冷戦終焉20年―何が、どのようにして終わったのか

著者 :
  • 勁草書房
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784326351534

作品紹介・あらすじ

社会主義が今日ではほぼ無視できるほどに後退したという事実は、欧米諸国・日本・途上国などにおける最近の社会変動を考える上で、一つの無視できない構成要素である。バランスのとれた現代世界像の構築のために。

感想・レビュー・書評

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  • ソ連及びロシアの20年間をざっと振り返った。NATOやEUの新規加盟国の立ち振る舞いについての指摘には同感だが、何故そうなのかの分析が欲しかった。

  • 学校の授業で聞いたことくらいはありましたが、冷戦について詳しい内容までは知らなかったので、興味を持ち読んでみました。
    歴史好きにはもちろん、歴史が苦手な方でも読みやすいと思うのでオススメです。
    (教育学部・国語専修:匿名希望)

  •  全体的な議論の方向性としては、理解出来るし、評価出来る部分もあったが、氏の意見をよく聞いている人間としては、特にこの本で何か新しい事を学んだという気持ちにはなれない。

     勿論、評価出来る点は多数有り、そのうち最も大きなものが、同時代を生き、同時代的な議論を拾って来た世代の人々が歴史がある種、歪曲され、単純化されている現実に対して、きちんと声を上げ、その内実をもう一度理解し、且つ提示する必要、責任があるという主張である。これは、歴史の理解がある種、歪曲されていると受け取れる現実がある時、それを「最近の者は何もしらない」と現代の若者や世代間の論争に転嫁するのではなくーー少なくともそう主張する前にーー、自分たちの世代が総括し、反省すべきであるという主張である。これは読者としてはかなり評価したい。

     同じく、東西のイデオロギー闘争・論争の中でソ連の敗北を信じて疑わない人、社会主義は敗北したが、欧州の社会民主主義という衣に着替え、これを正当化している人に対する批判という色彩を帯びており、これはある種の面白さもあった(特に後者に対する批判は)。そして、おそらく塩川氏が属した自らの陣営(ソヴェト型社会主義をある種、支持していた、あるいはこれに親近感を持っていた人)の敗北を率直に認め、「これはソ連にもいいところがあったんだ」というひそかな反論ではなく、「ソ連は間違いなく失敗し、解体への道を歩んだという事実に反論するつもりはない。しかし、なぜそれが解体に向かったのかという議論を正確に理解する必要がある」という主旨である。

     他にも読者によっては、面白い論点もあろうがーー但し、社会主義や共産主義について殆ど知識を持っていない学部生などには退屈な本かもしれないがーー、氏には似つかわしくない問題のある表記が散見された。

     氏の著作は、緻密な歴史実証主義に裏打ちされた研究が多く、しかも、自らの意見を軽々に論拠も提示せず全面的に押し出すような議論(実証性の乏しい疑わしい主張や裏打ち史料の少ない印象論的な主張を提示する姿勢)に批判的であるという点で共通点を有している。それが氏が学術界で様々な評価を得ている背景にあり、他者が見て氏の特徴であるようにも思う。

     一方で、本書では上記のような自らの意見を軽々に論拠も提示せず全面的に押し出すような議論(実証性の乏しい疑わしい主張や裏打ち史料の少ない印象論的な主張を提示する姿勢)が後半部に度々見られる。グルジアへの言及、ウクライナや旧ソ連東欧への言及に関しては看過出来ない箇所が見られる。この点が氏の一連の研究とは、異なり違和感のある所であり、且つ本書の評価を著しく下げる要因となっている。つまり、単純な図式で議論をするべきではないという彼自身の主張(しかも冒頭でそれ)がなされているにも関わらず)、自らが後半部でそれを否定するような箇所が見られるのである。

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著者プロフィール

東京大学名誉教授

「2020年 『歴史の中のロシア革命とソ連』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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