赤を見る: 感覚の進化と意識の存在理由

  • 紀伊國屋書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (172ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314010177

作品紹介・あらすじ

脳科学や心理学がいくら進歩したといっても、「視覚のクオリア」という用語が示すように、「私たちはいったい何を見ているのか」を記述しようとすれば、たちまち言葉に詰まり、立ち往生してしまうだろう。本書は、才気あふれる進化心理学者が、「赤を見る」というただひとつの経験にしぼり、この難題に挑んだ野心作である。「赤を見ている心」をどう記述すればよいのか。あなたの見ている赤と私の見ている赤は同じものか。赤の感覚と、感情や知覚との関係とは?相手と分かりあえる共感は最近注目のミラーニューロンの仕事?さらには、感覚と心の進化の物語をたどり、「意識の迷宮」へと問いを進めていく。問いを詰めていった先に著者が見出した意識の存在理由をめぐる結論は、「コロンブスの卵」的なものであった。意識は、この人生を生きることが大切で有意義なものであると思わせるべく存在し(だからこそ「他者の自己」を尊重する気持ちも生じ)、そのために不可解な性質を持たねばならなかった、と。スリリングで示唆に富む心の哲学・心理学の一冊。

感想・レビュー・書評

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  • Seeing Red/感覚論Memo-  2009.02.19記

    ◇自分自身において、局所的になにが起きているか、を問うときに求められる答えは定性的で、現在時制で、一過性で、主観的なもの-<a>
    ところが、外の世界でなにが起きているか、を問えば定量的で、分析的で、恒久的で、客観的なもの-<b>
    この<a>と<b>の分離、感覚=<a>と知覚=<b>は、別個の道筋をたどって進化してきた。
    ◇反応-感覚的な活動は、長い進化の歴史の中で、まるごと脳内に「潜在化-Privatise-」された。
    ◇感覚は、気分の変化や幻覚剤に影響を受ける。
    -メスカリンやLSDのような幻覚性の薬物は、知覚にはほとんど影響を与えないのに、感覚経験の質を変える。鬱状態のような内因性の気分の変化も、同じように感覚経験の質を変える。ときには、感覚が完全に自己生成する場合もある。
    -幻覚や夢の中で、鮮明な心像の核を成しうる人は、夢の中で感覚を作り出せ、それは現象的にとても豊かなものである。
    さらに、感覚は、他者の精神状態をSimulationする能力の鍵となる役割を果たしている、とも考えられる。実際、身体表現としての感覚は、投影的な共感に、お誂え向きのように思える。
    ◇意識には時間の「深さ」という特異な次元がある。
    -現在という瞬間、感覚にとっての「今」は「時間的な厚み」をもって経験される。
    -現在の経験には少なくとも二つの異なる時間が含まれるため、人はこれを、瞬間的に切り取った時間としてではなく、ひろがりのある時間、すなわち「今」と「今でない」要素の両方が統合された即時的な表象として経験する。-N.Newton
    -ひろがりのある現在-「意識の厚みある瞬間」

  • 『喪失と獲得』はそれなりに難解だったものの、こちらは講演を基にしている点と、『喪失と獲得』以上に回りくどさがないためかなり読みやすい。

    「痛みや気分や願いが、それを抱く人間なしに、勝手に世界をうろつくなどというのは、不条理に思える。経験は経験者無くしてはありえない」といった感じで理解もしやすい。

    『赤を見る』なんてタイトルだけだと80年代っぽくてちょいダメ本な感じがするんだけど、(フッサールの)現象学のおさらいとして、または予習として読むのにいいかも。

  • 2004年にハーバード大学で行った「赤を見る」という講義が本になった。内容自体は「感覚」の正体についてというなかなか難しいテーマを本題にしているが、実際の内容もやっぱり哲学的で難しい。でも講義では話し上手なのか、絵や文に引き込まれてわくわくしながら一気に読んでしまう本である。(第2閲覧室 141.21/H)

  • 難しくてよくわからない。認知心理学の本?

  • 「意識とはいったい何か」という疑問に対し、「赤いスクリーンを見る」というごく単純な行為を突き詰めて考えることで、真相に迫ろうという、面白い著。

    赤色を見ることで生まれる感覚・知覚と、それらを「主体として自覚する」という一連の意識について、思考を促してくる。
    そもそも感覚ってなに?知覚との関係性って本当にあるの?などと問いを掘り進め、感覚というものが、意識にとってどのような意味合いを持つのか、という方向に進んでひとまずの締めとなる。

    感覚経験とニューロン活動の「次元」を問い直すなど、着想がとにかくユニークだった。

    本の装丁がシンプルに内容を表現していて心憎い。
    読んでいて分かりづらいところが多かったが、理解出来るところはとても興味深かった。引用も多く、それらの著作にも手を出してみようかと思った。

    ・意識の定義「いわく言い難いもの」
    ・「赤をみるという行為=赤すること」その主体の経験を形作る4つの要素
    ・盲視から分かる、感覚と知覚の非連鎖
    ・知覚の拠り所でない感覚の存在意義
    ・意識のなかでの「時間の厚み」と、それによって「その特別な時間を感じている私」という、 主体としての確固たる実体性

  • 先に読んだ『ソウルダスト』の意味が今ひとつ分からないので、先行するこちらを読んでみた。ソウルダストに引き続き、よくわからない。あとがきでみると、講演をまとめたとある。そのせいかもしれないが、話が冗長で知識が後半にわたるため、どうも全体像が捉えられない。続きはブログ→http://hiderot.blogspot.jp/2012/07/blog-post_08.html

  • ときどき著者の言い回しに外国人臭さを感じる違和感(翻訳のせいか?)を除けば、内容そのものはとにかく面白い。

  • もう、4回くらい読み返さないといけない。
    や、それじゃ足りません。
    生きながら、実感を得ていきたいです。

  • 良書。
    一冊推薦せよ、と言われたら候補の一冊として検討リストに入れたい。
    認識するということを、文字のみならず、配色など5感で味あわせてくれる。

  • むかーし思った。「自分の見てるこの世界の色は、みんなが見てる色と、果たしてホントに同じ色なのだろうか」きっと同じような事考えてる人結構いるんだろうな、と再確認。内容は認知心理学のカタい感じだけど、じっくりと、面白い。装丁もとてもよい。

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