キリスト教から読みとける世界史: ヴァチカンは歴史に、いかに君臨したか (KAWADE夢新書 406)

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309504063

感想・レビュー・書評

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  • 【概略】
     キリスト教は、いかに誕生し、いかに拡大し、いかに現在の形に至ったか?そこには当然、「世界史」と密接な関連がある。キリスト教が世界史に与えた影響、世界の動きがキリスト教に与えた影響、様々な事柄をキリスト教を主軸に置き、振り返ってみる。

    2020年10月31日 読了
    【書評】
     本当、この種類の本ほど「☆の数が当てにならない」と思う(笑)☆をつける読者の質に帰するところが強いから。そして、この種類の本ほど「ストーリーで語る」ことの重要性をわからせてくれるね。同時に、ストーリーで語ることで、幅広い読者をカバーできる=いわゆる事実の列挙や著者の論のみの記載では、限られた読者にのみ響くものとなる、ってのがわかる。
     まずは純粋な感想ね。「懐かしい!」と「難しい!」という感情が目まぐるしくふりかかる感じの本だった。「カノッサの屈辱、おぉ~!覚えてるわ!」「ミラノ勅令・ニケーアの公会議、あったねー!」「おぉ!フス戦争のヤン・フスって、ミュシャの『スラヴ叙事詩』のヤン・フスか!」「出たコンクラーベ!湿った藁と乾いた藁を燃やすんでしょ?」みたいな感じで、世界史の授業で習った出来事であったり別の場所で覚えた知識であったりが登場すると、なんというか、旧友に出会ったような感じに襲われる(笑)逆に、〇〇3世といった、カタカナで且つ似たような名前が沢山登場することで、「うん?これはさっき出てきた?」みたいな名前の海で溺れてしまう感覚に襲われることも(笑)この点も、読者の質が問われる部分。出来事の羅列になりがちなこういった種類の本において、読者が事前にもってる知識量によってその本の評価が分かれるというね。読者の知識量が鏡のような形で☆の数に表れるという。
     ストーリーで語る、ってことが凄く効果的だなぁと感じたのは、読んでる中で何度か教皇・皇帝・国王・その他キャラクターの感情が反映されるくだりを目にした時。時代考証などの件で批判はあるかもだけど、大河ドラマや中田さんの YouTube が響いてるのはそういったところだよねぇ、きっと。こんなこと書く必要ないかもだけど、事実を正確に描写し、且つそこをストーリーで語ることができると、よりよいのだけどね。
     学生だった頃に「便覧」とかでみたザビエルさんの絵とか見て、「なんかのほのーんとした感じの人だな」なんて思ってたけど、実際にはイエズス会のイケイケぶりなどはこの本を通じて「なるほど!」とか思ったし、マンガ「ヘルシング」で大幅に誇張され、独特のタッチで描かれた最後の戦いの雰囲気は、バチカンやプロテスタントの色分けと凄くリンクした(笑)
     あと、現代に生きる自分達が過去を振り返るのが歴史の面白みの一つだと思うのだけど、なんか笑っちゃったのがイギリス国教会を設立したイギリスの国王ヘンリ8世。なんのことはない、離婚したくてもできないカトリックから離婚できるようにしちゃっただけという(笑)こういう人の業がどんどん読者に伝わると、人って歴史に対して(とっかかりとしては不謹慎かもだけど)興味を増すと思うのだよねぇ。ここでもほら、ストーリー、でしょう?(笑)
     すごく叱られる言い方かもだけど、人の中身が色々と整頓されていく中で、また科学の発達で色々なものが整頓されていく中で、整頓されていなかった時代に大事にされていた宗教というものの変質を目にすることができるね。それでも人は整頓しきれない生き物だから、やっぱりきっと、これからも宗教は人に寄り添っていくのだろうなと。そして、実際に具体的に「寄り添う」を見せてくれたパウルス6世の巡礼などからも、「今のこの時代に、実は重要なんだよ」って事柄を示唆してくれてる。それは作中にもあった昭和天皇の行幸啓にも表れてると思うね。

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著者プロフィール

1961年生まれ。大学卒業後、出版社勤務を経て、現在はおもに歴史ライターとして活躍中。西洋史から東アジア史、芸術、宗教まで幅広い分野に通暁し、精力的な執筆活動を展開。同時に、オピニオン誌への寄稿など、さまざまな情報発信も積極的に行っている。おもな著書に、『「ヨーロッパ王室」から見た世界史』『世界史で深まるクラシックの名曲』『世界史で読み解く名画の秘密』(いずれも青春新書インテリジェンス)、『「半島」の地政学』(河出書房新社)などがある。

「2023年 『世界史を動かしたワイン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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