われら古細菌の末裔: 微生物から見た生物の進化 (共立スマートセレクション 38)
- 共立出版 (2023年2月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
- / ISBN・EAN: 9784320009387
作品紹介・あらすじ
本書では、40億年の生命の歴史のうち、これまであまり取り上げられることがなかった、最初の30億年の微生物の時代の進化を主題として扱い、原核生物~真核生物の進化を一連のつながりのなかで解説する。
われわれ動物や植物の祖先として、細菌や古細菌のような原核生物を想定して進化を考える人はほとんどいないだろう。いや、つい40年ほど前までは微生物学者でさえも、細菌の系統進化を他の大型の生物と同様の分類基準で捉えることなど不可能であると考えていた。このことを可能にしたのは、アメリカの微生物学者、カール・ウーズであるが、本書では、ウーズが成し遂げた偉大な業績を紹介し、その延長上で繰り広げられた真核生物の誕生をめぐる研究者たちの熱い議論を辿ることにより、進化を捉える新しい視点を提示する。
また、本書では生命誕生前史とも言うべき化学進化や、真核生物誕生のきっかけとなった光合成細菌の進化についても触れることで、真核生物の誕生の背景についての理解を深める。そして新しい技術や解析法を駆使して世界の研究者によって進められた真核生物の祖先探しの努力を紹介し、「なぜ、われらが古細菌の末裔なのか」についての理解に結びつける。
微生物を視野に入れて生命の進化を捉えるとき、真核生物の誕生こそが進化の大転換点なのだ。
生命の成り立ちや進化に興味のある高校生、大学生、大学院生や社会人を含む幅広い読者に読んでほしい一冊である。
感想・レビュー・書評
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古細菌についてほとんど知らなかったのだが、生命の歴史を通してその位置づけがよくわかった。
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図書館の新着コーナーで手に取った。地味な装丁だがタイトルが気になった。
なるほど、1977年にカール・ウーズ等が細胞のリボソームを構成する16S rRNA分子に着目し、その塩基配列を分析することでバクテリア(真正細菌)や真核生物に加えて古細菌の3つのドメインを提唱したことから古細菌の研究が加速度的に進むこととなった。
この新しい概念は学会になかなか受け入れられないという困難もあったが、その後、真核生物が誕生したメカニズムとして古細菌が葉緑体やミトコンドリアを取り込んだという細胞内共生説が提唱されるなど、古細菌をめぐる研究の目覚ましい変化が解説されている。
本著も若い人に読んでもらい研究を志してもらいたいと思う一冊だ。 -
それまで考えられていたように生物は原核生物と真核生物に二分されるわけではなく、その中間とも言える古細菌が存在するということ。そして生命の進化史において真核生物はその古細菌の一種から進化したということ。科学史を丁寧に押さえながら、いかにそのことが発見され定説となっていったかを書いた本。かなり専門的な部分も多く、少し読むのは大変かも知れないが、生命の進化の不思議や、まだ知られていない生物が驚くほど多く存在しているという神秘、そして科学史も人間の営みだということを教えてくれるという点でとても面白い本であった。われらのみならず、われらが普段目にする生物は全て古細菌の末裔なのである。
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生命は、いつ、どこで、どのようにして誕生したのか?
読み始めはワクワクだった。ただ、大学の講義がベースになっているので、読み進めるうちに、難解というか、わけわからん言葉が多発する。そもそも、原核生物とは?真核生物とは?真正細菌とは?古細菌とは?で、壁にぶち当たってしまう。
ともかく、カール・ウーズという研究者が、「地球上のすべての生物を一つの系統樹の上に位置付けることを可能した」という大発見をしたらしい。
また、無機物から有機物への化学進化を論じるあたりは、感動的であった。
生物学の進歩は著しいらしいが、大昔勉強した「生物」の教科書に出てきたコアセルベートだとか、オパーリンとか言った名前も出てくるので、懐かしく楽しい部分もあった。
備忘
・太陽系の形成46億年前→地球の誕生45.5億年前→海ができる40億年前(この頃生命は誕生?)→後期重爆撃機(隕石が降る)39億年前→真核生物の誕生20億年前
・深海熱水噴出孔付近で、無機物から有機物への化学進化が起こった可能性高い
・地球外に生命の起源を求めるパンスペルシア仮説 -
請求記号 465.8/F 97
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なんかわかってないのは確かなんだが面白かった。たぶん全然わかってない。でも面白い。なんでだろう。