日航123便 墜落の新事実: 目撃証言から真相に迫る (河出文庫 あ 34-1)

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309417509

感想・レビュー・書評

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  • 青山透子『日航123便 墜落の新事実 目撃証言から真相に迫る』河出文庫。

    1985年8月12日に御巣鷹の尾根に墜落した日航ジャンボ機墜落事件の真相に迫るノンフィクション。

    果たして真実はどこにあるのか……自衛隊または米軍による事故の隠蔽なのか……

    真相の鍵となるのはジャンボ機墜落前に目撃されたオレンジ色の謎の物体と2機のファントム機の目撃証言。ジャンボ機墜落の原因は訓練用ミサイルによる尾翼の破損で圧力隔壁の破損によるものではないというのが、著者の主張である。墜落現場を特定し、救助活動が遅れたのは訓練用ミサイルの痕跡を消すためにガソリンとタール臭が特徴的なゲル化燃焼剤を使って機体の残骸を燃焼させたためだとも主張している。

    確かに怪しい点は多分にあるが、物的証拠が無く、目撃証言や当時の状況証言だけが材料というのは非常に弱い。

    本体価格800円
    ★★★★

  • まずは犠牲者の方々のご冥福をお祈りします。

    当時の記憶は断片的ながらとても強く残っている。毎年のニュースや、山崎豊子さんの「沈まぬ太陽」での衝撃が、その記憶を色濃くさせた。

    事故ではなく「未解決事件」として、膨大な情報から導いた仮説を検証している。そこについて理解はできた。言及はしない。
    職務を全うした乗務員の同僚であり友人である著者の、「人を思い行動し続ける生き方」は強く突き刺さりました。

  • 『いつか真相がわかる日が来るのだろうか…』

    1985年8月12日。日航ジャンボ機123便が群馬県・御巣鷹の尾根に墜落し、乗員乗客524人のうち520人が亡くなった事故の真相を追うノンフィクション作品。2018年本屋大賞のノンフィクション部門にノミネートされ、のちに文庫化。

    単独機では世界最多の死者を出した飛行機事故であるが、著者の青山透子氏(元・日航CA)は事故ではなく事件であると主張する。機体の整備不良と調査委員会は結論づけたが、本書を読むと確かに何かがおかしい。国家ぐるみで隠そうとした真実があったのではないかと疑ってしまう。

    仮に本書の推測が事実だとすれば、歴史は隠蔽されたことになる。ただの飛行機事故ではない。しかし、隠蔽するには関わった人が多すぎる気もする。自衛隊員の全員が墓場まで持っていけるのだろうか。いずれにせよ闇が深すぎる。

    元同僚の無念を晴らしたいと思う著者の熱量には胸をうたれた。TV番組で再現VTRは何度も見たが、事故の裏側にこのような疑念があったことは知らなかった。墜落からもうすぐ40年。自分が生まれる前に起きた事象だが、風化させてはいけないのかもしれない。

  • 本書は1985年8月、520人の死者を出した日航123便墜落事故に疑問を抱く著者が、数々の目撃者や関係者の証言をもとに真相に迫っていくというノンフィクション。
    事実を積み重ねて真相解明を試みるという手法はノンフィクションの定石であり、読み応えがあり、面白く読めました。

    本書が指摘する問題点は
    
ー公式記録にはないファントム二機の追尾が目撃されている。
ー日航機に付着した赤い形状のものが目撃されたが、それは何か。
ー地元群馬県上野村の小中学校の文集に寄せられた子どもたちの目撃証言。
ー米軍機が墜落地点を連絡したにもかかわらず、なぜ現場の特定が遅れたのか。
ージェット燃料の火災ではありえない遺体の完全炭化から考えられるある種の武器使用の疑い。
ー圧力隔壁修理ミス原因説への疑問。

    著者は、事故について日米政府による何らかの証拠隠滅があったのではないかと考え、この事故が「事件」であった可能性を推理します。
    決定的証拠はなく、全ての情報公開を訴えて本書は終わります。仕方のないことではありますが、やはりモヤモヤは残ります。

    著者の青山透子さんは元客室乗務員。国内線乗務の時、日本航空123便墜落事故の客室乗務員と同じグループに所属。日本航空123便事故調査委員会の調査に疑問を持ちつつ退社。東京大学大学院で博士号取得した後、日航123便墜落に関連した資料、公文書をもとに長年に渡って調査を進めています。
    本書は2017年の出版ですが、青山さんはその後も『日航123便墜落 疑惑のはじまり――天空の星たちへ』『日航123便墜落 遺物は真相を語る』『日航123便 墜落の波紋――そして法廷へ』『日航123便墜落――圧力隔壁説をくつがえす』(いずれも河出書房新社)と立て続けに著書を発表。

    オミクロン株蔓延の発端かもしれない在日米軍の行動とそれを強く問題視しない日本政府の対応もそうですが、本書に書いてあるような疑惑を読むと日米関係の現状と行方に不安を抱いてしまいます。真相解明を日本人として強く望みます。

  • 筆者が事故当時の日航CAということで興味を持って。確かに当事者意識が高く、亡くなった同僚や先輩を悼む気持ちや思い入れは強く伝わってくる。が、肝心の「新事実」が…。ほぼ目撃証言だけで導いた仮説は、根拠が弱く飛躍し過ぎ。もっと多角的な調査・検証結果がなければ納得しづらい。他の著書は未読なのでこの書に限って言えば、感情的な表現も目につき、ルポとしてはどうかなと思った。

  • 私の知らなかった話。
    トンデモ話として、言われる人もいるのだろうが。
    色々な違和感とそれを裏付ける証拠を並べて説明してくれている。
    真実はわからないが、不都合な真実が裏に隠れているのだろう。
    真実を明かすために非難を恐れずに仲間のために人生を捧げている作者の熱い想いも感じた。

  • 本書は、1985年8月12日に、東京発大阪行きの日航ジャンボ機123便が群馬県の御巣鷹の尾根に墜落し、乗員乗客524人のうち520人が亡くなった、単独機では世界最多の死者を出した事故・事件の真相を問うものである。
    著者の青山透子氏は、元日本航空国際線客室乗務員で、国内線時代に当該機のクルーと同じグループで乗務。その後、官公庁、各種企業等の接遇教育に携わり、専門学校、大学講師として活動。東京大学大学院博士課程修了、博士号取得。
    私は、この事故・事件については、しばらく前に、群馬県警高崎署の刑事官として身元確認班長と務めた飯塚訓氏が、現場で見た127日間を記録した『墜落遺体~御巣鷹山の日航機123便』を読んだが、その真相を問う本・文書に接したのは、不覚にも今般が初めてである。
    事故・事件当時私は学生だったが、日本国内の陸上の極めて限定的な地域に墜落し、赤々と炎上している機体が、一晩中発見できないなどということが、本当にあるのだろうか?という疑問を、漠然と抱いたことを思い出す。
    そして、本書を読んで、公式発表に対してこのような様々な疑問があることを知り、驚くと同時に、9.11米国同時多発テロや、古くはケネディ米国大統領暗殺をも思い出した。
    著者の推測(端的に言えば、自衛隊が誤射したミサイルが当該機に当たったことが墜落の原因)には妥当と思われる部分も多々あるが、一方で、①隠蔽する動機が弱すぎるのではないか?(9.11やケネディ暗殺の疑惑は、真偽は別として、事件に対する国家の積極的な意図・関与が指摘されているが、本件の原因はあくまでもミスであり、明るみに出たときの衝撃・リスクを考えれば、隠蔽しようなどとは考えないのではないか)、②生存者がいる可能性のある現場を、火炎放射器で焼き尽くすなどという行為が、倫理的にできるだろうか?、③生存者4人は②の行為を目撃しているのか?、などの疑問が浮かぶのも事実である
    本書を読むだけでは、その真相は即断しようもないが、一つだけ確かなことは、30余年を経た今も、これだけ多くの人々が疑問を感じている以上、公式な再調査が行われるべきということである。それが、亡くなった方、遺族の方、また、上記『墜落遺体』で語られているような、事故に献身的に対応した人びとに対する、最低限の誠意というものであろう。遠からぬ将来、誰もが納得する形で真相が明らかになることを願いたい。
    (2021年6月了)

  • 知りうる人たちが見て見ぬふりすることにより結果的に自滅への道を辿る
    115ページのこの言葉をしっかり受け止めたい。
    反省なき未来はいずれ崩壊する。というあとがきの著者の言葉、警告を真摯に受け止めたい。

    日本に限らず民間航空会社のパイロットは、軍や日本なら自衛隊出身の方も多い、それが腕の良いパイロットのクレジットとなることも多いと思う。この事故の当時ならかつては、戦前の海軍、特攻隊出身の民間航空機パイロットも多かったとのこと。
    民間機を仮想的、標的と想定して自衛隊が訓練していたことなどは、著者の研究考察による興味深いレポートとは別に事実でありこのような前提や背景からの詳細な研究、人命を軽んじなかったか、真実を隠蔽していないか、未来のために開示し反省し改善することはないか、という一貫した姿勢、その迫力に圧倒される。
    都合の悪いことを隠蔽しがちで、隠蔽しやすい土壌がある。マスコミや市民も忖度などという軽々しい言葉使いで、そこに加担しやすい社会が日本にはある。誰かが真実を開示しないだろうか。墓まで持ち込むみたいなことを心に置いたままの関係者はいないだろうか。
    米軍や東京消防庁の救援を政府が断った、とか、総理大臣がそのあたりの経緯を知らぬとか、現場の比較的近くにいながらゴルフとか、今年の正月の能登半島での大地震の対応と似ており、都合の悪いことに向き合わないこの国のやり方は自明となっている。遺族や関係者、救助体制整え待機していた方々、目撃情報墜落地をテレビや警察に連絡した人など無念と悔しい気持ちと察する。マスコミがキャンペーンをしていればとかいろいろ虚しく思う。
    事実の部分と推測推察仮定の部分は気をつけて読んだ。
    それにもまして、
    政府は、公務員は、誰のためにいるのか。自分の立場の都合で嘘をつくことは当たり前だと勘違いしていないか、そのために事実を隠蔽したりそのために人命が失われたりしたかもしれないことを訴える、未来への視線、努力を呼びかける研究、記録である。
    嘘をついているのでは隠していることがあるのではと、思われている政府関係とは異なり、墜落現場近くの、上野村の小学校中学校がそれぞれに独自の判断で、早い時期に体験を子どもたちに書かせた文集が発行されたこと、小さな目は見た、というタイトル。今とは違う教育のレベルを感じる。今は思考力コミュニケーション、双方向、インターアクティブとかいろいろネーミングして教育や入学試験に取り入れているが名前ばかりで商業主義丸出しのものが多いから。

    森永卓郎の 書いてはいけない から、関連書籍として読了。昔読んだ日航社員の山崎豊子の沈まぬ太陽も思い出した

  • 森本卓朗著『書いてはいけない』で紹介されていた本書。すぐに読んでみた。

    事の真偽は今後の推移を見守る必要があるが、本書の著者も、事実を隠蔽することによる国益の心配をしている。

    「国でいえば、ずっと主権や国益を失い続けている状態といえよう。それでは戦後の政治はまったく機能してこなかったということになってしまう。
    これはよく言われるような国の軍隊が強いか弱いかの問題より、むしろ国家間の交渉過程における毅然とした態度そのものが重要なのではないだろうか。矜持ある振る舞いや真摯な態度は驚きと尊敬をもたらし、それが結果的に国益を守ることにもつながる。」

    だとしたら、全てを明らかにして、間違いを正すべきだ。

    「反省なき未来はいずれ崩壊する。」

  • 高品質なルポ。作者の誠実さも伝わってくる。しかしまだ、事件性を疑う本書の主張を呑み込みきれない。確かに疑念を抱かせる証言・物証・状況証拠は揃っているが、この大惨事を政府が偽装・隠蔽するはずがないという微かな希望。そのバイアスが我が目を曇らせる。

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著者プロフィール

元日本航空国際線客室乗務員。国内線時代に事故機のクルーと同じグループで乗務。その後、官公庁、各種企業等の接遇教育に携わり、専門学校、大学講師として活動。東京大学大学院博士課程修了、博士号取得。

「2022年 『JAL裁判』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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