〈叱る依存〉がとまらない

著者 :
  • 紀伊國屋書店
4.23
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本棚登録 : 1282
感想 : 106
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314011884

作品紹介・あらすじ

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【精神科医・松本俊彦氏 推薦!】
(『誰がために医師はある――ヒトとクスリの現代論』著者)

「殴ってもわからない奴はもっと強く殴ればよい?――まさか。
それは叱る側が抱える心の病、〈叱る依存〉だ。
なぜ厳罰政策が再犯率を高めるのか、なぜ『ダメ。ゼッタイ。』がダメなのか、
本書を読めばその理由がよくわかる」
--------------------------------

あなたが「叱る」のは何のため?

叱ったり罰したりすることで、人は自分のニーズを満たしている――
実は、叱るという行為には依存性があり、エスカレートすれば〈叱る依存〉と呼ぶべき状況におちいってしまうのだ。

「叱る」ことが相手に学びを促す効果は、一般に考えられているよりもずっと薄い。相手の成長のためにならないばかりか、叱る側・叱られる側の両方に大きな弊害をおよぼしている。
児童虐待、体罰、DV、パワハラ、理不尽な校則、加熱するバッシング報道……
人は「叱りたい」欲求とどう向き合えばいいのか?

叱るというありふれた行動のメカニズムを、神経科学や心理学の知見から明らかにする。叱られて育ってきたすべての人が認識を改め、「叱る」とうまくつきあっていくための一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 5552さんのレビューを拝見して手に取った作品。
    5552さん、興味深い作品をありがとうございました!!

    ここでも何度か描いているけれど、現在精神保健福祉士の資格取得を目指して、通信の学校に通っている。
    これまで読書や映画やお酒(!)に費やしていた時間を、勉強に充てないといけなくなった。
    せっかく入ってるアマプラ。だけど今は映画を観る時間を作れそうにない…
    そしてお酒も毎日飲んでいたけれど、最大で週3くらいになるように頑張って減らしてる。
    でも、「読書」だけは、その時間だけは守りたい。
    これまで小説を中心に読んできて、ときどき新書とか自己啓発系とか社会派を読んできたけれど、結局やっぱり小説が好きだ。
    だけど、やはり子どもに関する最新研究の本とか、脳に関する本とか、ジェンダーの本とかは気になってて、その都度本棚登録はしてきたけど、結局積読化してて。
    今年は資格取得に向けて最新の研究データや社会情勢を頭に入れたいし、もっともっと自分を掘り下げていきたいし、馴れ合いになってきた子どもとの関係をもっと見つめ直したい!
    だからこれからは、「こっち系」の作品をもっともっと読んでいきたいんだ!!

    「叱る依存」
    これは、言われてハッとした。
    わたし自身は子どもは居ないけれど、日常的に関わる子どもに、「叱る」まではいかなくても、つい言葉が荒くなってしまうことはあるし、イライラしていると言葉が強くなってしまう。反省しかない。

    子育て、夫婦間、職場、学校、スポーツ指導など、様々な面で「叱る」「叱られる」という構図が存在する。
    これは人と関わる誰もが読むべきで、特に「叱る」ことでしか指導しないマナー講師とかにも是非読んでいただきたい作品だ、と個人的には思う(ちなみにわたしは、あんなに怒られるくらいならマナー悪くてもいいやと思ってしまった)。

    ここに描かれている研究結果は結構衝撃的で。
    薬物依存を減らすために、あえて薬物所持を非犯罪化した取り組みを紹介したり、叱るという行為を依存症の一つとして捉え、脳の仕組みからわかりやすく説明してくれたり。

    叱られた時に反応する脳の偏桃体。ここは特に恐怖や不安などのネガティブ感情に強く反応する。ここで強く反応が起こると、知的な活動に必要な前頭前野の働きが低下してしまうので、結局ただ恐怖を与えられるだけで何も学べず、その後もただ恐怖(叱られること)を避ける、ということを学ぶにすぎない。

    何度も繰り返し読みたい自戒の一冊。

    • naonaonao16gさん
      みんみんさん、初めまして!
      コメントありがとうございます^^
      とても嬉しいです!!

      息子さん、大変でしたね。
      かなり過酷な環境で働かれてた...
      みんみんさん、初めまして!
      コメントありがとうございます^^
      とても嬉しいです!!

      息子さん、大変でしたね。
      かなり過酷な環境で働かれてたんですね。叱る人は、叱りやすい人を意識的になのか無意識的になのか、上手に選びます。
      そして、選ばれるのは、断れない・優しい・自責的な方だと思います。上手に「あれ?こっちが悪いの?」と思わせてくるんですよね。息子さん、とても優しい方なんだろうなぁ、と想像します。
      みんみんさんは、息子さんの味方になってくれる、素敵なお母さまですね!
      息子さん、回復されたみたいでよかったです!どうか、ご自身を責めないでとお伝えください。
      わたしは例えばそうやって誰かが叱られている時や注意されている時、うまくサポートできないんです。それが悩みです。

      またいつでも遊びにいらしてください^^
      2022/09/09
    • みんみんさん
      お返事ありがとうございます♪
      資格取得頑張ってくださいね!
      また興味深い本のレビュー楽しみにしてます(^^)
      お返事ありがとうございます♪
      資格取得頑張ってくださいね!
      また興味深い本のレビュー楽しみにしてます(^^)
      2022/09/09
    • ゆうきさん
      こんにちは、naonaonaoさん♪
      鏡の孤城でいいねを一番頂いていたので興味を持ち本棚を見てみたのですがちょうど父が持っていた本を登録し...
      こんにちは、naonaonaoさん♪
      鏡の孤城でいいねを一番頂いていたので興味を持ち本棚を見てみたのですがちょうど父が持っていた本を登録していたのでレビューを見ました5552さんのレビューを見てこの本を読んだのかもしれないと思ったので5552さんのレビューも見てみます!
      レビューを書いていただきありがとうございます。勉強になりました!
      2023/01/09
  • タイトルにハッとしたら読んだ方がいい一冊。

    でも、ホントに読んでほしい人はきっと手に取らない。…という「あるある」がありそうでもある。
    私は子供も部下もおらず、どちらかというと叱られるほうが多くて、叱ることは少ない、と思うんですが、読んで良かったです。

    ★きつく叱られた経験がないと打たれ弱くなる。
    ★理不尽を我慢することで忍耐強くなる。
    ★苦しまないと人は成長しない。
    …こんな風に思っている人は要注意!…本のそでより。

    ↑私もこう思っていました。

    結論から言うと、「叱る」に効果はほとんどない。
    叱られる側を疲弊させ、叱る側を依存状態に陥らせることもある。
    じゃあ、どうしたらいいの?と、途方にくれた人に最終章に依存を予防する処方箋、アドバイスが書かれている。

    叱っている人は叱る相手の「あるべき姿」を決め付けている、という言葉には、なるほどな、と。

    あと、興味深い発見があるそうだ。
    ちょっと長いけれど抜粋。

    「例えば、脳・神経科学の発展で得られた大きな発見の一つに、わたしたちがどうやら【バーチャルリアリティー(仮想世界)】を、現実世界と認識して生きているらしい、ということがあります。実は、私たちは『ありのまま』を見てません。目から脳に送られた視覚情報は、脳内でまず【形】【色】【動き】【傾き】【奥行き】などの特徴ごとにバラバラに分解されて処理されていることがわかっています。まず要素を細分化して認識し、その後脳内で組み立てて映像化しているのです。私たちは【脳が作り上げた映像】を、それが目の前の現実であると信じて日々の生活を送っています。つまり同じ場所にいて同じものを見ていたとしても、私とあなたが【同じ映像】を見ている保証はないということです。みんなそれぞれ、自分の脳が作り上げた世界を【現実】だと信じて生きています。」p176,177

    …うむ、見えている世界の解釈の違いということではなく、その見えている世界すら違うということか。【人と人は違う世界を生きている】って比喩的に言われることも多いけれど、脳・神経科学的にそれが明らかになりつつあるという事だろうか。SFなら既知の概念かもしれませんがね。例えば、あの人やその人と見えている世界を交換したらさぞやビックリするでしょうね。

    • 夜型さん
      これ、観てみて下さい。
      https://m.youtube.com/watch?v=e_dUu5Behyw
      これ、観てみて下さい。
      https://m.youtube.com/watch?v=e_dUu5Behyw
      2022/05/05
    • 5552さん
      夜型さん

      ええ、お堀の太った鯉のように食いついてしまいました。
      あらためて指摘されると恥ずかしいです…。

      リンク先、観てみまし...
      夜型さん

      ええ、お堀の太った鯉のように食いついてしまいました。
      あらためて指摘されると恥ずかしいです…。

      リンク先、観てみました。
      夜型さんが前に仰られた、「ぜんぶ、自分なのです」に通じるお話なのだと感じました。
      ご紹介ありがとうございました。
      為になりました。
      2022/05/06
    • 夜型さん
      コニーさん

      うれしいです。
      コニーさん

      うれしいです。
      2022/05/06
  • 「叱る」と「怒る」は違う。
    とか言っている本やセミナー講師に出くわす事があるが、これらの違いに意味はないと本著。そうそう、そう思っていたという安心感。感情量やそのコントロール度合いで「叱る」と「怒る」を区別しているのだろうが、受け手は厳密に区別できないだろうと。愛のある指導とか、何となく言いたいことは分かるが、これはそこに至るまでの日頃の接し方が文脈として生きているだけで、初対面の人からは、叱られても怒られても、確かにあまり違いは分からない。

    また、指導という観点では、根性論や体罰の是非もあるが、著者は全否定する。叱られて立派になったという「生存者バイアス」であり、その裏には、叱られて潰れていった人がいかに多い事か。それを無視した意見だと。それに、自転車から補助輪を外すとき、昔は転びながら学んだ。今はストライダーのようなペダル無し自転車で先にバランス感覚を学ぶので、転ばずに直ぐ補助輪無し自転車に移行できるのだという。つまり、学習法も科学的に進化しており、未だに叱られて学ぶ、痛い目にあって学習する事に囚われるのは、本末転倒だという事だ。

    処罰感情についても、説得力ある解説。何かのルール違反を犯した相手に罰を与える体験をすると、報酬系回路が活性化する。犯罪において、当然ながら、被害者の「処罰感情の充足」は守られるべき権利。愛する家族を理不尽に奪われたら、激しい感情に圧倒される。そして加害者に厳罰が科されることを強く望むだろう。生き物としての本能が求める自己治療である。しかしながら、少なくとも、利害関係のない傍観者の処罰感情を充足させるための厳罰化は避けなくてはいけない。関係ない人の報酬系を刺激するために、生贄を捧げるのは間違っている。

    結局、自らを統制できる人間こそ望ましく、イライラや不安、食べ過ぎ、怠けなどなど。簡単では無いが、自分を律してこそであり、他人を叱るというのも本来おこがましい行為なのかも知れない。

  • 叱ることには依存性がある。
    なぜなら、叱ることで脳の報酬系回路が活性化するからだ。
    人を叱ることは気持ちがいいことなのだ。

    叱る人があなたを叱るのはあなたを思っての行為ではない。
    叱る人が気持ちよくなりたいから叱るのだ。

    それから、叱られて成長することはない。
    むしろ叱られることで萎縮してしまい、成長しようとする意志が妨げられる。
    もし、あなたがひとに叱られたことで成長できた、と思っているならそれは錯覚だ。

    本書において、「叱る」とは言葉を用いてネガティブな感情体験(恐怖、不安、苦痛、悲しみなど)を与えることで、相手の行動や認識の変化を引き起こし、思うようにコントロールしようとする行為のことをいう。

    よく「怒る」と「叱る」を分けろ、というが、相手にネガティブな感情を抱かせるという意味では変わらない。意識的に相手の変化を引き起こさせようとするか、しないかの違い。

    でも、叱られた方は大抵その場だけ凌げばいい、と思っているわけですよ。つまり、ほとんどの場合、変化は引き起こされない。よって叱るのは無駄。

    なお、「叱る」ことに効果があるのは危機介入と抑止(危険な行動や望ましくない行動の予防)だけだという。

    そういうことだったのか!
    納得。

    • naonaonao16gさん
      たけさん

      おはようございます!
      たけさんのレビュー拝見して思ったんですけど、「怒る」も「叱る」も変わらないですよね。あと、場合によっては「...
      たけさん

      おはようございます!
      たけさんのレビュー拝見して思ったんですけど、「怒る」も「叱る」も変わらないですよね。あと、場合によっては「区別」と「差別」も。

      あなたのためを思って、ということって結構ありますが、そんなこと言って結局自分のため。
      かといって、ニートになりたい子にどうやって働くよう伝えるかは難しいです。
      そういう時に「あなたのためを思って」と言いがちなんですよね、反省です。
      2022/07/11
    • たけさん
      naonaoさん

      ニートになりたい子を働かすなんて、難題すぎますね。でも本当にニートになりたいんですかね。というより、魅力的な職業が見つか...
      naonaoさん

      ニートになりたい子を働かすなんて、難題すぎますね。でも本当にニートになりたいんですかね。というより、魅力的な職業が見つからないんですよね。きっと。
      この仕事だったらしてもいいなあと思えるものが見つけられるといいですね。いずれにせよ、自分で見つけないとですよね。
      難しいですね…
      2022/07/12
    • naonaonao16gさん
      たけさん

      うーん、そうなんですよね。
      ある程度親が健康的で、自分で生活への困らなさを実感できなかったら、その時働く意味なんて見いだせないよ...
      たけさん

      うーん、そうなんですよね。
      ある程度親が健康的で、自分で生活への困らなさを実感できなかったら、その時働く意味なんて見いだせないよなぁ、と。
      やっぱり10代の頃から社会で刺激を受けないと何も見つけられないものなのかなぁ…
      でもその刺激が強すぎて外に出れなくなっちゃった子もいるよなぁ…と答えが出ません
      2022/07/12
  • 身近にいる、「叱る」に依存しているであろう人を思い浮かべながら読み進めました。なるほどね、そういうメカニズムか、と納得できました。が、肝心の抜け出し方がねー。視野が狭くなっている人に読書はハードルが高そう。それに、この本を渡して、「読んでください」じゃあ嫌味だしねー。結局、叱られる時に“I”を主張して、多様性を発信するしかないのかなー。

  • 子どもを育てていると、子どもへの接し方で悩むことだらけ。読んでおくべき本だと思った。毎日毎日、同じことを注意して怒ってばっかりな気がして。叱る依存状態なんだな~と言うことは分かった。叱る側の(私の)ニーズを満たすだけのものになっている。これが分かっただけでも良いのだろうか…
    生存者バイアスや厳罰主義や中絶方法などの話も興味深かった。
    叱る依存から抜け出すために、主体性や自律性をサポートすることからはじめていきたいな。

  • 本書を読んで、叱っている人=いかなる理由があろうとダメ、そして自分としても「叱る」行為は恥ずかしいことという認識が固まった。

    どんな組織にいても、怒ってばかりいる人という印象の強い人もいれば、めったに怒らないよねという印象の人もいる。これまでの経験値の積み重ねによる、個人的で独断的な感想では、「怒ってばかりいる人」=「強そうに見えるが本当は弱い人」、「めったに怒らない人」=「言われっぱなしで弱いように見えても実際は強い人」というイメージがある。ある程度その直感は、本書を読んで当たっているなと思った。

    また、自分自身を反省してみても、自分の心が弱い時ほど怒っているというのは胸に手を当ててみれば、間違いない。

    弱いと「逃げたくなる」そして逃げられないとなると、自分の欠点を暴かれないように攻撃に転じる。このことも、医学的な視点から説明が施されていた(ネガティブ感情が起こると「防御システム(偏桃体+島皮質)」が活性化しすることで、無意識に逃げるか、戦うかの反応が起こるそうである)。

    「怒る」と「叱る」は違うだろ、という意見に対し、著者は、叱る側の感情の違いはあれど、相手にとっては大差ないという。本書にいう「叱る」の定義を見れば、そのことは明確である。

    ◆「叱る」の定義
    言葉を用いてネガティブな感情体験(恐怖、不安、苦痛、悲しみなど)を与えることで、相手の行動や認識の変化を引き起こし、思うようにコントロールしようとする行為。

    例えて言えば、「親が子を叱る」というのは、子にネガティブな思いを想起させ、それでもって子をコントロールするってことだ。文面を読めば、なんて卑劣な行為かと思ってしまうが、それを知らず知らずにやっているわけだ。

    先生と生徒、上司と部下、夫と妻、・・・「叱る」という言葉がよくつかわれる現場でも、それぞれ当てはめてみると、叱られる側にとっては非常に理不尽である。

    そもそも著者は、この行為の背景になんらかの「権力」的なものが存在するという。よく考えてみれば得体のしれない「権力」である。夫と妻でよくあるDVでは、なぜか夫が自分の方に「権力」があると勘違いしているわけだ。パワハラで訴えられる職場の上司や、スポーツクラブのコーチなども同様に勘違いしているというわけだ。

    「パワハラ」という言葉が世に出てきたころ、訴えられた側の反撃ワードとして「叱ることはしつけであり、相手の為を思ってやっていること」とか、「叱っておかないと癖になる」とか、「人はみな叱られて成長していくものだ」とかがある。もっともらしい言葉のようだが、著者からすれば、「叱る」ことの正当性はゼロのようである。

    「叱る」のは、勝手に権力があると思い込んでいる側の勝手なストレス解消であり、勝手で一方的な正義の押し付けであるということだ。

    教育なら、叱る方法でないほうが効果的。しつけとか叱るとか、体罰とかはみんな相手にネガティブ感情を与えるやる側の論理であると。

    「叱る」のは相手を黙らせることで自分が快感をえるための行為(ドーパミンニューロンが活性化されるらしい)であり、むしろ癖になるのは叱るほうのようだ。本書のタイトルがその意味をあらわしている。

    「人は叱られて成長する」というのは、生存者バイアスによる歪んだ言い伝えとバッサリ。叱られ続けてメンタル壊れた人の言葉は世には残らず、叱られても叱られても耐えて耐えて頑張ってやっと成功した超レアな人の言葉が、あたかも一般的な名言のように残されている。

    色んな意味で、面白くかつ実践的な本だと思った。

  • ポップな装丁と少々インパクトのある表題『〈叱る依存〉がとまらない」に反して、とても丁寧かつ論理的に纏められた臨床心理士・公認心理士村中直人氏による1冊です。

    世には「なんちゃってカウンセラー」が沢山いるから気を付けたほうがいいというのは、私の以前のかかりつけの精神科医の一言ですが、本著は経歴等の裏打ちのある専門家による信頼できる著作です。

    それを示すように最後にあるこの1冊の為の参考文献、引用のリストを見れば一目瞭然です。

    「頑張る」「しっかり」「ちゃんと」「辛抱」「我慢」等の精神論大好きな国民性を持った私たち。

    ドラマを観ても、ニュースの原稿文ももちろん新聞も、どこかに「厳しくしなければ自堕落になってしまう」「甘やかしは最後にツケが回ってくる」といった認知が透けて見えます。

    子育て期に、イライラして夫や子どもたちに強く当たってしまったり、自分のなかで抑え込んでいた我慢や辛抱がこらえきれず、止まらなくなって、何を怒っているのか、訳が分からなくなったりは日常茶飯事でした。

    寛容で優しい妻であり、母である自分が目標ではあったのに、そうもいかなかったなあ・・・。

    大声をあげたり、強い口調で相手を委縮させたり、「これはあなたを思って叱っている」などとは愚の骨頂だと、科学的に理解できました。

    叱ったり怒ったりで気持ちよく脳内にドーパミンが出るのは本人であって、怒られている当事者はその間頭の中は真っ白。苦痛を回避するために逃避モードになりやり過ごしているだけとのこと。その通りです。

    「叱る」という行為は結局相手に苦痛を与え、自分の思うように「支配」するための手段。
    ただし、「叱る」ことはダメで「褒めましょう」の一義ではないので単純化は危険です。

    処罰感情の充足により脳内がここちよく感じるという説明も驚きでした。
    他人の悪口を言うのも報酬系物質ドーパミンが放出されると以前読んだことがありますが、処罰感情も同様とのこと。

    政治家や芸能人へのバッシングや、Twitter等で「ちくり」のような晒し方が横行し、これらは処罰感情由来ではと考えます。
    何よりも3年になろうとする今回の感染症に関しての意見の異なる専門家へのTwitterでの罵詈雑言は目に余ります。哀しくなります。

    これらは脳の仕組みゆえの人間の弱さが、情報発信を万人に手渡したことにより露呈した気がします。

    「怒ってはいけない」「叱ってはいけない」という精神論に終始するのではなく、脳内で何が起こっているのか。そしてその行為がもたらす結果が非常にわかりやすく説かれています。

    人間とは脆く弱い側面を持つ。そういう存在だと知ることから始まる気がしました。

    • naonaonao16gさん
      ごはんさん

      こんにちは!
      久々にお話できて嬉しいです!!

      この作品、松本先生の推薦文に惹かれた部分もありましたね!わたしはそこで信頼した...
      ごはんさん

      こんにちは!
      久々にお話できて嬉しいです!!

      この作品、松本先生の推薦文に惹かれた部分もありましたね!わたしはそこで信頼した感じです笑
      最近、松本先生監修?の漫画『死にたいと言ってください』を見つけて、先日購入しました!もう少ししたら手を出そうと思っています!

      ほんとに、脳の勉強してると、人間て動物だな~と思いますよね。

      ごはんさんのコメント「自分に自信を持てないとき~」の部分、激しく同意してしまい、何度も読み返しました!
      そういうことしてる時って、日常で満たされてない時なんですよね…
      先日また「発言小町」を覗いてしまって…

      感情を見つめるアプリとか入れて、少しずつ自分で調整を試みていますが、やはり様々な感情が渦巻き、大概それを抑えて生活していかないといけないわけで、でも渦巻いてる感情は大事にしたい。これって、かなり至難の技ですよね。

      生理関係なくイライラする時もあるので、自分の性格なのか!?とも思いますが、うん、なんか違うイライラなんですよね。これはうまく表現できませんね笑
      漢方、以前飲んでいたのですがあまり効いてないと勝手に判断してやめました爆
      他人が勝手に薬辞めると怒るくせに…自分の行動を考えさせられる毎日です…
      2022/11/15
    • ごはんさん
      naonaonao16gさん

      早速ありがとうございます。
      松本俊彦先生の著作は本当に都度発見がありますね。

      世間の杓子や他人との比較の中...
      naonaonao16gさん

      早速ありがとうございます。
      松本俊彦先生の著作は本当に都度発見がありますね。

      世間の杓子や他人との比較の中で、「こうありたい」「こうあらねば」という枠に自分をはめ込んでしまい、その結果「理想の自分」と「現実の自分」の乖離で、自己嫌悪に陥る。或いは自己否定の嵐はあるあるですよね。

      そんな時にあえて嫌いな人の情報をわざわざ見に行ったり、むかつくと分かっていながらそういう情報にアクセスしちゃったりしますします笑。

      naonaonao16gさんも自分の感情に向き合うアプリを使われているのですね。私も2年ちょっとになるかな。幸運にも私に合っているようでサブスク更新続けてます。

      PMSの漢方薬は私も今ひとつ効きが感じられず止めました。どうやらイライラしないように心がけるよりも、生活の中で小さな心地よさや愉しみを紡いでいく方が、イライラを避けられる気がします。

      その意味で香りとか照明の光は脳や身体に刺激となると知り、アロマで気分を替えたり、間接照明多めの生活にしています。夫と2人の生活で食事も我が家は大事で、一日中食べるもの、作るものを考えています笑。頭ぐるぐるですね。
      2022/11/15
    • naonaonao16gさん
      ごはんさん

      おはようございます!

      しかし気づいたことは、松本先生の作品は読んだことないかもしれません爆

      いやまさに、わたしはいつだって...
      ごはんさん

      おはようございます!

      しかし気づいたことは、松本先生の作品は読んだことないかもしれません爆

      いやまさに、わたしはいつだって理想の自分と現実の自分との間でシーソーをしています…帰り道と家では反省ばかり…以前よりマシになったとはいえ、なかなか難しいですね…
      仕事を忘れようと開いたTwitterで、結局目にするのは人の悪口で、でもどこかそれに共感したり安心してる自分も認めざるを得ないという…

      サブスクで続けてるの凄いですね!
      わたしは無料の範囲内でやってます笑
      「毎日」とするとしんどくなって続けられなくなるので、気が向いたらつかう程度に続けてます(結構最近)

      確かに、PMSはイライラしてしまうものなので、心地よいことを見つけていく方がいいかもですね!発見です!ありがとうございます!!
      最近家で資格の勉強してるので、夜遅くまで煌々と照らしてるんですよね笑
      今だけだと思いますが…

      食事は大事です。わたしも自炊とお弁当を心がけてます。あと、甘いものとお酒も♡
      2022/11/16
  • naonaonao16gさんのレビューで気になりずっと「読みたい」のカテゴリに入れていた本。
    何となく感情的に叱るのはよくない、でもどうしたらいいんだろう、打たれ弱くなるんじゃないか、…漠然と今まで考えていたけど、それを科学的に説明してくれて具体的な方法の提案もしてくれた。
    これは本当に色んな人に読んでほしい。

  • 「叱る」には依存性があり、エスカレートしていく!その理由を脳の仕組みや心理学、社会的な側面から解説。誰もが陥る可能性がある「叱る依存」にどう向き合えばいいのかを解説する一冊。

    社会に根付いている「苦しまないと人は変わらない(学ばない、成長しない)」という思い込み。ぼく自身もその刷り込みに囚われてしまうこともある。そもそもなぜ人は叱るのかという基礎から、その無益さを易しく丁寧に解きほぐしてくれる。怒るのはともかく叱るのは必要では?と思っている人ほど読んでみてほしい。

    叱ることで起きる弊害は、岡本茂樹『反省させると犯罪者になります』にも通じる内容。叱ることで恐怖を呼び起こしても、それから逃れるために反省が上手くなるだけ。それを見て叱る方も満足してしまうという負のループ。叱る方にこそ依存や問題があるという視点はなかなか持てないよね。

    ぼくが印象深かった文章を引用して終わります。もう勉強になりすぎる上に読みやすいので、全人類に読んでほしい。叱る人ほど読まなさそうな本だけど、こういう視点から叱る人をケアできるような社会になってくれたらいいね。

    p.29
    「叱る」という行為を理解する第一歩は、それが「他者を変えようとする手段」であると認識することです。さらに踏み込んで言うと、「叱る」という行為は、叱る側が求める「あるべき姿」や「してほしいこと」を実現するための手段です。

    p.30
    つまり、何を叱るべきなのかは常に「叱る側」が決めるのです。何が良いことなのか「正解」を決める権限を持っているからこそ、その「正解」を実現するために「叱る」が生まれるのです。

    p.57,58
    しかしながら、叱られた側のネガティブ感情が強く引き出されると、苦痛や恐怖で意識が満たされてしまいます。すると叱る側の思いとは裏腹に、その状況の原因には意識が向きにくくなってしまうのです。「なんとかしてこの嫌な時間を早く終わらせたい」「どうしたら黙ってくれるのか」「頼むから放っておいてくれ」などの、苦痛から逃れるための考えで頭がいっぱいになります。ここでその子どもが学習するのは、「本来はどのように振る舞い、どうすればよかったのか」ではなく、「叱られたときに、どうしたらよいのか」というその場しのぎの対処法です。

    p.80,81
    つまり、依存症のリスクを高めるのは「受け入れがたい現実」であり、その現実を一時的であったとしても忘れさせてくれるような快感や体験に、人は依存しやすくなるのです。

    p.100
    人は自分の権力と支配がおよばない相手を直接「叱る」ことはまずないからです。その意味で叱る依存は必ず相手を選んで発生しています。

    p.140
    ここで間違えてはいけないのは、「我慢する」ことや「苦痛を乗り越える」こと自体が無意味なのではなく、他人から強制された我慢や苦痛が問題だということです。なぜなら、目的のための自発的な我慢と、他者から強要された我慢は、まったく別の体験だからです。

    p.165
    それは、本来個人的な欲求である処罰感情が、「相手のため」「社会のため」にすり替わってしまう場合です。もう少しつっこんだ表現をすると、「(私が思う)正義の遂行のために、この人に罰を与えなくてはいけない」と感じる場合、処罰感情の充足に歯止めがかかりにくくなるのです。

    p.172
    「叱る」は抑止力として予防的に用いることが基本です。つまり実際には叱らずに、予告だけするのです。実際に叱ってしまうと相手は「防御モード」になって、言い争ったり隠蔽しようとしたりする可能性が高くなります。ということは、実際に叱らなくてはならない状況を招いてしまった時点で、本来は「叱る人」の失敗だと考えるべきなのです。

    p.195
    ただし、もしその「専門家」が、あなたのことを「叱る」人だったら、そのときはすぐにその人から離れてください。本物の専門家はあなたのことを叱ったりしません。

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著者プロフィール

【著者】村中直人(むらなか・なおと)
1977年生まれ。臨床心理士・公認心理師。一般社団法人子ども・青少年育成支援協会代表理事。Neurodiversity at Work株式会社代表取締役。人の神経学的な多様性に着目し、脳・神経由来の異文化相互理解の促進、および学びかた、働きかたの多様性が尊重される社会の実現を目指して活動。2008年から多様なニーズのある子どもたちが学び方を学ぶための学習支援事業「あすはな先生」の立ち上げと運営に携わり、現在は「発達障害サポーター'sスクール」での支援者育成にも力を入れている。著書に『ニューロダイバーシティの教科書――多様性尊重社会へのキーワード』(金子書房)がある。

「2022年 『〈叱る依存〉がとまらない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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