会社のなかの「仕事」 社会のなかの「仕事」~資本主義経済下の職業の考え方 (光文社新書 1250)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334046576

感想・レビュー・書評

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  • 仕事、職業における知見がとても面白くて読みやすかったです。時代は変化していきますが、もう少し「軽やかに」、ユーモアがある雰囲気になるといいなぁと思いました。

  • 『会社のなかの「仕事」社会のなかの「仕事」(阿部真大・著)』読んだ。職業というものを会社の組織人としてではなく「社会の中でどんな役割を果たすものなのか」を問い直す本。都会で働く人が兼業で行う「パートタイム田舎就労」の可能性にも言及されていてとても面白かった。

  • 「やりがい搾取」
    資本が求める「仕事」と労働者の「やりがい」が一致することによって、不当な搾取状態が見えにくくなり、労働者自ら搾取率を高めている状態。

    著者は、2000年代初頭にバイク便ライダーの勤務実態をもとに「自己実現系ワーカホリック」という状況を指摘し、これを教育社会学者の本田由紀が一歩押し進めたのが上記の「やりがい搾取」という概念。
    そんなやりがい搾取が蔓延する世の中の課題を解決するために、仕事を「会社」ではなく「社会」の中で位置づけ直そうというのが本著のテーマ。

    著者の主張は第1章に集約されている。
    仕事は、客に喜んでもらうためにするものではない。社会の中で自らの役割を果たすためにするものである、と。
    社会の中での役割、即ち仕事を「職業」として捉え直す。
    職業の社会的役割を明確化し、仕事内容を社会的に規定することで、仕事の無限定性に歯止めをかけようという考え方。
    労働組合を職業別の組合として再活性化させることや、「ユーモア」を職場の中に採り入れることが提唱される。
    (後者については、職場を相対化して没入度合いを軽減する意図だと解釈した。)

    この文脈で池井戸潤作品への一部批判的な論評なども語られるのだが、この考え方自体は明確で現代日本社会の病理を建設的に指摘いて好感を持った。

    一方で、会社という組織に身を置きながら「職業人」としてあり続けることは簡単なことではない。
    承認欲求や組織内競争のゲーム性などが「組織人」たることへの強力な誘惑を生じさせる。

    また、職業ベースで仕事を捉える考え方は、グローバルスタンダードに日本社会を近づけようとする意味合いも持っており、それに対する反発心はグローバル化に対するバックラッシュの側面も持っていることも指摘されている。
    グローバル化の流れに反発するローカル層に、グローバル・エリートが直接影響を与えることは容易ではなく、ローカルで働いている人の仕事観を少しずつ変えていく働きをするローカル・オルト・エリートの存在が重要であると、著者は主張する。

    この点が、本著に好感を持ったポイントのもう一つの点。
    仕事を「職業」として捉え直すためには、当然のことながら各人の「職業」が何であるかが明確になっていることが前提となる。
    その意味では、いわゆる「ジョブ型」労働と極めて親和的なもの。

    「あなたの職場は何ですか?」と問われて、「会社員です」と答える人が大半という世の中を少しずつ変えていく。
    ぜひそんな取り組みに自分の力を使ってみたいな、とクリアに思わせてくれた点で、自分にとっては良著であった。

  • 職業は、生計の維持、個性の発揮、役割の実現。

    組織人と職業人の対立があり、現在の多くの会社は組織人が多い。

    上記の古い体質であるため、見直す必要のある働き方が顕在化している。

    働き方を変えるには、職業人を増やさないといけない。

    だからこそ、組織人が大多数を占める、終身雇用に則った現在の多くの会社を内部から変えるのは、きわめて難しい。

  • やりがい搾取や長時間労働、過剰なサービスなど、現代日本における仕事の問題は、私たちの仕事観によるものと考える著者。本書では、この問題について、映画『ハドソン川の奇跡』や池井戸潤のサラリーマン小説、漫画『かりあげクン』などに描かれる働く人をとりあげ、解決策を模索していきます。これからの日本の働き方を考えるための一冊。

  • いくつか面白い点はあった。組織人と職業人の対比、ずらしの概念など

    グループワークで、競争させる原点が、そんな所からでていたのか。とか、何が問題なのかわかっていなかったのがクリアになったのが個人的な収穫だった。社会主義下での話は興味深い。

    抵抗するでなし、別の意味を持たせて、自分たちで面白がるのはいいけども、結局は持たないでヒドい目にあうので、緩和策でしかないのではないか。とも思ったけど。

  • 第1部 働く人を守る「職業」(「やりがい搾取」を考え直すー有機的連帯、労働組合、ユーモア/池井戸潤と戦後ヒューマニズム)/第2部 組織を強くする「職業」(職業人vs.組織人ー脱ー組織のマネジメントの重要性/「パートタイム田舎就労」の可能性とオルト・エリートの挑戦)/第3部 補論ーポスト戦後社会と「職業」(不安定な職場で「軽やかに」生きるためにーポスト日本型雇用社会における茶化し/ズラしの条件/組織文化の「脱ジェンダー化」とテレワークーコロナ禍での失敗をどう生かすか?)

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/563927

  • 東2法経図・6F開架:B1/10/1250/K

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著者プロフィール

阿部 真大(甲南大学文学部教授)

「2022年 『質的調査の方法〔第3版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

阿部真大の作品

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