暮らしの質を測る: 経済成長率を超える幸福度指標の提案

  • 金融財政事情研究会
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  • Amazon.co.jp ・本 (153ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784322119756

作品紹介・あらすじ

ノーベル経済学賞受賞の2人の経済学者(ジョセフ・E・スティグリッツ、アマティア・セン)とフランス経済学の権威(ジャンポール・フィトゥシ)が中心となってまとめた「幸福度計測の基準」。サルコジ・フランス大統領前文を掲載。

感想・レビュー・書評

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  • スティグリッツやアマルティア・センなどエコノミストを中心に、GDPに代わる「生活の質」を重視した、幸福度の指標を提案してる。
    この委員会を立ち上げたサルコジの自画自賛がスゴイ。後の世の人々は、スティグリッツ委員会「以前」と「以後」という言い方をするだろう、とまで言い切ってる。
    はたして、そこまでの、ものか?
    幸せとは何か?ということを定義する上で、アメリカ人とフランス人の通勤時間やTVを見る時間、読書の時間、セックスの時間などの長さを比較している表がおもしろかったけど、今や、世界の中心はアメリカとフランスではないのだから、そういうのって、もっと国際的で、膨大なデータが必要。
    生活の質を測る、っていうのは、非常に難しい。でも、必要な試みだ。
    そして、この仕事に最適なのは、スティグリッツだ。

  • 本レポートは、サルコジ元フランス大統領が世界的な経済学者を集めてポストGDPのあるべき指標について提言をまとめたものです。その中心となるのが、ノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツとセンです。この2名がGDPの限界、そして今後はウェルビーイングと世界の持続可能性をモニタリングすべき、と述べたことは歴史的に見ても非常に重要といえるでしょう。おそらく本レポートは50年後、100年後であってもたびたび参照されるドキュメントになると思います。

    そのように歴史的に見ても極めて重要なレポートですが、正直日本語の質はあまり高くないと全般的に感じました。スティグリッツやセンをはじめ、どちらかというと哲学的で抽象的な語り口の人が多い中、これらの高尚かつ専門的な英語をわかりやすくすること自体かなり難しいとは思うのですが、できればもう少しスラスラ頭に入るようだとありがたかったです。経済用語についても、こういう日本語は使わないのでは、と思う箇所が何箇所かあり、できれば2刷以降は改善いただけると助かります。ただし提言のエッセンスは理解できましたし、繰り返しますように本レポートは、今後ますます参照される重要なレポートですので、原語で読むことも含め一度は読まれることをお勧めします。

  • 方向性に賛同するし、画期的な出来事ではあるが、世界の経済学者が集まっても、まだここまでなのかという難しさを感じた一冊。これからに期待。

  • Mismeasuring Our Lives, 2010

  • 国全体としての経済成長だけではなく、個々の家計における暮らしの質を把握していくことの大切さとそのための方法について述べた本。

    以下、いくつか印象に残った点を挙げる。

    ・モノがどれだけ売れたのかという供給サイドの視点ではなく、個々の家計がどれだけ消費をする力があるのかという点を把握すること。

    ・家計の現時点での状態だけでなく、その持続性に着目するべきということ。そのために、ストックの状態も把握すべきであるということ。

    ・経済統計の中に、市場を介して消費されるものではないサービスや物品も加えることで、総合的な豊かさを把握するべきであるということ。

    ・経済指標は複数の指標の推移やバランスを見るべきであり、飛行機パイロットがコックピットの複数の計器類を見ながら飛行機を操縦するように、政策立案者が参考にできる複数の指標から成る「ダッシュボード」をつくっていくべきであるということ。

  • GDPで競う時代は終わったんだなと明確にわかる本。

    誰かを幸せにしたいならば読んでおくべきだなと思って手にとったけれど、当たりだった。

  • 序文p21,l9
    だが一見非経済学的要因でさえも、経済構造の影響を受けている。(中略)
    近年行われた経済改革で、GDPがふえたかもしれないが、暮らしの質の重要な諸次元では逆効果があったかもしれない。

    p17,l2
    幸福度は多くの次元からなる。
    1.物質的な生活水準 2.健康 3.教育 4.仕事を含む個人的な諸活動 5.政治への発言と統治 6.社会的なつながりと諸関係 7.環境(現在及び将来の諸条件) 8.経済的及び物理的な安全度

    p19,l4
    勧告8(暮らしの質を評価するためにつくる)調査票は、1人一人の暮らしの質にかかわる多様な諸領域の間のつながりが評価できるようにつくるべきである。

    p32
    不変性の原則
    主要な計測単位の総和の価値は、国内での制度的取り決めによって変わってはならない、という原則である。
    (事例:ある活動を公的機関が行おうとも、民間機関が行おうとも、その活動による全体としての生産額計算は変化しない)

    p67
    暮らしの質を考える上での3つの重要な考え方
    1.心理学の研究との関係に由来する、主観的な幸福度に基づき、個人の状態をもっとも正しく判断できるのは本人自身

    2.能力概念に基づく、人の暮らしは、多種多様な「することと存在すること」(諸機能)、および諸機能のなかから何を選ぶかに関する本人の自由度(諸能力)の組み合わせであると考える

    3.経済学の伝統に由来し、公正な割り当てという概念にもとづいたもの。
    人々の好みを尊重しながら、暮らしの質の日金銭的な、多様な諸側面を考慮する。
     これは上流層に偏ることなく、全構成員に公平に焦点を当てることができる

    p70
    主観的計測:
     理論と現実世界との格差に焦点をあてるために有効
    問題:
     回答した人の主観的な状態と価値観についての情報提供は、回答した本人にしかできない
    効果:
     人々の行動が予測しやすくなる。
    自己報告は、電気的な頭脳の読み取り結果と相関関係にある

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