- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784314011525
感想・レビュー・書評
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本書で取り上げられた著作で読んだことのあるのは、高野悦子「ニ十歳の原点」・片岡義男「スローなブギにしてくれ」・森村誠一「悪魔の飽食」・村上春樹「ノルウェイの森」・吉本ばなな「キッチン」。その他読んだ事は無いが、名前は知っている著作は多かった。
以下、引用
●中古典とは中途半端に古いベストセラー(中略)小説、エッセイ、ノンフィクション、評論など、本の種類は雑多である。ただ、48冊を年代順にたどっていくと、繰り返し登場してくる「お決まりのジャンル」がいくつかあることに気がつくはずだ。
●若者たちの生態を映す青春小説
●「自立の時代」の女性エッセイ
●反省モードから生まれた社会派ノンフィクション
●懲りずに湧いてくる日本人論
●中古典をいまも読む価値はある?(中略)中古典の時代と現在は、地続きのようで、隔たりも大きい。特に異なるのは経済状況だ。バブル崩壊後、日本経済は長い低迷の時代に入り、デフレ不況が続いて雇用が悪化。「一億総中流社会」は「格差社会」にとって代わった。冷戦が終結し、世界情勢も東アジア情勢も変わった国内政治も二転三転し、2012年末には改憲を悲願とする第二次安倍晋三政権が発足。長期政権の下で政治への信頼は低下し、民主主義の危機まで叫ばれている。20世紀に比べれば人権意識が上がった反面、負の歴史を封印する動きが加速し、インターネットの普及で、出版界も苦境に立たされている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ベストセラーとは、その時代を残酷なまでにうつし出すものだな、と思った。著者の言う古典になる前の中古典。時間的にまだそこまで遠くないというだけに、おぼろげながらでも、その時代と切り離して考えることができないのだ。昭和って、俺子どもだったけど、覚えてることあるものなぁ。
遠藤周作の『わたしが・棄てた・女』とか、井上ひさしの『青葉繁れる』とか、その他の作品も、昭和の青春ものって、女性蔑視が激しく、しかもそこでとられる行動が、女性を下にみているという認識がない。それだけにたちが悪く、かつ今からみると阿呆にみえる。そのあたり、斎藤氏の筆致は相当に手厳しい。意外なことに俺の高校時代、「フランス書院かよ」と友だちとゲラゲラ笑いながら読んだ「ノルウェーの森」についてはポルノ的な描写は多いとしつつも、女性蔑視とはしてなかった。
『桃尻娘』『窓際のトットちゃん」『兎の眼」など、タイトルだけは知ってるし、持ってる本もあるけど、読んでない。いずれ読んでみないといけないな、と思えたね。
レビュー本として、実際に手に取ってみようと思える本もあり、文章が面白いだけでなく、実用的な本でもあったな。 -
この世のすべての本を1人で読むことはできない。
だから、読むべき本はしっかり選ばないといけない。
とはいえ、有名な古典を読むべし!といわれても、もうすっかり価値のない本だってあるはずだ。そこをしっかり評価してくれる本書は貴重なガイドだ。以前、福田和也氏が書いた「作家の値うち」のような。
著者のいう「中古典」とは、「古典未満の中途半端に古いベストセラー」とのこと。その射程はいかほどだろうか。客観的な価値としての名作度と、主観的な使える度の二つの指標で紹介していく。
未読で気になったのは「橋のない川」「日本沈没」「自動車絶望工場」「スローなブギにしてくれ」「悪魔の飽食」あたりかな。
青春小説をばっさりやってしまう手際も見事だ。「若くして死んだ女を生き残った男が回想する」という日本文学が伝統的に採用してきた物語のパターン(p49)などと。野菊の墓、風立ちぬ、セカチュー、そして「ノルウェイの森」・・・。読まなくていい本が分かるのも、本書の素晴らしいところだ。時間を無駄にせずにすむ。 -
九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1371872 -
019-S
閲覧 -
「中古典」として紹介されている全48冊のうち、はたしてどれだけの本が「古典」として残っていくのだろうか(残念ながら1冊もないような気がする)。
書物という物も、それぞれの時代の空気をしっかり反映しているものなのであろう。しかし、それらの膨大な書物群の中から、「古典」として後世に残っていくものというのは、ほんとうに極めて限られたものしかないのである。 -
中古典とはなんぞや?というと、一昔以上前のベストセラーで、古典となる作品候補であるそうな。簡単に言えばブックオフに行けば100円で売られてるようなラインナップである。
書名だけからはとても手に取る気がしないので、このままだと一生中身もわからずじまいだったのが、本書のおかげで「あ、トットちゃんてそんな本だったのか!」と気づくことができたのは良かったです。ただ書名は「すすめ」となってるけど、むしろdisり気味の方が多いかもしれない。たまたま、一つ前に読んだ中年の本棚と同じ紀伊国屋scripta連載コラムでした。 -
どれもなんらかの身に覚えのある(めくった、買った、読んだ、あるいは図書館や書店で見た、一度は手に取った、など)本で、ナルホドーとかフムフムとか思いながら面白く読んだ。
でも浅田彰『構造と力』はたぶん今読んでも、私にはなんにもわからないだろうな、ということがわかった。逆に、これは再読してみようかなと一番思ったのは田辺聖子『感傷旅行』。 -
一昔前のベストセラーを改めて紹介・評価するというなかなか面白い企画。過去に読んだのは柴田翔『されどわれらが日々―』(大学時代に先輩に貸されてやむなく読むもよくわからなかった)、中野孝次『清貧の思想』(これは途中でつまらないので放棄だったかな?)ぐらいという私にはうってつけの本かも。あ、小松左京『日本沈没』のコミカライズしたものを昨年読んだか。
過去のベストセラー本がどんな内容だか知ることができたのは良かった。さて、改めて読みたい本というと『どくとるマンボウ』のシリーズぐらいかな。評価は高くてもめんどくさい本は今更読む気はしないし。あと、堀江邦夫『原発ジプシー』がちょっと気になったので、簡略版に水木しげるの絵が入ったという『福島原発の闇』を購入してみた。