もっと気になる社会保障: 歴史を踏まえ未来を創る政策論

  • 勁草書房
2.50
  • (0)
  • (0)
  • (3)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 47
感想 : 6
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784326701254

作品紹介・あらすじ

好評を博す『ちょっと気になる?』シリーズ発展版。入門レベルをクリアした読者に向け社会保障をめぐるより深い知識と視点を提示。

社会保障政策は最大規模の公共政策であり、国民経済と国民生活の現在と未来を左右するものである。社会保障政策の舵取りはどうあるべきか。改革の青写真を論じ続けている著者が来るべき制度改革への指針を示す良質のガイド。既刊『ちょっと気になる?』シリーズ姉妹編として、「社会保障」をめぐるより深い知識と視点に導く一書。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • お馴染みのシリーズだが,今回は副題にあるように,歴史を踏まえた政策提言が含まれている。

    著者たちの著作を読むと,いつも自分の勉強不足を実感することになる。年金の歴史,地域医療構想,最低賃金に関する経済学上の理論的整理など,今回も。

    経済学や歴史をもっとしっかり勉強したい,とあらためて思った。

    あと,子育て支援策の財源確保のための子育て支援連帯基金の政策提言は興味深かった。各社会保険から拠出して基金を創設して子ども・子育てに活用するというもの。少子化は社会保険の持続可能性を脅かす。保険料の一部を基金に拠出することは将来の社会保険の給付水準を高めたり,社会保険の支え手を増やしたりすることになるので,理にかなっているとのこと。

    「『本来』とか『そもそも』に続く話で,世の中,役に立った話は聞いたことがない」(350ページ)は頭が痛かった。「そもそも社会保険は…」と思っていたところがあったので。

    財源確保のことを考えると,この連帯基金の方が実現可能性はあるのかもしれない。実際に実現するのかどうかは今後の動向を追っていきたい。

  • 【書誌情報】
    著者:権丈善一
    著者:権丈英子
    ジャンル 福祉・医療
    出版年月 2022年9月
    ISBN 978-4-326-70125-4
    判型・ページ数 A5・400ページ
    定価 2,530円(税込)

    社会保障政策は最大規模の公共政策であり、国民経済と国民生活の現在と未来を左右するものである。社会保障政策の舵取りはどうあるべきか。改革の青写真を論じ続けている著者が来るべき制度改革への指針を示す良質のガイド。既刊『ちょっと気になる~』シリーズ姉妹編として、「社会保障」をめぐるより深い知識と視点に導く一書。
    [https://www.keisoshobo.co.jp/book/b611474.html]


    【目次】
    はじめに,そして勤労者皆保険の話 [i-xv]
     『ちょっと気になる社会保障』から『もっと気になる社会保障』へ
     社会保障をめぐる環境の変化
     書名など
     労働力希少社会を迎えて
     勤労者皆保険について
     社会保険の適用除外が非正規雇用,格差,貧困を生む
    拙著文献表 [xvi]
    目次 [xvii-xxviii]


      年金 001

    第1章 不確実性と公的年金保険の過去,現在,未来観
     将来不安という人間の恐怖を制御してきた制度の進化
     資本主義と不確実性
     公的年金保険の制度設計
     1954年改革──日本の公的年金の原点を創る
     国民皆年金へ
     1985年改革──基礎年金の導入
     1994年,2000年改革における支給開始年齢の引き上げ
     2000年年金改革の挫折から2004年改革へ
     人生100年時代における公的年金保険に向けて
     最後に──頑強で,堂々としていて,壊しがたいもの

    第2章 働き方の変化と年金制度,そしてライフプラン
     働き方改革──日本型「同一労働同一賃金」へ
     女性労働
     非正規雇用と被用者保険の適用拡大
     高齢期雇用
     テレワークと柔軟な働き方
     働き方の変化と年金制度,そしてライフプラン

    第3章 令和時代の公的年金保険に向けて
     「不確実」という言葉に込めた意味
     年金,社会保障と税
     社会保障と一般会計の関係
     次期年金改革について
     公的年金保険を取り巻く環境の変化
     公的年金の負担と給付の構造
     社会保障の在り方を規定する価値,目標の比重が変わる
     植樹のような意識で

    第4章 日本の労働市場における被用者保険適用拡大の意義
     要 旨
     はじめに
     被用者保険の適用拡大と日本の非正規雇用の特徴
     被用者保険の適用拡大の展開
     おわりに


      医療と介護 101

    第5章 コロナ禍の今,日本医療の特徴を考える──この国の医療の形はどのように生まれたのか
     公的所有主体の欧米,私的所有主体の日本
     占領期にGHQが与えた影響
     独立後,高度成長期の医療政策はどうなったか
     取り組まれている医療提供体制の改革

    第6章 日本医師会は,なぜ任意加入なのか
     1945年終戦
     1946年
     GHQと日本医師会の齟齬
     波乱の1946年11月,日本医師会第6回臨時総会
     「任意設立・任意加入」体制確立──1946年12月9日改組委員会第1回会合
     1947年は特殊法人を断念して社団法人へ

    第7章 日本の医療政策,そのベクトルをパンデミックの渦中に考える
     医療政策におけるある種の法則
     内生的医療制度論
     内生的医療制度と医療費
     政策形成過程までもが内生的に変化
     議論が求められる課題までもが変化してきている
     今後とも追加的な財源が必要となる医療と介護

    第8章 社会的共通資本としての地域医療連携推進法人
     ほっこりする文章
     2013年の社会保障制度改革国民会議の頃の議論
     競争から協調へ
     社会的共通資本としての地域医療連携推進法人
     制度というのは進化するもの

    第9章 かかりつけ医という言葉の誕生と変遷の歴史
     「かかりつけ医」という言葉の誕生
     かかりつけ医から,かかりつけ医機能へ
     厚労省におけるかかりつけ医機能の用法
     かかりつけ医機能とかかりつけ医
     新しく生まれた「かかりつけの医師」と再定義された「かかりつけ医機能」
     かかりつけ医機能とプライマリ・ケア


      労働 157

    第10章 育児休業制度の歴史的歩みと現在
     はじめに
     育児休業法の成立
     育児休業制度の拡充
     育児休業の取得状況と課題
     おわりに

    第11章 最低賃金制度の歴史的歩みと現在
     最低賃金制度の確立
     最低賃金引き上げへ
     最低賃金に関する経済学の考え方
     最低賃金に関する最近の国際的動向


      税の理解 191

    第12章 日本人の租税観
     維新の元勲の租税観
     国民負担って変じゃないか?


      政策論としての社会保障 199

    第13章 国民経済のために,助け合い支え合いを形にした介護保険を守ろう
     話題其の壱
     話題其の弐
     話題其の参
     話題其の四
     話題其の五
     話題其の六
     話題其の七
     サービス経済と医療福祉
     将来の介護労働・医療福祉需要
     非情な市場と対峙する助け合いを形にした制度
     介護と財政

    第14章 再分配政策の政治経済学という考え方
     第1回 民主主義はどのように機能しているのか
     第2回 経済成長と医療,介護の生産性
     第3回 将来のことを論ずるにあたっての考え方
     第4回 分配問題と価値判断
     第5回 社会保障の再分配機能
     第6回 手にする学問によって答えが変わる

    第15章 制度,政策はどのように動いているのか
     物心ついた頃から? の問題意識
     政府とは
     『君主論』に学ぶ望ましい政策とは
     為政者の保身
     力と正しさ


      未来に向けた社会保障 271

    第16章 今後の子育て・両立支援に要する財源確保の在り方について
     負担する人たちに,どう納得してもらうか
     なぜ,子育て支援連帯基金が考えられるのか?
     子育て支援連帯基金,2017年からのその後
     子育て支援連帯基金の財源候補

    第17章 総花的な「公的支援給付」が生まれる歴史的背景
     プライバシーの自由と生存権保障インフラ
     バタフライ・エフェクト其の壱「日本型軽減税率」
     バタフライ・エフェクト其の弐「グリーンカード」
     マイナンバーは社会保障ナンバーに育ちうるのか

    第18章 日本の社会保障,どこが世界的潮流と違うのか──カンヌ受賞作に見るデジタル化と所得捕捉
     映画『わたしは,ダニエル・ブレイク』に思うもの
     イギリスにおける行政のデジタル化と貧困救済策
     就労しても給付が減らない仕組み
     本当に困っている人がわからない日本
     就労福祉と最低賃金制度の組み合わせ効果
     マイナンバーの社会保障ナンバー化を拒むもの


    おわりに [297-300]


    知識補給 301
     WPPを知らないのは,もういいだろう,放っておいて
     社会保険における高所得層の包摂
     医療政策を取り巻く政治環境の変化
     公的年金の創設,拠出制か無拠出制か?
     年金財政検証が用いる新古典派成長モデルの特徴
     ロマンとして生まれた国民皆年金
     いわゆる「支給開始年齢の引き上げ」と将来の給付水準の引き上げ
     「支給開始年齢の引き上げ」まわりの見せかけの相関
     ワーク・ライフ・バランス憲章の総括について
     終身保険は民間でなく公的となる理由
     医療政策で「需要」と「ニーズ」を使い分ける理由
     内生的医療制度論という話,再び
     医師・患者関係と「患者の責務」規定
     日本の医療,固有の歴史的特徴と政策課題との関係
     医療情報の共有化を遮るもの
     終末期の医療をめぐるこの十数年の大きな変化──いかに生きるかの問題へ
     好事例か,それとも創造的破壊者か
     成長はコントローラブルなものなのだろうか
     高齢者は経済の宝,社会保障で地方創生は可能──「灌漑施設としての社会保障」という考え方
     気質と理屈,どっちが先か?
     どうして,連帯基金?
     年金積立金を用いた国民皆奨学金制度の合理性

    事項索引 [357-361]
    人名索引 [362-363]
    著者略歴 [364]

  • 東2法経図・6F開架:364A/Ke44m//K

全6件中 1 - 6件を表示

著者プロフィール

慶應義塾大学商学部教授 博士(商学)
1962年福岡県生まれ。1985年慶應義塾大学商学部卒業、1990年同大学院商学研究科博士課程修了。嘉悦女子短期大学専任講師、慶應義塾大学商学部助手、同助教授を経て、2002年より現職。この間、1996年~1998年ケンブリッジ大学経済学部訪問研究員、2005年ケンブリッジ大学ダウニングカレッジ訪問研究員。
公務では、社会保障審議会、社会保障国民会議、社会保障制度改革国民会議、社会保障制度改革推進会議の委員や社会保障の教育推進に関する検討会の座長など、他にもいくつか引き受けたり、いくつかの依頼を断ったり、また、途中で辞めたり。
主要業績に、『医療介護の一体改革と財政 ―― 再分配政策の政治経済学Ⅵ』(2015年)、『社会保障の政策転換 ―― 再分配政策の政治経済学Ⅴ』(2009年)、『医療政策は選挙で変える ―― 再分配政策の政治経済学Ⅳ[増補版]』(2007年〔初版2007年〕)、『医療年金問題の考え方 ―― 再分配政策の政治経済学Ⅲ』(2006年)、『年金改革と積極的社会保障政策 ―― 再分配政策の政治経済学Ⅱ』(2004年、労働関係図書優秀賞)、『再分配政策の政治経済学Ⅰ ―― 日本の社会保障と医療[第2版]』(2005年〔初版2001年、義塾賞〕)(以上、慶應義塾大学出版会)、『医療経済学の基礎理論と論点(講座 医療経済・政策学 第1巻』(共著、勁草書房、2006年)、翻訳としてV. R. フュックス著『保健医療政策の将来』(共訳、勁草書房、1995年)などがある。

「2016年 『年金、民主主義、経済学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

権丈善一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×