絶望読書 (河出文庫 か 34-1)

著者 :
  • 河出書房新社
3.71
  • (17)
  • (26)
  • (18)
  • (5)
  • (3)
本棚登録 : 425
感想 : 34
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309416472

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 絶望しているときに絶望の本を読むと効く!という絶望読書のススメ。

    絶望しているときに本なんか読めるか!というのが最初の率直な感想。
    でも、いわゆるどん底にいるときのことではない。沈みきった後、浮上していく途中、、、横這い状態のとき、、、絶望の‘期間’をどう乗り越えるか、という内容が第一部。
    各界の偉人の名言、心理学などをひもときながら、本の有用性を語っている。

    第二部は実践編。
    頭木さんセレクトの‘絶望の本、ドラマ、映画、落語’の紹介。
    紹介されているものは、太宰治/カフカ/ドストエフスキー/金子みすず/桂米朝/『ばしゃ馬さんとビッグマウス』/『愛すれど心さびしく』/向田邦子/山田太一など。

    どれも頭木さんの個人的な体験から読んで、観て、聴いて「救われた」と感じたものばかり。

    だったら他の方の絶望に効くのか、と思うけれど、効くのかもしれない、効かないのかもしれない。

    でも効くかも、という‘期待’だけで当分大丈夫そうだと自分は思う。

    また頭木さんは今現在、絶望していない方にも‘絶望読書’をすすめている。

    いつかくるかもしれない絶望のために心の準備がしておける、と。

    読書ってそういう‘使い方’もあるのだ。

    解説は『人はなぜ物語を求めるのか』という新書がある千野帽子さん。
    納得の人選。

    • nejidonさん
      5552さん、こんにちは(^^♪
      私はまた、5552さんが何かに絶望しているのかと心配してしまいました。
      コメントまで読ませていただいて...
      5552さん、こんにちは(^^♪
      私はまた、5552さんが何かに絶望しているのかと心配してしまいました。
      コメントまで読ませていただいて、そんなことはないと分かり、ホッとしました。
      どうにも落ち込んでしまった時に必ず開く本は、私もありますよ。
      ただ、そもそも絶望する才能がないみたいです・笑
      どんなに辛くても悲しくても、眠くなれば寝るしちゃんとお腹も空くし。
      で、そのうち元気になってしまうし。
      ちゃんと絶望出来る人って、ある意味すごい才能だと思います。
      2020/01/19
    • 5552さん
      しずくさん。
      再びのご訪問ありがとうございます。
      落ち込んだときは明るい物語よりも、自分の暗さと同調または同質の暗い物語や言葉の方が沁み...
      しずくさん。
      再びのご訪問ありがとうございます。
      落ち込んだときは明るい物語よりも、自分の暗さと同調または同質の暗い物語や言葉の方が沁みる、という方には合うと思います。
      特にカフカの言葉はネガティブすぎて逆に少し元気が出るような(笑)
      同じくヘタレな私には必需品です。
      2020/01/19
    • 5552さん
      nejidonさん、ご心配をおかけしてごめんなさい。
      私は普段はノホホンと生きてるくせに、たまに意識せずぽろっとネガティブ発言してしまうよ...
      nejidonさん、ご心配をおかけしてごめんなさい。
      私は普段はノホホンと生きてるくせに、たまに意識せずぽろっとネガティブ発言してしまうようです。
      本人は意外と平然と話してるのですが、優しい方は気にしてくださるので、気をつけないとな、と思ってるんですが、、、。
      早く大人になりたいです(^_^)(大人ですが)

      絶望する才能、、、ですか。
      この本に出てきたカフカさんは一見恵まれている人生を送っていたのに、絶望名人といわれるほどネガティブ発言が残っています。
      彼こそ絶望の才能のある人だと思います(笑)
      私にも絶望していた頃があったので、だからこそこの本に惹かれてしまったのかもしれません。
      nejidonさん、あたたかなコメントありがとうございました。



      2020/01/19
  •  絶望した時に本を読むことの効用と、具体的な本の紹介本(小説以外にも、詩・落語・映画・ドラマもある)。

     著者は、自分が重い病気に罹患した経験から、非常に平易かつ語り掛けるような書き振りで

    ①同じ物語をずっと生きられるとは限らないこと
    ②絶望の種類は多様で、誰かに分かってもらえるものではないからこそ、本による共感が大きな意味を持つこと
    ③絶望時に無理矢理浮上した気になっても、後から「遅延化された悲嘆」に襲われること(←超絶わかる)
    ④絶望は個人的なものであり、暗い道を一緒に歩いてくれる本が助けにになること
    ⑤読書とは、余裕がある人が美食をするようなものではなく、もっと切実な栄養補給であること
    ⑥ネガティヴな面にも目を向けて、それでも善く生きられることが本当の明るさであること

    について説明する(かなり乱暴に第1部1~6章を一言でまとめてみた)。
     実際そうなの?と聞かれたらやっぱりそうだなと思うところはある。夢を諦めたときとか、大恋愛が終わったときとか、様々な理由で潰れているときに自分の読書リストや日記を読み返してみると、なるほど似たような絶望を描いたともとれる小説を大量に摂取しているのだ。というか学校にも行かず半年くらい部屋に引きこもって本ばかり読んでた(2chもやってたけど)。
     そこで自分が求めたものは、意識の上では絶望への対処法だった(メンタルがぶっ壊れた時には小説と並行して認知療法とかそういう新書を読みまくってた)けど、やっぱり共感したり、哀しみにじっくり沈んだり、そういう気持が根底にあったのだろう。

     また、著者は繰り返し「私の絶望なんて大したことないですよ」と謙遜するが、そんなことは絶対になくて、『アンナ・カレーニナ』の冒頭じゃないが絶望の形は十人十色なのだ。私もどん底の頃に、V.フランクルの『夜と霧』を読んだことがあったが、本気で「いやでも考えによっては〇〇だよね。俺はそうはいかないもん」とか本気で考えてた。もちろん思うことも得たものも沢山あったが、あの物語を悼む余裕はなかった。

     だから、人は様々な理由で傷付き壊れてしまうんだということを、理解とまではいかずとも、知るというだけでも、健康なうちに様々な絶望に触れることは意義のあることだろう。絶望が自分や誰かに降りかかったとき、きっと何かができると思う。

  • タイトルにひかれて読んでみた。
    「絶望読書」=絶望した時にこそ読むべき本
    作者が20歳の時に難病にかかり10年以上の闘病生活を余儀なくされ、どん底な気分から救ってくれたのがある種の本だったという実体験から書かれたものです。
    確かに、困難な状況になった時や失敗した時、自分の過去のより悲惨な経験や苦労した偉人たちの伝記などと比べて、「自分はまだ大丈夫」と叱咤激励するのは効果的です。本書は、そうした状況に突然陥った時に、先人の知恵の言葉や物語を転ばぬ先の杖として準備しておくという常備薬的な読書のススメです。
    もちろん、具体的な書名や作者も紹介されていますので、気になった方は一読をお勧めします。(ドストエフスキーの「死の家の記録」は衝撃的でした)
    ここからは、私の個人的な読書経験からのお話です。私も、高校3年の時に2か月の入院生活を送りました。その時、看護婦さんから借りた本が「エリックの青春」で内容は白血病で死んでしまう青年の物語でしたが、「なぜ、入院患者にこの本を?」と疑問に思ったものです。とはいえ、当時大好きだったシカゴの曲「ビギニングス」がエリックの大好きな曲だったというエピソードもあり、エリックの闘病生活に比べればなんてことはないという気持ちになれたのも事実でした。反対に、あまり暗く哀しい小説ばかり読んでいると、「これは、小説の世界だからだよね」と現実とフィクションとの差に気づいて癒し効果が薄くなってしまう弊害もありそうです。

  • 絶望の沼に沈んだ時の槍過ごし方を示した本。絶望から早く抜け出そうと無理に目の焼けるような明るさを取り入れるのではなく、自分の気持ちと溶け合うようなドブ川のような暗い物語を読む。絶望を咀嚼して吞み下すには、心地のいい仄暗さに浸ることが必要だと教えてくれる一冊でした。この本で取り上げられたカフカの作品にとても惹かれ、読書意欲も湧きました

  • 本は漢方薬のように、じんわり強くしてくれる。

    難病によって長い期間、絶望の中を過ごした著者自身の体験から「読書は命綱である」というメッセージが込められたベストセラー。エッセイが全体の半分、もう半分はブックガイド(映画やTVドラマも含まれる)といった構成です。日常的に本に触れてない人、まさに今絶望の只中にいる人に向けられていて、とても易しい、かつ優しい文体で読みやすいです。

    絶望からの立ち直り方の指南書ではありません。絶望の期間をどう過ごすのかに焦点を当てていて、それには読書がピッタリ、とりわけ絶望的にネガティブな作品がよいと著者は語ります。確かに絶望している人間に、ポジティブシンキングを押し付けてもうまくいかないかもしれません。自分と同じように後ろを向いてくれるような作品の方が自然と体が受け付けることもあります。他人から悪趣味と思われるようなものが、メジャーな価値観から漏れてしまった人間を優しく受けとめてくれることもありますよね。

    著者は絶望にフタをしたり、絶望してないふりをしたりする方がかえって危ないと言い、絶望を認めて、絶望に浸って、絶望している自分と向き合うことが大事だと説きます。絶望を受け入れて付き合っていく時に、本がそばにいてくれるだけで救われると語り、私もまさにその通りと深く頷きました。人間のように変なアドバイスもなく、急な来訪もない。こっちが勝手に求めれば、ページを開いてくれる。本は人間に寛容です。

    私も10代から20代頭までは読書を趣味としていましたが、いつの間にか本を読まなくなっていました。しかし30代のある時に思い悩み、もう何年も離れていた本にすがりつきました。理由は分かりませんが、なぜか必死に本に手を伸ばしたことを覚えています。いつも絶望が頭の容量の大半を占めているため、文章が長かったり、少しでも小難しいと頭に入ってきません。目で文字は追えますが、視線が通り過ぎたそばから意味が散らばってしまい、「あれ、なんだっけ?」ともう一度ひとつ前の文から読み直すほどに、絶望中の読書は難しいです。しかも一冊をやっと読み終えて、自分の糧になったと実感できるのは内容の1%にも満たないかもしれません。それでも必死になって本を読んだことを思い出しました。

    この「絶望読書」を手に取った時の私の目当ては、作者オススメのブックガイドだったのですが、全部でたった10作品と少なく思いました。そして著者の文体の熱量もひかえめに感じました。普段本に触れない人や絶望中の方の負担にならないよう薄味にしたのかなと思うのですが、個人的にはブックガイドは個人の偏執や思い入れたっぷりに、コレも紹介したいアレも紹介したいという情熱が溢れているものが好みです。この本の続編『絶望図書館』が私の好みにおそらく応えてくれそうなので、そちらもチェックします。

    人生の問題に即効性と有効性がありそうな、生き方指南やビジネス教養などの書籍もありますが、自分の人生に一見なんの関わりのなさそうな本ほど、時間をかけてじんわりと効いてくる実感があります。私にとって読書は漢方薬のようなものです。少しずつ強くしてくれます。

  • 著者の経験に基づいて、絶望に効く作品が紹介されていました。
    古典作品は、ほぼ読んだことが無いのですが、読んでみたくなりました。

  • 自分は普段からなぜ本を読んでいるのかわかってなかったけど、「読書は命綱」っていう表現がなかなかしっくりきた感じがした。

  •  難病で絶望に陥り、小説の読書に救われた作者の絶望読書の勧め。
     
     なぜ絶望時に絶望している小説が必要なのかを書いた前半と具体的な絶望本紹介の後半とに分かれる。
     特に前半の絶望した時に絶望小説を読むのが救われるというのはなるほどと唸った。純文学の必要性を強く理解できた。

  • 長期入院患者の間でドストエフスキーが回し読みされていて、というところが印象的。実際、若い時にはドストエフスキーなんか何が面白いんだなんで読むんだって思っていたもんなぁ。。実年齢にかかわらず、自分が下降線に入ってきたり、孤独を感じたり、”絶望”とまではいかないかもしれないけどその片鱗を感じたりすることが、いつかあるでしょう。いかにいま自分が”絶好調”であっても、こういう本があることを頭の片隅に入れておいて、そんな時に読めるようにしておくといいと思います。

  • 本紹介本でした。
    ただおそらく筆者は僕と同じ病気。
    そして僕よりも重い。一応僕の絶望読書にはなった。

全34件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

頭木 弘樹(かしらぎ・ひろき):文学紹介者。筑波大学卒。大学三年の二十歳のときに難病になり、十三年間の闘病生活を送る。そのときにカフカの言葉が救いとなった経験から、2011年『絶望名人カフカの人生論』(飛鳥新社/新潮文庫)を編訳、10万部以上のヒットとなる。さらに『絶望名人カフカ×希望名人ゲーテ 文豪の名言対決』(草思社文庫)、『ミステリー・カット版 カラマーゾフの兄弟』(春秋社)を編訳。著書に『食べることと出すこと』(医学書院)、『落語を聴いてみたけど面白くなかった人へ』(ちくま文庫)、『絶望読書』(河出文庫)、『カフカはなぜ自殺しなかったのか?』(春秋社)、『自分疲れ』(創元社)。ラジオ番組の書籍化に『NHKラジオ深夜便 絶望名言』(飛鳥新社)。名言集に『366日 文学の名言』(共著、三才ブックス)。編者を務めたアンソロジーに『絶望図書館』『トラウマ文学館』(共にちくま文庫)、『絶望書店 夢をあきらめた9人が出会った物語』(河出書房新社)、『ひきこもり図書館』(毎日新聞出版)がある。NHK「ラジオ深夜便」の『絶望名言』のコーナーに出演中。日本文藝家協会、日本うんこ文化学会会員。

「2023年 『うんこ文学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

頭木弘樹の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×