中古典のすすめ

著者 :
  • 紀伊國屋書店
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本棚登録 : 248
感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314011525

感想・レビュー・書評

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  • 本書で取り上げられた著作で読んだことのあるのは、高野悦子「ニ十歳の原点」・片岡義男「スローなブギにしてくれ」・森村誠一「悪魔の飽食」・村上春樹「ノルウェイの森」・吉本ばなな「キッチン」。その他読んだ事は無いが、名前は知っている著作は多かった。

    以下、引用
    ●中古典とは中途半端に古いベストセラー(中略)小説、エッセイ、ノンフィクション、評論など、本の種類は雑多である。ただ、48冊を年代順にたどっていくと、繰り返し登場してくる「お決まりのジャンル」がいくつかあることに気がつくはずだ。
    ●若者たちの生態を映す青春小説
    ●「自立の時代」の女性エッセイ
    ●反省モードから生まれた社会派ノンフィクション
    ●懲りずに湧いてくる日本人論
    ●中古典をいまも読む価値はある?(中略)中古典の時代と現在は、地続きのようで、隔たりも大きい。特に異なるのは経済状況だ。バブル崩壊後、日本経済は長い低迷の時代に入り、デフレ不況が続いて雇用が悪化。「一億総中流社会」は「格差社会」にとって代わった。冷戦が終結し、世界情勢も東アジア情勢も変わった国内政治も二転三転し、2012年末には改憲を悲願とする第二次安倍晋三政権が発足。長期政権の下で政治への信頼は低下し、民主主義の危機まで叫ばれている。20世紀に比べれば人権意識が上がった反面、負の歴史を封印する動きが加速し、インターネットの普及で、出版界も苦境に立たされている。

  • ベストセラーとは、その時代を残酷なまでにうつし出すものだな、と思った。著者の言う古典になる前の中古典。時間的にまだそこまで遠くないというだけに、おぼろげながらでも、その時代と切り離して考えることができないのだ。昭和って、俺子どもだったけど、覚えてることあるものなぁ。

     遠藤周作の『わたしが・棄てた・女』とか、井上ひさしの『青葉繁れる』とか、その他の作品も、昭和の青春ものって、女性蔑視が激しく、しかもそこでとられる行動が、女性を下にみているという認識がない。それだけにたちが悪く、かつ今からみると阿呆にみえる。そのあたり、斎藤氏の筆致は相当に手厳しい。意外なことに俺の高校時代、「フランス書院かよ」と友だちとゲラゲラ笑いながら読んだ「ノルウェーの森」についてはポルノ的な描写は多いとしつつも、女性蔑視とはしてなかった。

     『桃尻娘』『窓際のトットちゃん」『兎の眼」など、タイトルだけは知ってるし、持ってる本もあるけど、読んでない。いずれ読んでみないといけないな、と思えたね。

     レビュー本として、実際に手に取ってみようと思える本もあり、文章が面白いだけでなく、実用的な本でもあったな。

  • この世のすべての本を1人で読むことはできない。
    だから、読むべき本はしっかり選ばないといけない。
    とはいえ、有名な古典を読むべし!といわれても、もうすっかり価値のない本だってあるはずだ。そこをしっかり評価してくれる本書は貴重なガイドだ。以前、福田和也氏が書いた「作家の値うち」のような。
    著者のいう「中古典」とは、「古典未満の中途半端に古いベストセラー」とのこと。その射程はいかほどだろうか。客観的な価値としての名作度と、主観的な使える度の二つの指標で紹介していく。
    未読で気になったのは「橋のない川」「日本沈没」「自動車絶望工場」「スローなブギにしてくれ」「悪魔の飽食」あたりかな。
    青春小説をばっさりやってしまう手際も見事だ。「若くして死んだ女を生き残った男が回想する」という日本文学が伝統的に採用してきた物語のパターン(p49)などと。野菊の墓、風立ちぬ、セカチュー、そして「ノルウェイの森」・・・。読まなくていい本が分かるのも、本書の素晴らしいところだ。時間を無駄にせずにすむ。

  • 九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1371872

  • 019-S
    閲覧

  • 「中古典」として紹介されている全48冊のうち、はたしてどれだけの本が「古典」として残っていくのだろうか(残念ながら1冊もないような気がする)。
    書物という物も、それぞれの時代の空気をしっかり反映しているものなのであろう。しかし、それらの膨大な書物群の中から、「古典」として後世に残っていくものというのは、ほんとうに極めて限られたものしかないのである。

  • 中古典とはなんぞや?というと、一昔以上前のベストセラーで、古典となる作品候補であるそうな。簡単に言えばブックオフに行けば100円で売られてるようなラインナップである。
    書名だけからはとても手に取る気がしないので、このままだと一生中身もわからずじまいだったのが、本書のおかげで「あ、トットちゃんてそんな本だったのか!」と気づくことができたのは良かったです。ただ書名は「すすめ」となってるけど、むしろdisり気味の方が多いかもしれない。たまたま、一つ前に読んだ中年の本棚と同じ紀伊国屋scripta連載コラムでした。

  • ひと昔前のベストセラーを、名作度、使える度で3段階評価。
    つくづく私は、ベストセラーをリアルタイムで読んでいないことと痛感する。
    読んだ本はことごとく周回遅れだもんなあ。

    『橋のない川』住井すゑ
    『江分利満氏の優雅な生活』山口瞳
    『白い巨塔』山崎豊子
    『天国に一番近い島』森村桂
    『赤ずきんちゃん気をつけて』庄司薫
    『「甘え」の構造』土居健郎
    『日本沈没』小松左京
    『兎の目』灰谷健次郎
    『知的悪女のすすめ』小池真理子
    『窓ぎわのトットちゃん』黒柳徹子
    『気くばりのすすめ』鈴木健二
    『良いおっぱい 悪いおっぱい』伊藤比呂美
    『キッチン』吉本ばなな

    48冊のベストセラーの中でこれしか読んでいないうえに、自分からリアルタイムで読んだのは『窓ぎわのトットちゃん』だけかも。
    『天国に一番近い島』と『「甘え」の構造』は友達から、『気くばりのすすめ』は父から、『キッチン』は上司から勧められて借りたもの。

    片岡義男とか田中康夫なんかはこの先も読まないような気がするけど、ベストセラーにはきっと意味があると思うので、いつか機会があればこの中の未読の本も読むかもしれない。
    そんな時に目安となるのが「使える度」
    当時は売れても、今の時代には合わない作品もありますから、参考にさせていただきます。

  • どれもなんらかの身に覚えのある(めくった、買った、読んだ、あるいは図書館や書店で見た、一度は手に取った、など)本で、ナルホドーとかフムフムとか思いながら面白く読んだ。
    でも浅田彰『構造と力』はたぶん今読んでも、私にはなんにもわからないだろうな、ということがわかった。逆に、これは再読してみようかなと一番思ったのは田辺聖子『感傷旅行』。

  • 一昔前のベストセラーを改めて紹介・評価するというなかなか面白い企画。過去に読んだのは柴田翔『されどわれらが日々―』(大学時代に先輩に貸されてやむなく読むもよくわからなかった)、中野孝次『清貧の思想』(これは途中でつまらないので放棄だったかな?)ぐらいという私にはうってつけの本かも。あ、小松左京『日本沈没』のコミカライズしたものを昨年読んだか。
    過去のベストセラー本がどんな内容だか知ることができたのは良かった。さて、改めて読みたい本というと『どくとるマンボウ』のシリーズぐらいかな。評価は高くてもめんどくさい本は今更読む気はしないし。あと、堀江邦夫『原発ジプシー』がちょっと気になったので、簡略版に水木しげるの絵が入ったという『福島原発の闇』を購入してみた。

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著者プロフィール

1956年新潟市生まれ。文芸評論家。1994年『妊娠小説』(筑摩書房)でデビュー。2002年『文章読本さん江』(筑摩書房)で小林秀雄賞。他の著書に『紅一点論』『趣味は読書。』『モダンガール論』『本の本』『学校が教えないほんとうの政治の話』『日本の同時代小説』『中古典のすすめ』等多数。

「2020年 『忖度しません』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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