自己への物語論的接近: 家族療法から社会学へ

著者 :
  • 勁草書房
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784326652549

作品紹介・あらすじ

「私」はいかにして生み出され、変容していくのか。物語療法をふまえながら、社会学的自己論の大胆な書き換えを図る。

感想・レビュー・書評

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  • 「自己」とは一体何なのでしょうか。「私」が「私」であるということはどうやって説明できるのでしょうか。

    本書は、「自分」や「私」という現象それ自体がどのように成り立っているのか、という問いを立て、「物語」という概念を用いながら理論的検討を行おうとするものです。基本的なスタンスは、「私」というものは、その人が生きてきた中で蓄積された無数のエピソードの選択と配列を通して現れてくるという考え方で、本書では、(1)「自己は、自分自身について物語ることを通して産み出されるということ」(p.4)、(2)「自己物語はいつでも『語り得ないもの』を前提にし、かつそれを隠蔽しているということ」(p.4)、という2つの主張を中心に議論が展開されていきます。

    あとがきでは、自己を徹底的に関係へと還元しようとする関係主義的な社会学的自己論に対して著者が抱いていた、「自己の自己自身への関係、自己言及的な関係についての思考がそこには欠けているのではないか」(
    p.256)という疑念について書かれています。本書は、そのような疑念に対し、家族療法における物語論を社会学に接続するという形で、徹底的に向き合おうとした著作と言えます。

    「自己」や「物語」についてはそれぞれ背後に多くの先行研究群があり、本書はそれらを前提に書かれていますので、背景的な知識があまりないとやや難解な印象を受けるかもしれませんが、かなり整理されて書かれていますので、安心してゆっくり読み進めれば理解はできると思います。

    社会学を学ぶ方に限らず、「自己」というものへ興味を持つ多くの方に読んでもらいたい一冊です。
    (ラーニング・アドバイザー / 国際公共政策 SATO)

    ▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら
    http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1230513

  • 1自己は物語によって形成される。
    2物語で一貫性を与えるために隠蔽される出来事がある。

    ユニークな結果。ドミナントストーリーを崩す。

    語る主体の自己と語られる客体の自己。

  • ななめよみ。

  • とても良いです。

  • なぁるほど社会学的自己。

  • 物語論のなかでは欠かせない一冊。

  • 卒論資料。
    自己物語の本の中で基礎?を簡潔にまとめてある本。まっさらな知識だったので読むのに頭使いました。。

  • 懇切丁寧(に過ぎるほど)な議論・論点整理にびっくり。自己の「語り得ぬものの領域」については大同意。が、オチには大不満。それは確定されるべきものか?

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著者プロフィール

浅野 智彦(あさの ともひこ)

1964年生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。現在、東京学芸大学教育学部教授。主著『検証・若者の変貌』(編著, 2006年, 勁草書房)、『「若者」とは誰か』(2013年, 河出書房新社)

「2016年 『〈若者〉の溶解』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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