- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309979762
作品紹介・あらすじ
2019年7月30日発売!緻密で繊細な世界観を描く唯一無二の画家・ヒグチユウコ、初の総特集。描き下ろしカラー作品、2万字ロングインタビュー、最新カラー作品ギャラリー、石田ゆり子/伊藤潤二/吉田戦車との豪華3大対談ほか、大充実の永久保存版。
●巻頭口絵
描き下ろし「ごあいさつカラー作品」6ページ
最新カラー作品ギャラリー 26ページ
●巻頭企画
ヒグチユウコ 2万字ロングインタビュー
●新規対談3本
石田ゆり子×ヒグチユウコ
伊藤潤二×ヒグチユウコ
吉田戦車×ヒグチユウコ
●特別寄稿
宇野亞喜良、大川ぶくぶ、キューライス、諸星大二郎
伊藤理佐、大貫亜美(PUFFY)、鹿児島睦
石黒亜矢子、羽海野チカ、コンドウアキ、名久井直子
藤田貴大(マームとジプシー)、穂村弘
●巻中カラー
「ヒグチユウコ展 CIRCUS」東京会場・世田谷文学館
ショップ&ギャラリー「ボリス雑貨店」紹介
●スペシャルインタビュー
今井昌代(テディベア・ぬいぐるみ作家)
●ヒグチユウコの舞台裏
大島依提亜、名久井直子、庭山貴裕(世田谷文学館)
●全単行本紹介
感想・レビュー・書評
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これまでいくつか彼女の作品を見ているうちに、ヒグチユウコさんって、いったいどんな方なのか、とても興味を持ち、市の図書館で検索して見つけたのが本書(2019年)になります。
総特集という名前の通り、素晴らしきクリエイターの方々が集い、それぞれの目線で語られるものと、ヒグチさん本人へのロングインタビューとが合わさることで、改めて実感したのは、やはり人間とは複雑で奥が深く、一筋縄ではいかない存在なのだということであり、これだけ多様な記事が並ぶことで、それをより感じられたことに加え、人が人を惹き付けるというのは、こういうことなのだなといった、一人の生き方から、更に皆のそれへと広がってゆくような感慨深さも印象的だった。
そうしたこともあり、最初はヒグチさんがどんな画材を使っているのか、ひとつめちゃんは○物といった、ネタばれ的な内容に喜んでいたのが、次第に、作品の内に潜まれた彼女自身の思いやメッセージ、彼女が何故そうしたものを描きたいのかという方向に、私の関心は移行していき、以下、気になったコーナーについて書いていきたいと思います。
「最新カラー作品ギャラリー」
2014~19年までの選ばれた作品から印象的だったのは、ギュスターヴくんの新鮮な困った表情と、抱えられた犬のふてぶてしい表情との対照性が面白い、「犬ひろってしまいました」、同じ目線で向き合う平等性に優しさが滲む「ボールなげしよう」、人魚という、悲しい物語を想起させる幻想的な生き物に描いた心臓のインパクトが、現実に生きている感を激しく引き起こさせる、「人魚の心臓」、ひとつめちゃんの涙を流す姿とその台詞が切ない「眼医者さん」、ヒグチさんの言葉『意中の方のハートも思いのまま!!』が好きな「本屋さん」、等、数え上げるときりがないが、中でも「ナミダ ノ ウミ」は、『目は口ほどに物を言う』を思い切り感じさせた、普段怖いイメージのあるヒグチさんの描いたそれには、確かにそうした感情が宿っているのを実感させられた、目だけで伝わる思いの真摯さが感動的であった。
「ヒグチユウコ 2万字ロングインタビュー」
まず、このコーナーで、ヒグチユウコさんの人となりや、これまで歩んできた人生について知ることが出来たことにより、彼女の作品から放たれる華やかさや美しさの陰には、幼い頃から絶えず繰り返してきたストイックな積み重ねがあったことを実感させられ、彼女が決して才能だけの人では無い上に、それがやりたいことであったことが、私にはとても嬉しかった。
そして、彼女の言葉で特に共感出来たのが、
『自分のことを言葉にしてうまく表現できない』、『自分がやりたい方向がもしあったら、年を重ねてその方向に進めば周囲に理解してくれる人が増えてくる』で、それが『やりたい方向=自分のこと』に思えたことには、どんな事でも、それは自分自身を伝えるということに繋がっていて、そして、それを理解してほしいんだなということに、私のブクログへの思いと重なるなんて書くと、とてもおこがましいが、おそらく私もそれを望んでいるのかなと感じたことには、自分自身を表現するというのは、自分の中だけで完結するわけではないのかもしれない、ということを考えさせられた。
また、そこには、それだけの真剣な思いが宿っていることを実感させられた言葉に、
『自分がそうと決めた時点ですでに画家』、
『描き続ける以外に何もない』があるが、
それを継続させているものとして、
『絵を描くことって、自分としては特別なことではなくて、ものすごく身近なもの』、
『自分以外のものに幸福を求めるんじゃなくて、自分の中で探すことに鍵がある』といった、自然体の中にも、自分自身の内に秘めた可能性を信じることの素晴らしさに、改めて、自分自身と向き合いたくなったことも、私にとっては大きく、新たな視点を頂いた気分であった。
「スペシャル対談 石田ゆり子×ヒグチユウコ」
私が昔からイメージしていた、ちょっとほんわかした感じ、そのままの雰囲気を纏った、石田さんとの対談は、それぞれの飼い猫のエピソードも面白い中、ヒグチさんの『子ども目線で絵本を描いていないので、子ども受けはしない』、『絵本は絵がありきだが、詩でもある』が心に響いたが、私の好きな「ニャンコシリーズ」は、ヒグチさんの息子さんが大切に可愛がっているぬいぐるみが着想源であることを知ったことで、更に生きたいように生きられないもどかしさを実感させられ、特に「いらないねこ」の、本来望んでいるところではない段階で妥協せねばならないような、上手くいかないことのある人生でも如何に自分自身と向き合って、少しでも良い方向を模索して、それに近付くかといったリアル感と、それに付き纏う孤独感にそっと寄り添ってくれる、ヒグチさんの絵は、まさに詩的だと思う。
「スペシャル対談 伊藤潤二×ヒグチユウコ」
共に楳図かずおファンで空白恐怖症の、お二人の対談により、ヒグチさんはホラーものが好きなことを初めて知ったが、そういえばと、前から気になっていたのが、ヒグチさんの手書きのフォントで、あの個性溢れる明朝体は『ヒグミン(ヒグチ明朝)』と呼ばれるそうで、そのどこかホラーチックな感じに納得したが、更に興味深かったのが、ヒグチさんの描いた「ギョ」のオマージュ画の話で、その脚の生えた巨大なサメの目を、伊藤さんは白く、ヒグチさんは黒く描いているのだが、どちらも、理屈ではない本能的な怖さを感じさせられながらも、異なるテイストであるのは流石だと感じ、また、ヒグチさんは普段、何も見ないで描くことが多い中で、若冲の作品は、そのまま若冲の絵を見て描いたことや、猫の毛並みは適当に描いている、といった話も興味深く楽しかった。
「スペシャル対談 吉田戦車×ヒグチユウコ」
ヒグチさんの友達、名久井直子さんを今の仕事に向かわせたきっかけが、戦車さんの『伝染るんです』のブックデザイン(祖父江慎さん)であったことも興味深かった、この対談も面白く、その中でも、戦車さんが驚いた二点、『こんなに原画ちっちゃいんかい!』と、『ひとつめちゃんとかの形を描くことは可能ですけども、魂が描けないっていうか。やっぱりこの描き込みは真似できない』が印象深く、ヒグチさんの、その小さな原画に事細かく精緻に描かれた絵を改めて見てみると、一見、シンプルそうなひとつめちゃんにしても、線に見えるものがブツブツの集まりであったり、影の部分の線の尋常でない描き込み(ハッチングというそうです)であったりと、まるで、そうしたところにまで命を吹き込まないと、ひとつめちゃんは存在しないんだと言われているような描写には、ヒグチさんの表現したいものに対する溢れんばかりの愛情を感じられて、それは上記した「眼医者さん」の絵の、ひとつめちゃんそれぞれが同じようでも、よくよく見ると、それぞれに異なる表情や感情を、主に目と動きだけで表している凄みにも感じられ、おそらくそんな凄みにこそ、戦車さんの仰る魂が宿っているのかもしれないと、私には思われた。
そして、ヒグチさんの描く絵に多いのが、人間と植物、あるいは動物や謎の生命体が混在したものであり、それを見る度に感じるのが、彼女にとって、世界に存在するありとあらゆるものたちは、共に繋がっているのではないかということであり、ときに異質に見えたり、怖さを感じさせることもあるが、それは人間も同様であり、だからこそ、そんな内在した妖しい部分も含めた共同体をリボンで結ぶといった描写には、ありのまま全てを愛したいという、彼女の思いと、彼女自身を理解してくれるものへと擬えたような、他の動植物たちとの融合という形で、共にそこに在りたいという願いが合わさりながらも、どこか不安定な感覚に現実味もあったりといった、その絶妙なバランス感は、彼女が描き込めば描き込む程、より増していくのではないかとも思われた、その複雑さは、まさにヒグチさん自身の言葉に出来ない思いを表しているのではないかと、私には感じられたのである。
「描き下ろし ごあいさつ カラー作品」
絵描きのマネージャー、ボリスと、ギュスターヴくんの共演も嬉しい絵物語は、ヒグチさんの仕事の忙しさをシュールに表しながらも、最後の絵とヒグチさん自身の言葉には、とても切実なものがあるのに思わず笑ってしまった、そこには、仕事に対して妥協のない直向きな情熱と、人の良さや優しさが共存した、この感じがヒグチさんなんだなと実感させてくれたことに、却って胸に迫るものがあり、昨年末から、台湾での初の海外展示も開催されておりますが、くれぐれもお体は大切にされて、これからもヒグチさんの表現したいものを描き続けて下さいねと、願わずにはいられませんでした。 -
迷っていたけれど、買ってしまった。
2万字ロングインタビューも良かったです。
特別寄稿も良かった。
何回も読み返しています。 -
画家でイラストレーターでもあるヒグチユウコの特集本。
描きおろしイラスト、過去作品、本人への2万字ロングインタビュー、石田ゆり子、伊藤潤二、吉田戦車との対談、宇野亜喜良、大川ぶくぶ、、諸星大二郎(!!)らからの特別寄稿他盛りだくさんの一冊。
世の中には、歌を歌うために生まれてきた人、演技をするために生まれてきた人、等生まれた時からある特定の役割を持っている人がいると思っているのだが、ヒグチユウコは間違いなく絵を描くために生まれてきた人のひとりであると本書を読んで確信した。
作品集や絵本を読んでみたくなっただけではなく、彼女の作品やグッズが展示販売されているという、「ボリス百貨店」という店舗にもぜひ行きたい!と強く思った。 -
近所の本屋でずらーーっと
平積みになっている、
文藝別冊 KAWADE夢ムック、
以前、諸星大二郎の特集とか、ジミヘンとか
水木先生とか、プリンスとか、バースタインとか
他にも読んだがポッと出てこない、ともかく
10種類ぐらい平積みになっていて、
その中の、
クリントイーストウッド同時代を生きる英雄
というのにグワッと目をもっていかれ、
手に取ろうかと迷った瞬間、
その3つ隣にあった本書に心をインターセプトされて
迷わず手にとってレジにもっていきました。
とってもお手軽価格でかなりの充実度なので、お得感高いです。
なんとなく、チラ見もせずに買ってきましたが、
大正解でした。
めちゃくちゃ素敵です。
読むところも多くて、非常に満足。
ヒグチ画は文句なくすばらしいんだが、
私的にはフォントがツボでねぇ。
たまりませんな。 -
面白い人には面白い人が集まるんですね
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ヒグチさんのことを「なんかそういう生きもの」と表現していた人がいて、知らない人なのに腑に落ちたかんじがした。(藤田貴大さんだ、この人の文章もよかった。)
絵を描かずにはいられない、呼吸するように、おしゃべりするように手を動かすのだろうな。
そこまで打ち込めてやりきれるものがあることを羨ましく思う。
対談も良かったし、話の中で出てくる本どれも気になった。 -
SOLD OUT
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『総特集 ヒグチユウコ ―指先から広がる魔法―(2019) 』を読了。
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もっと早く興味を持っていたら世田谷の展覧会に行ったのに…。残念でならない。ボリス雑貨店行ってみたい!
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ヒグチユウコワールドがこの一冊でかなり把握できるムックとなっている。前半(31頁)まではカラーで少し絵が載っている。
このムックは、ヒグチユウコの絵を観るものではなく、あくまで彼女と仕事仲間の人々との会話(インタビュー)を聞くものである。読了後は、なるほど彼女はこういうものが好きで影響を受けて活動してきたんだなというほんの少し、作者の生活感や性格がわかる本となっている。
ヒグチユウコが好きな人、ヒグチユウコがどんな人か気になる人は、見て損はないだろう。 -
7/30発売決定!
ヒグチユウコさんの総特集&決定版!
ファン必見!描き下ろしカラー作品、2万字ロングインタビューなど盛りだくさん!
ヒグチユウコさん!!
この表紙、目を引きますよねぇ(*'▽')
こちらの図書館にはないけど、
読みた...
ヒグチユウコさん!!
この表紙、目を引きますよねぇ(*'▽')
こちらの図書館にはないけど、
読みたいなぁ…とは思ってたんで
たださんのレビューが読めてよかったです。
コメントありがとうございます(^^)
表紙、フリーマーケットのような雰囲気がいいですよね♪
本書には2013~...
コメントありがとうございます(^^)
表紙、フリーマーケットのような雰囲気がいいですよね♪
本書には2013~19年までの、ヒグチさんの全単行本リストが載っているのですが、私の住む市の図書館にも無いものがありまして、「BABEL」とか見たかったのですが、残念です。
それからレビューについては、特別寄稿も書きたかったのですが、文字数が更に増えていく一方なので、限られたものだけ書いたのですが、そう仰って下さると嬉しいです。
ありがとうございます(^∇^)