吸血鬼伝説 (河出文庫 く 1-1)

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309472829

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  •  吸血鬼は肉体を持って墓から帰還し、生きている人間の血を吸って生命力を奪う”死者”のことである。
     汎神論信仰の名残であり、吸血鬼となったものが妻だった女性と交わる話は「神々の結婚」に遡れる。
     これらはスラブ圏(東方正教会を振興し、キリル文字を用いる文化圏)ではふつうである。
     彼等の敵は”吸血鬼の子””土曜の子””クルースニック(好意的な守護者、白い羊膜をかぶって生まれた。吸血鬼は赤い羊膜をかぶって生まれてくる)”、ズドゥハチ(死後吸血鬼になるとされる、赤い羊膜をかぶって生まれてきたもの、もともとた情報さんの守護霊や、、血族の守護霊だったと考えられる)
     退治方法はサンザシで心臓を貫くことである。

     人狼信仰はすべてのスラブ民族に見られる。
     吸血鬼と人狼を表す”ヴゴドラク”はもともと「狼の毛皮を着たもの」の意である。オオカミはスラブ民族のトーテミズムをなすとともに、死霊がオオカミにおいて受肉する信仰がもとにあった。
     また、狼は冥界につながるデーモン的動物であり、異界からの夜の訪問者であった。
     「オオカミ人間」とは生きている人間がある機関に変身する伝説である。
     狼の牧者、は粗野で怒りっぽく好色な異教の神々信仰の名残である。

  • 序章:吸血鬼の源郷世界としてのスラヴ世界/第一章:スラヴ吸血鬼信仰/第二章:スラヴ吸血鬼説話/第三章:スラヴ夢魔信仰/第四章:スラヴ死神幻想/第五章:スラヴ人狼伝説/第六章:文学的吸血鬼

  • スラヴの吸血鬼・夢魔・人狼・病魔の説話や言い伝えを収録。

  • おもしろかった。
    特に第2・3章が。

    美形吸血鬼が予言(呪い?)と帽子に鍵隠してて胸の鍵穴で開ける民話がお気に入り。

  • 東欧を中心に民間伝承から吸血鬼の起源に迫る。
    生々しい実体験を集めたオカルト本なので、
    吸血鬼にライトなイメージを持っている人には勧め難い。

    されど、吸血鬼そのものに興味を持ち、
    起源などを辿りたい場合は資料として最適な一冊。
    ―――現世で魔物とよばれた、
    ファンタジーではない吸血鬼を知りたいなら、是非。

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著者プロフィール

1934年、東京生まれ。東京教育大学大学院文学研究科修士課程修了。
東京大学名誉教授。博士(文学)。専攻はスラヴ文献学・スラヴ言語文化論。

著書に『スラヴ吸血鬼伝説考』(河出書房新社)、『スラヴのことわざ』(ナウカ)、『ロシア民俗夜話』(丸善)、『ロシア異界幻想』(岩波書店)、『諺で読み解くロシアの人と社会』(東洋書店)などがある。
訳書にプーシキン『ボリース・ゴドゥノーフ』(『プーシキン全集』第三巻、河出書房新社)、アンドリッチ『呪われた中庭』(恒文社)、ブルリッチ=マジュラニッチ『昔々の昔から』(松籟社)、ポゴレーリスキイ『分身』(群像社)など。

「2018年 『宰相の象の物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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