増補新版 「格差」の戦後史: 階級社会 日本の履歴書 (河出ブックス)
- 河出書房新社 (2013年12月12日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309624662
作品紹介・あらすじ
日本社会はいかにして、現在のようなかたちになったのか――。格差拡大は1980年代に始まり現在も続いている巨大なトレンドであることを実証的に示し、根拠なき格差論議に終止符を打った現代社会論の基本文献。
東日本大震災後、もはや避けては通れない「地域間格差」の戦後史、さらには「若者の貧困」「主婦の変質」をめぐる章を追加した大増補版。
感想・レビュー・書評
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終戦直後から現代まで日本の格差はどうだったかを記す。
これは貴重な資料だ。
当たり前だけど、昔は格差が全くなかったなんてことはなくて、終戦から高度経済成長へとかけて格差は様々に変化していっている。さらにバブル崩壊以降から現在にかけて格差が拡大したのも、ただ景気が悪くなったからではなく社会の構造変化の大きな流れの中の出来事であることが何となく見えてくる。
地方と中央の格差などについてもふれられている。
格差問題を考える上で必読の一冊。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ピケティ「21世紀の資本」の後に読んだ。本書は戦後からを扱っているが、潮流としては日本の格差も一致する。そこに日本独自のもの、例えば戦後の農地改革や財産税で格差が一気に縮小したり、正規/非正規などの雇用形態によって生じる階級など。ピケティと同じく高度成長期の後から現在に至るまでは格差が拡大傾向にある。
本書はデータで事実を示した上で、当時の映画の話題などを織り交ぜ、社会的背景を描写しているのが良い。 -
<内容>
長期統計やSSM調査を下に、日本の格差構造を体系的に明らかにした良書。本書の特徴は、理念型としての「階級」を分析枠組みにした上で、格差構造を長期的なトレンドとして分析している。これによれば80年以降長期的に格差構造が拡大し、90年に入ってからは階級内での上昇も困難になったとされる。
<感想>
以前橋本の作品を読んだときは、「?」と思ったが、本書は「階級」という分析枠組みを用いて日本の格差の実態をマクロデータから明らかにしている。
もっとも「階級」分析にやや限界があるようにも思われる。日本ではどうも社会主義的?な印象をもつ言葉に忌避感があるようだが、タブーにひるまずこうした分析がなされているのは賞賛に値する。 -
戦後60年の格差。所得格差は戦争で大きく低下したがその後上昇、60-80年高度成長期に低下、その後はまた上昇している。80年代以降、出身階級の格差も、固定化・拡大傾向にある。
格差の縮小した高度成長期は、身分が変り得る、戦国時代的な特異状況でもあったと。 -
実は格差拡大が密かに始まっていた80年代、低所得層を置き去りに賃金アップを求め続けた労組≒革新政党への反感が中曽根時代の自民党大勝、民営化政策の流れを作ったという分析には非常に納得。