自意識というのはたいていにおいてうっとうしさの塊みたいなものだ。
ゴミだらけのドブ川みたいな現実を、光のない闇の中腹ばいになって手さぐりで生きていくジョーの辛辣な言葉にこぼれる自意識。
彼女にはわかっていた。
「この世にあたしって人間はひとりしかいないのよ、あんたがひとりしかいないように」
そんなあたりまえのことを知っている、ただそれだけにすぎない。
そんなふうに誰もが本当は「自分のささやかな王国の王子さま」であることを血肉にしみこませ自覚したい、なぜそれがこんなにも困難なのか。
ジョーの発する台詞の一つ一つが鋭いナイフの切っ先と化して彼女自身の、それを追う読者の胸底までを確実に射抜く。
作者18歳当時に初めて書いた戯曲。