性に乏しい自分と比較して感服しきり。

    文庫になる前の本は1959年に発行されたものだそうですが、飾らない素直な言葉で綴られていて、今読んでも鮮やかです。一歩間違えたら悪口? というような友人たちへの評価も、きっと本当に彼ら、彼女らが大切で心配していたからこそ書いたのかなという気がします。
    そんな現地の友人との交流などが密に描かれていますが、日本や第二の故郷であるパリへの郷愁が本を通じて伝わってきて、どこか物悲しさも漂う一冊。

    石井さんの他のエッセイを読んでいると内容的にかぶっている所もありますが、何処で何をし、何を思い誰と仲良くなったのか等が掘り下げられていて、その時代にこんなに活動的な女性がいたのかと驚くとともに、当時の日本・海外を知る意味でも興味深い。

  • 「生活」で面白かったです。1950年代の8年間、欧米で一人で生きるバイタリティーに圧倒されました。
    表現が率直過ぎる…と思ったところも、石井好子さんの周りの人々がリアルに浮かび上がってきて面白いです。周りのショービジネス界に生きる方々もそれぞれバイタリティー溢れている。華やかだけどシビアで、キラキラばかりじゃないところも好きでした。
    一章しか割かれてないけどキューバは衝撃…マリアもたいへん濃い人物ではありましたが。
    藤田嗣治とアルベルト・ジャコメッティ…凄い。。
    欧米とひとくくりにしてしまっていますが、フランス、スペイン、再びフランス、キューバ、アメリカ、最後にまたフランス…なんとなく、パリで1番生き生きとされてる印象です。日本でさえちょっと居心地悪そう。
    好子さん、かなり客観的というか第三者目線なところが凄いバランス感覚だなぁと思います。でもそんなところも、好子さんにとってはあとがきに書かれてたような心持ちになるのかもしれません。

  • 石井さんのお料理エッセイを買った時に隣にたまたま並んでいて、
    こちらも面白そうだったから一緒に買っていたのを読み終った。
    こちらは彼女の歩んできた道、シャンソン歌手として彼女が経験してきたことが語られている。

    彼女が海外に飛び立ったのは、昭和25年。
    終戦からまだそんなに時が経っていない時に彼女はサンフランシスコへ向かった。
    いまの時代だから留学なんて珍しいことでもないけど
    この当時、きっと彼女のように女が独り海外へ出て行くなんてとても珍しいことだったんだろうな。

    サンフランシスコ、NY、パリ、ドイツ、スイスにキューバ。
    彼女が旅した国は数多く、その都度彼女が感じたことがとても素直に書かれている。
    彼女の書くエッセイが面白いなと思うのは、決して気取ってはいないこと。
    見たものを見たままに、感じたことを感じたままに書かれてるような気がするから
    なんだかすっと入っていける。

    あまり知りえないこの時代の各国の芸能事情(歌手としての生き方)。
    それにあわせて、ところどころからその時代の時代背景もみえてくる。


    読みながら、やっぱりこの石井さんって人は
    なんともバイタリティーある人だったんだな、と感じた。
    ひとりの女性の歩んできた道として、読んでいてなかなか面白かったです。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「決して気取ってはいないこと」
      料理の本を読んでも、充分判ります。とっても素敵ですよね!
      「決して気取ってはいないこと」
      料理の本を読んでも、充分判ります。とっても素敵ですよね!
      2012/06/19
  • 『女ひとりの巴里ぐらし』同様に、あくまで淡々とした描写から戦後フランスの市井の人々の息づかいが聞こえてくる様が素晴らしかった。
    年表からは知り得ない「時代」。
    しかも、今から半世紀以上も前に日本人女性が単身異国で生計を立てつつ経験した「時代」であり、密度が違う。
    『女ひとりのー』では「ナチュリスト」での1年間について描かれていたが、『いつも異国のー』はその前後関係までがつまびらかになる。
    実に8年間世界3周の記録。
    彼女の鋭い観察眼は時に自分自身にも向けられており、彼女のエッセイストとしてのすごさはそこにあると思う。
    当時の自身のことを「三十を過ぎた、一度結婚にもやぶれた女性」と突き放す一方で、フランスでの日々を「私の力で克ち取ったもので、非常に高価なものであったような気がしていた」と肯定する強さも持っている。
    こんな強さ・・・矜持が自分の中にはあるのか、と問いたくなる。

    ーそれにしてもフランスでの交遊関係が豪華すぎ。
    朝吹登水子、藤田嗣治、ジャコメッティ、ジャン・ジュネ・・・。
    ジャン・ジュネの名前を見つけて、読みかけになっている『花のノートルダム』を読まねばと思いました。

  • 石井好子さんの半生を描いたエッセイ。そんなにお料理要素がなかった。笑

  • 石井好子さんの海外での暮らしのエッセイ。
    女ひとり〜ではナチュリストでの一年を中心に書いていたけど、こちらはアメリカやヨーロッパ巡業の思い出も盛り沢山。
    その分一つ一つのエピソードはサラッとしてるかも。

    異国の地で物怖じせず、その地に馴染む姿に憧れる。

  • すごい!この時代にこんな女性がいたなんて。
    憧れる〜!
    夢があるっていいことだね。

  • 石井さんの本は3冊目。他の2冊と重なる部分がありながら、他よりも深く著者の内面が書かれてた。

    それがなぜか自分の事が綴られているかのような不思議な感覚を持って読んだ。

    戦争直後の女の外国暮らしながら、日本にいる家族や自分の生きるべき場所を模索し、自分を殺さず生かそうとする天秤が心の中で揺れる。そのあたりが共感できたのか、芸術家なのに親に対する気持ちとか、人として生きることの常識がちゃんとしていて、破天荒な道はやはり選べない。破天荒な芸術家の傍らで常識的すぎるところが凛としていたり、損していたりするのかな、と思った。
    どの道を選んでもきっと間違いが微塵もないなんてことはない。それでも胸を張って生きていこうとする姿に私個人の思いが重なるのかもしれない。

    時代が今とぜんぜん違うのに古臭さがなく、時は「今」という空気感。 有名人の周りにはやはり有名人。

    解説は冒頭で自分の感じてきたことと違ったので読むのをやめた。

  • シャンソン歌手・石井好子氏のエッセイ。
    戦後、アメリカに留学して以来8年にわたりフランスやアメリカ、キューバなどを旅し、歌った日々の思い出が書かれている。


    旅から旅の生活でも、色々な人との出会いがある。言い寄られたり、ケンカしたり、笑いあったり。

  • 外国を旅した人たちのエッセイなり随筆なり旅行記なりを読みたくて、贔屓の河出書房から何かないかと探して最初に見つけたのがこの本でした。

    物悲しさが全体に漂っていて、読んでいて楽しくなるような本ではないのですが、素直に書かれた文章で全く飽きずに読めました。

    私も感じたことが書かれていた解説が気に入りました。

    須賀敦子さんのユルスナールの靴の方はイタリア舞台なので全体的に明るいです。

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著者プロフィール

1922年東京生まれ。52年、パリでシャンソン歌手としてデビュー。各国の舞台に出演し、帰国後はエッセイストとしても活躍。『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(河出文庫)等著書多数。2010年逝去。

「2020年 『いつも夢をみていた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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