創られた「日本の心」神話 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史 (光文社新書)
- 光文社 (2010年10月15日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334035907
作品紹介・あらすじ
「演歌は日本の心」と聞いて、疑問に思う人は少ないだろう。落語や歌舞伎同様、近代化以前から受け継がれてきたものと認識されているかもしれない。ところが、それがたかだか四〇年程度の歴史しかない、ごく新しいものだとしたら?本書では、明治の自由民権運動の中で現われ、昭和初期に衰退した「演歌」-当時は「歌による演説」を意味していた-が、一九六〇年代後半に別な文脈で復興し、やがて「真正な日本の文化」とみなされるようになった過程と意味を、膨大な資料と具体例によって論じる。いったい誰が、どういう目的で、「演歌」を創ったのか。
感想・レビュー・書評
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非常に興味深い内容でした。
著者とは同世代ということもあり、演歌、歌謡曲、Jpopの変遷について、なるほどとうなりながら読みました。
かなり大胆な主張にも思えますが、それを裏付ける丹念な調査をされているところが凄いなと。 -
新書大賞2011第10位筆者は演歌誕生は1966年五木寛之小説「艶歌」よりと。69年デビュー不幸なプロフィール脚色された藤圭子による暗さ、不幸による怨歌が人気定着も80年代若者達のjpopカラオケ文化により演歌は衰退へ意外と歴史が浅い創られた演歌日本の心とはなにかを問う。
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まず文章がよい。たまげた。リライトされた文章のように読みやすく、テクニカルライターのように正確だ。読んだ時には惹かれた文章でもタイプしてみるとガッカリすることは意外と多いものだ。書き写せば更にガッカリ感は増すことだろう。このように身体(しんたい/=口や手)を通すと文章のリズムや構成を皮膚で感じ取ることができる。一方、名文・美文には一種の快感がある。輪島の文章が抜きん出ているのはその「簡明さ」にある。嘘だと思うなら試しに書き写してごらんよ。輪島は学者である。文士ではないゆえ、香りを放つ文章よりも簡明が望ましい。「簡にして明」であればこそ大衆の理解を得られる。
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音楽
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・戦後のある時期まで、少なくとも「知的」な領域では、(美空)ひばりを代表とする流行歌は「悪しき」ものとなされていたのが、いつしか「真正な日本の文化」へとその評価を転換させたこと。
・日本の流行歌の歩みは元来極めて雑種的、異種混淆的であり現在「演歌」と呼ばれているものはその一部をなしてきたにすぎない、ということ。
・「演歌」は1960年代末から72年ごろにかけて、若者向きの流行歌現象として音楽産業によって仕掛けられていたように見受けられる(1964年末の朝日新聞が翌年の「演歌ブーム」を予想)。
<blockquote>・艶歌とフリージャズこそが、日本の「六八年思想」のサウンドトラックであった(P.251)</blockquote> -
「演歌」という神話の始まりを見た感じ。多くの人が関係して意図的でない方が事実に基づかない物語や偽の記憶として定着しやすいのかなと思う。
惜しかったな江戸しぐさ!
最近「昭和」も神話と化しているので、こっちのほうがタチ悪いかも。 -
みすず