- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784326654055
作品紹介・あらすじ
同居家族介護における主介護者続柄割合は娘19.1%、嫁17.3%、息子16.3%。要介護高齢者への虐待加害者続柄割合は娘16.4%、嫁5.2%、息子40.3%。息子加害者の割合がかくも高いのはなぜか。「男性=暴力的」図式を退け、老親介護という、息子としてしか存在しえない場で彼らが経験する重圧と軋轢をジェンダーの視点から分析する。
感想・レビュー・書評
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■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
【書籍】
https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1001107026
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2階書架 : 369/HIR : https://opac.lib.kagawa-u.ac.jp/opac/search?barcode=3410168742
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【電子ブックへのリンク先】
https://kinoden.kinokuniya.co.jp/muroran-it/bookdetail/p/KP00009622/
学外からのアクセス方法は
https://www.lib.muroran-it.ac.jp/searches/searches_eb.html#kinoden
を参照してください。 -
本は脳を育てる:https://www.lib.hokudai.ac.jp/book/index_detail.php?SSID=5075
推薦者 : 中村 重穂 所属 : 国際連携機構国際教育研究センター
これを書いている僕は3月31日付けで北海道大学を退職する。理由は介護離職、つまりこの本の標題にもなっている「介護する息子」になるわけだ。この本は、そのような「介護する息子」になる前に参考とするべき点を調べようと思って読んだのだが、内容は全く違っていて、所謂ジェンダー社会学の立場から「介護する息子」たちが一見親の介護で苦労しているように見えながら、その背後には女性(配偶者や姉妹)からの支援や女性に対する差別やジェンダー的不均衡があるという可視性の低い問題点をこれでもかとばかりに暴き出す研究書だった。
考えてみれば著者の平山氏は上野千鶴子の門下と書いてあるから、男性優位社会の批判と女性差別を告発・批判する論調になっていて何ら不思議はないと読んでから気がついた。
この本が“学術的に”解明していることはおそらくその通りだろうと思う。しかし、これから職を辞して「介護する息子」になろうとする僕にとっては、実際の介護の場面に直結して役に立つことは少なく、著者の平山氏の“私は女性の味方です”的な意識が見え隠れして些か不快だった。以前、「本は脳を育てる」に推薦した『砂漠の修道院』(平凡社)の中で著者の山形孝夫先生が「悲しみの分析によって悲しみが癒やされることがない」と書いていらしたように、これから介護の現場に直面する人間にとっては想定される介護の苦労を何ら軽減してくれるものではなかったが、―繰り返すけれども―ジェンダー社会学の研究書としては、表から見えにくい息子介護の現場での男女間の不均衡とその原因を緻密に解明している点で学ぶところの多い本であり、そのような問題に関心を持つ学生には一読を薦めたい。
但し、現在介護に関わっている人やこれから介護に関わることになる人にとっては東田勉『親の介護をする前に読む本』(講談社現代新書)の方が遙かに具体的に役に立つ本であることを付言しておく。 -
男性学の本。タイトルどおり、息子による介護ではなぜ暴力が当然のように語られるのか?がかかれている。そこには、暴力をふるう息子の行動が「自然」に思える文脈が存在するだろう、という問い。母への介護が圧倒的に多いが、父を介護する息子もいる。そして、なぜか父への暴力は多くない(と思われている)のはなぜか?
世の中のいわゆる男らしい人はそれを成立させるために払われた周囲の女性の気配りをなかったものにする、依存体質があるのではないか。これは私は気づいてなかった。
文体になかなか慣れなくて読むのに苦労したが、読んで良かった。 -
家族
ジェンダー -
これまで男性学の本を読むといつも何かもやっとしたものが残っていたのだが、本書を読んだことによってその理由がよく分かった。本書は、従来の男性学で語られてこなかった「息子であること」は男性にとってどういうことなのかを、息子介護を題材にして考察している。なぜ介護なのかというと、介護のなかでも家族介護においてどのようなケアが実践されているかは、ケア提供者と受領者の関係性に直結しているからであり、男性が親の介護をするということは息子という立場を取る以外に関わりようがないためである。
家族介護について論じた先行研究や著者自身の調査から導き出されているのは、私的領域での女性への依存を不可欠としているにも関わらず、その依存状態や依存関係を不可視化することで成り立つ、自立/自律を至高のものとする男性性である。男性性の虚構を暴く過程は学術研究でありながらスリリングであり、提示された男性性の成り立ちはグロテスクですらある。
従来の男性学は男性の中だけで完結しておりジェンダー関係の観点が圧倒的に不足しているのではないかという著者の批判や、家事分担がなぜ難しいのかなど、介護に限らない様々な論点が含まれている点も面白い。
論点が多岐に渡っていることのマイナス面だろうか、個々の章は独立してそれぞれ興味深いものの、分析視角として論じた内容が実証的な章ではあまり活かされていないなど、章間の関連性は弱い印象を受けた。