- Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
- / ISBN・EAN: 9784314011785
作品紹介・あらすじ
死を悼み、不公平を嫌悪し、喜びをわかちあう。
情動は、いわば臓器のようなものだ――霊長類の社会的知能研究の第一人者が満を持して動物の情動を語る。
ニューヨークタイムズ・ベストセラー。ユヴァル・ノア・ハラリ、ロバート・サポルスキー、デズモンド・モリス推薦!
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Amazon Best science books of 2019に選出!
PEN / E.O. Wilson Literary Science Writing Award 受賞作!
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情動は、いわば臓器のようなものだ。
わたしたちはそのいっさいを他の哺乳動物と共有している。
そのすべては、われわれの社会的な営みに不可欠なものだ。
仲間の苦しみを取り除くラット、パートナーの死を嘆くカラス、恩を忘れないチンパンジー……
人間だけが豊かな情動をもつという証拠は、なにもない。
心理学との境界を行く独自の動物研究分野を切り拓いてきた著者が、長らく科学界でタブーとされてきたテーマを満を持して語る。
前作『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』の姉妹篇となる、ドゥ・ヴァール最新作。
驚きのエピソード満載、著者自身の手によるイラスト多数。
感想・レビュー・書評
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霊長類の社会的知能研究で世界の第一人者として知られる、動物行動学者のフランス・ドゥ・ヴァール。彼は研究のかたわら、一般向けの科学啓蒙書をたくさん出してきた。
私もそのうちの数冊を読んだが、どれも面白い。上品なユーモアをたたえた語り口で、動物行動学の最先端を教えてくれる、極上のサイエンス読み物なのだ。
最新作の本書もしかり。
今回のテーマは、動物の「情動(Emotion)」。動物の世界にも人間同様のさまざまな情動(たとえば、利他心、羞恥心、嫌悪感、権力欲、「死の最終性」の感覚など)があることが、著者自身や他者の研究から明かされていく。
タイトルの「ママ」とは、著者が研究で長年つきあったチンパンジーのアルファメス(最上位のメス)の名。彼女の最期をめぐる感動的なエピソードが、本文で紹介される。
ただし、チンパンジーの話ばかり出てくるわけではなく、さまざまな動物が俎上に載る。
動物たちの〝情動エピソード〟の数々を読んでいるだけで楽しいが、それ以上に、我々人間についても多くの示唆を与えてくれる内容だ。
動物と人間の共通性を探ることを通じて、「人間らしさとは何か?」を考察する書でもあるからだ。
たとえば、我々が周囲の期待に応えられなかったときに感じる羞恥心の起源を、著者は動物が強者に対して見せる服従の中に見いだす。
試合に敗れた選手がガックリ肩を落として身を縮め、うなだれる――あれの原型は動物の「服従のポーズ」だというのだ。なるほどなるほど。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
動物に様々な情動が存在するという事例が挙げられている。
アルファオス中心に揉め事を暴力で解決するチンパンジーと、アルファメス中心に揉め事をSEXで解決するボノボ。どちらが倫理的に優れているという議論は不毛だが、どちらの種も今日まで進化の末端に存在していることが面白い。
人類史は戦争史とも言い換えることができるようにヒトは明らかにチンパンジー寄りで、それ故生き残り、テクノロジーが発展し現在の姿があるとは思う。しかしボノボ寄りの種がヒトに替わり文明を持ったらどうなってたか想像してしまう。 -
動物も人間とほぼ同じ脳含めた身体を持っているので。程度の差こそあれ、人間が保有する情動は、動物も同じように保有していることを生物学的に証明した書籍。
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「情動は本能が司り、感情は自我から生まれる」と考えてよさそうだ。脳の部位も異なっており、情動は大脳辺縁系(脳心note)で、感情は扁桃体と前頭前野が担う(とれぴく)。大脳辺縁系の扁桃体は快・不快を判断する(【本能的な情動】大脳辺縁系の扁桃体をわかりやすく解説!)。
https://sessendo.hatenablog.jp/entry/2023/02/01/164809